MTU(エムティーユー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

MTU(エムティーユー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

最大転送単位 (サイダイテンソウタンイ)

英語表記

MTU (エムティーユー)

用語解説

MTUとは、Maximum Transmission Unitの略であり、ネットワーク上において、一度に送受信できるデータブロックの最大サイズを指す。具体的には、データリンク層で処理できるフレームのペイロード部分の最大値であり、IPパケットとそのヘッダを含んだ全体のバイト数を表す。この値はネットワークの性能や安定性に深く関わる重要な設定項目である。

詳細について述べる。ネットワーク通信では、アプリケーションが生成するデータは、TCP/IPプロトコルスタックを通る過程で、様々なヘッダ情報が付与され、最終的にパケットと呼ばれる単位に分割されて送信される。このパケットのサイズに上限を設けるのがMTUである。ほとんどのイーサネット(Ethernet)ネットワークでは、MTUの標準値は1500バイトに設定されている。これは、IPヘッダやTCPヘッダなどを含む、実質的なデータ部分のサイズである。

もし送信しようとするIPパケットが、通過するネットワーク経路上のMTUよりも大きい場合、そのパケットは複数の小さなパケットに分割される。このプロセスをフラグメンテーション(断片化)と呼ぶ。フラグメンテーションは、送信元ホストまたは途中のルーターによって行われる。分割されたパケットは、受信側で再び組み立てられる必要がある。このフラグメンテーションと再組み立ての処理は、ネットワーク機器やホストに余分な負荷をかけ、通信速度の低下や遅延の原因となる。また、途中で一つでもフラグメントが失われると、元のパケット全体が再送される必要があり、通信効率が著しく低下する可能性がある。

このようなフラグメンテーションを避けるために、送信元は通信経路上のMTUの最小値(Path MTU)を把握し、それに合わせてパケットサイズを調整することが望ましい。この仕組みを実現するのがPath MTU Discovery (PMTUD) である。PMTUDでは、送信元ホストはIPパケットに「Don't Fragment (DF)」ビットを設定して送信する。もし途中のルーターが、DFビットが設定されたパケットが自身のMTUを超えることを検出した場合、そのパケットを破棄し、送信元ホストに対してICMPメッセージの一種である「Destination Unreachable - Fragmentation Needed」を返す。このICMPメッセージには、ルーターが受け入れ可能なMTU値が含まれており、送信元ホストはこの情報をもとに、自身の送信パケットのサイズを小さく調整し、再送を試みる。このプロセスを繰り返すことで、送信元は経路上の最小MTUを特定し、フラグメンテーションを回避しながら効率的な通信を行うことができる。しかし、ファイアウォールなどのセキュリティデバイスがICMPメッセージをブロックするように設定されている場合、PMTUDが正常に機能せず、通信が途絶えたり、非常に遅くなったりする「PMTUDブラックホール」と呼ばれる問題が発生することがある。

特殊な環境では、標準の1500バイト以外のMTUが利用されることがある。例えば、ADSLや光ファイバー回線などで利用されるPPPoE(Point-to-Point Protocol over Ethernet)接続では、イーサネットフレーム内にPPPoEヘッダが付与されるため、その分だけMTUが小さくなる。一般的には1492バイトが利用されることが多い。また、データセンター内や高性能なストレージネットワークなどでは、より大きなデータブロックを一度に送信するために、1500バイトを超えるMTUを持つ「ジャンボフレーム」が利用されることがある。ジャンボフレームは通常9000バイト程度のMTUを持つが、ネットワーク内の全ての機器がジャンボフレームに対応している必要がある。

MTUの設定ミスは、ネットワーク通信に様々な問題を引き起こす。例えば、送信元のMTUが経路上のどこかのMTUよりも大きい場合、特にPMTUDがうまく機能しない状況では、一部のウェブサイトが表示されなかったり、VPN接続が確立できなかったり、特定のプロトコルを用いた通信が不安定になったりする。このようなトラブルが発生した場合、MTU値を適切に調整することで解決することが多い。システムエンジニアにとって、MTUはネットワークトラブルシューティングの重要な手がかりの一つであり、その概念と動作を理解することは必須である。

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