NOR型フラッシュメモリ(ノーアールガタフラッシュメモリ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
NOR型フラッシュメモリ(ノーアールガタフラッシュメモリ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ノーアンドウイット型フラッシュメモリ (ノー・アンド・ウィットガタフラッシュメモリ)
英語表記
NOR flash memory (ノーフラッシュメモリ)
用語解説
NOR型フラッシュメモリは、フラッシュメモリの一種であり、電源を切ってもデータが保持される不揮発性メモリの代表的な存在である。その名前は、内部のメモリセルがNOR(Not OR)論理ゲートに似た並列接続構造を持つことに由来する。この特性により、NOR型フラッシュメモリは特定の用途において他のメモリ形式にはない強みを発揮する。
NOR型フラッシュメモリの最大の特長は、バイト単位での高速なランダムアクセス読み出しが可能である点にある。これは、CPUがコードを直接実行するような用途、すなわちeXecute In Place(XIP)機能に非常に適していることを意味する。コンピュータのBIOS/UEFIや組み込みシステムのファームウェアなど、起動時に読み込まれて実行されるプログラムを格納する用途で広く利用されている。
NOR型フラッシュメモリのデータ格納の仕組みは、フローティングゲートトランジスタと呼ばれる特殊な構造を持つメモリセルが基本となる。このセルは、通常のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)に加えて、ゲート電極の下に絶縁された「フローティングゲート」を持つ。このフローティングゲートに電子を注入したり、引き抜いたりすることで、セル内の電荷量を変化させ、その結果としてトランジスタの閾値電圧を変える。この閾値電圧の変化を検出することで、データが0なのか1なのかを読み出すことが可能になる。
NOR型フラッシュメモリの内部では、多数のメモリセルがマトリックス状に配置されている。各メモリセルのドレイン端子は共通のビット線に並列に接続され、コントロールゲートはワード線に接続されている。この並列接続構造が、特定のワード線とビット線を選択するだけで任意のバイトデータを直接読み出せる高速なランダムアクセス能力を実現している。NAND型フラッシュメモリが直列接続であるのに対し、NOR型はこの並列接続が最大の特徴である。
データの読み出しは、選択されたワード線に電圧を印加し、同時にビット線から電流の流れを検出することで行われる。フローティングゲートに電荷が蓄積されている(プログラムされている)セルは、そうでないセルと比較して電流が流れにくくなるため、その電流の有無や大きさの違いを検出回路が判断し、0または1のデータを読み出す。このプロセスは非常に高速で、CPUが直接メモリ内のコードを実行するのに十分な速度を持つ。
データの書き込み、すなわちプログラムは、通常、ホットエレクトロン注入と呼ばれるメカニズムによって行われる。これは、コントロールゲートに高電圧を印加し、同時にドレインにも高電圧を印加することで、ソースからドレインへ流れる電子を加速させ、その一部が高いエネルギーを得て絶縁膜を越えてフローティングゲートに注入される現象を利用する。電子がフローティングゲートに注入されると、その電荷によってトランジスタの閾値電圧が上昇し、「0」の状態としてプログラムされる。
データの消去は、Fowler-Nordheimトンネル効果を利用して行われる。これは、フローティングゲートに対してコントロールゲート側から負の、またはソース側から正の高電圧を印加することで、フローティングゲートに蓄積された電子をトンネル効果によって引き抜き、フローティングゲートを中性に戻すプロセスである。これにより、閾値電圧が低下し、セルは「1」の状態にリセットされる。NOR型フラッシュメモリの消去は、通常、特定のブロックまたはセクタといった比較的大きな単位で行われる。個々のバイトを消去することはできないため、データを更新する際には、一旦ブロック全体を消去してから必要なデータを再書き込みする必要がある。
NOR型フラッシュメモリの利点は、前述の高速なランダム読み出し速度とXIP機能に加えて、比較的高い信頼性と耐久性を持つ点にある。NAND型フラッシュメモリに比べて、一般的にエラーレートが低く、データの保持期間も長いとされる。また、物理的なセル構造が比較的シンプルであるため、製造プロセスが安定している。
一方で、欠点も存在する。NOR型フラッシュメモリのメモリセルはNAND型に比べて物理的なサイズが大きく、そのため同じ面積あたりに格納できるデータ容量が少ない。これにより、ビットあたりのコストが高くなり、大容量化が難しいという制約がある。また、書き込みおよび消去速度は読み出し速度に比べて遅く、特に消去はブロック単位で行われるため、頻繁なデータ更新には向かない。さらに、フラッシュメモリ全般に言えることだが、書き込み・消去回数には物理的な制限があり、寿命があるため、ウェアレベリングといった技術を用いて特定のセルに負担が集中しないように工夫する必要がある。
これらの特性から、NOR型フラッシュメモリは、主にコンピュータの起動プログラム(BIOS/UEFI)、組み込みシステムのファームウェア、携帯電話のブートローダー、ネットワークルーターのオペレーティングシステム、自動車の電子制御ユニット(ECU)内のプログラムなど、データの読み出しが頻繁で、書き込みや消去が比較的まれな、コード実行中心の用途でその真価を発揮する。大容量のデータストレージとしてはNAND型フラッシュメモリやSSDが主流であるが、NOR型フラッシュメモリはシステムを起動させるための基盤となる役割を担い続けている重要なメモリ技術である。