MPRT(エムピーアールティー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
MPRT(エムピーアールティー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
エムピーアールティー (エムピーアールティー)
英語表記
MPRT (エムピーアールティー)
用語解説
MPRT(エムピーアールティー)とは、主に液晶ディスプレイにおいて、動きのある映像における残像感、すなわちモーションブラーを評価するための指標である。一般的な応答速度を示す指標であるGtoG(Gray-to-Gray)が画素の色が変化する時間を示すのに対し、MPRTは画面に表示される映像の「動きのぼやけ」を低減することに特化した性能を示す。これは、特に高速な動きを伴うゲームや動画コンテンツを視聴する際に、よりクリアで滑らかな映像体験を提供するために重要な要素となる。液晶ディスプレイの特性上発生しやすい残像感を、バックライト制御などの技術を用いて擬似的に解消し、視覚的な鮮明さを向上させるための指標として認識されている。
MPRTは「Moving Picture Response Time」の略であり、その名の通り動く映像に対する応答時間を意味する。GtoGがディスプレイの画素そのものの物理的な応答性能を表すのに対し、MPRTは人間の目が感じる「動きのある映像の鮮明さ」を直接的に改善するための技術と、その効果を数値化したものである。MPRTの値はミリ秒(ms)で表され、数値が小さいほど残像感が少なく、動きが鮮明であるとされる。
この残像感、またはモーションブラーと呼ばれる現象は、液晶ディスプレイが採用している「ホールド型表示」という表示方式に起因する。ホールド型表示とは、ディスプレイが一度表示したフレームの画像を次のフレームが表示されるまでの間、ずっと保持し続ける方式を指す。例えば、秒間60フレーム(60Hz)で表示されるディスプレイでは、1フレームが約16.6ミリ秒間表示され続けることになる。人間が動く物体を目で追う際、例えば画面上で右へ移動するボールを見ている場合、人間の視線は画面上のボールを追って右へ動く。しかし、ディスプレイ上のボールの画像そのものは、次のフレームが表示されるまでの間、同じ位置に静止して表示され続ける。この、目の動きとディスプレイ上で静止している画像の間に生じるずれが、脳によって「ぼやけ」として認識されるのである。これに対し、古いCRT(ブラウン管)ディスプレイは、画素が一瞬だけ光ってすぐに消える「インパルス型表示」であったため、このホールド型表示による残像感はほとんど発生しなかった。
液晶ディスプレイでこのホールド型表示による残像感を低減するために用いられるのが、MPRTを向上させる技術、具体的には「バックライトストロボ」や「黒挿入」といった手法である。バックライトストロボとは、ディスプレイのバックライトを非常に短い時間だけ点灯・消灯を繰り返すことで、各フレームの表示時間を実質的に短縮する技術である。例えば、1フレームの表示時間である16.6ミリ秒のうち、実際にバックライトが点灯している時間を数ミリ秒に抑え、残りの時間は消灯させる。これにより、人間の目には短い時間だけ画像が表示され、すぐに消えるように感じられるため、CRTのようなインパルス型表示に近い視覚効果が得られ、残像感が大幅に低減される。黒挿入も同様の効果をもたらす技術で、各フレームの間に完全に真っ黒なフレームを挿入することで、一時的に画面を暗くし、前のフレームの残像を視覚的に打ち消す役割を果たす。
これらのMPRT対応技術を適用することには、明確なメリットといくつかのデメリットが存在する。最大のメリットは、動きのある映像における残像感が大幅に軽減され、特に高速で動くオブジェクトの輪郭がより鮮明に見えるようになる点である。これにより、例えばゲームにおいて敵キャラクターの動きが認識しやすくなったり、カーレースゲームで風景がより滑らかに流れるように感じられたりする。しかし、バックライトの点滅や黒挿入により、画面全体の明るさが低下するというデメリットがある。また、バックライトの高速な点滅は、フリッカー(画面のちらつき)に敏感なユーザーにとっては目の疲れや不快感の原因となる場合がある。そのため、MPRTモードを使用する際は、画面の明るさ設定を調整したり、フリッカーに対する個人の感受性を考慮したりする必要がある。
特にeスポーツなどの競技性の高いゲーム分野では、MPRTは非常に重要な指標となる。FPS(一人称視点シューティング)ゲームのように、敵のわずかな動きを素早く察知し、正確なエイム(照準合わせ)が求められる場面では、MPRT値が低いディスプレイを使用することで、敵の輪郭がぼやけずに明確に見え、反応速度や操作精度が向上する可能性がある。このため、ゲーミングモニターを選ぶ際には、GtoGだけでなくMPRTの数値も重要な選定基準の一つとなっている。
システムエンジニアを目指す初心者にとっては、ディスプレイの応答速度を評価する際に、単にGtoGの値だけでなく、MPRTがどのような目的で、どのような技術によって実現されているのかを理解しておくことは、機器選定や性能評価の際に役立つ知識となる。ディスプレイの仕様を確認する際には、単に応答速度が「1ms」と書かれていても、それがGtoG 1msなのか、MPRT 1msなのかによって、得られる視覚体験が大きく異なることを認識しておく必要がある。理想的なディスプレイは、画素そのものの応答速度であるGtoGが速く、かつMPRTを向上させる技術も適切に組み込まれているものであると言えるだろう。