Webエンジニア向けプログラミング解説動画をYouTubeで配信中!
▶ チャンネル登録はこちら

NAND型フラッシュメモリ(ナンドガタフラッシュメモリ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

NAND型フラッシュメモリ(ナンドガタフラッシュメモリ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

NAND型フラッシュメモリ (ナンドガタフラッシュメモリ)

英語表記

NAND flash memory (ナンドフラッシュメモリ)

用語解説

「NAND型フラッシュメモリ」は、現代のデジタルデバイスにおいて不可欠な不揮発性メモリの一種である。不揮発性とは、電源を切ってもデータが消えることなく保持される性質を指し、この特性によりSSD(Solid State Drive)、USBメモリ、SDカード、スマートフォンの内蔵ストレージなど、我々の生活に密着した様々な機器で大容量データを永続的に保存するために広く利用されている。

このメモリが「NAND型」と呼ばれるのは、その内部にあるメモリセルがNAND(論理回路の否定論理積)ゲートのように直列に接続された構造を持つことに由来する。フラッシュメモリには他にNOR型フラッシュメモリも存在するが、NAND型はNOR型と比較して、より高い集積度と低コスト化を実現できるという大きな利点を持つ。これにより、ギガバイトやテラバイトといった大容量ストレージの実現が可能となり、現在のデータ社会を支える基盤技術の一つとなっている。システムエンジニアを目指す上で、このNAND型フラッシュメモリがどのような仕組みでデータを記憶し、どのような特性を持つのかを理解することは、ハードウェアとソフトウェアの連携を考える上で非常に重要である。

NAND型フラッシュメモリのデータ記憶の基本的な仕組みは、フローティングゲートトランジスタと呼ばれる特殊な半導体素子に依存する。このトランジスタは、通常のMOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)のゲート電極の下に、酸化膜で電気的に絶縁された「フローティングゲート」と呼ばれるもう一つのゲートを持っている。データを書き込む際、高い電圧を印加することで電子をフローティングゲートに注入する。一度注入された電子は絶縁膜によって閉じ込められるため、電源が供給されなくなっても長期間にわたって失われることはない。このフローティングゲートに電子が蓄積されると、その電子の電荷によってトランジスタの電気的なしきい値電圧が変化する。データを読み出す際には、このしきい値電圧の変化を検出することで、メモリセルが「0」の状態にあるのか「1」の状態にあるのか、あるいはそれ以上の多値データを判別する。電子が蓄積されていない状態と、蓄積された状態とで、制御ゲートへの電圧印加に対する電流の流れやすさが異なるため、これをデータとして認識できるのである。

NAND型メモリセルは、その名の通りNANDゲートのように直列に接続された構造を持つ。この直列接続の配置は、メモリセルへのアクセスに必要な配線数を大幅に削減することを可能にする。配線が少ないということは、より多くのメモリセルを限られたシリコン基板の面積に詰め込むことができるため、高密度化と製造コストの低減に大きく貢献し、結果として大容量化を実現する上で非常に有利となる。データの読み出しは「ページ」と呼ばれる比較的小さな単位で行われ、データの消去は「ブロック」と呼ばれる、複数のページをまとめた大きな単位で行われるのが一般的である。これは、NOR型フラッシュメモリがバイト単位でのランダムアクセスを得意とするのに対し、NAND型は大きなデータのシーケンシャルアクセス(連続したデータの読み書き)に最適化されていることを意味する。

NAND型フラッシュメモリには、1つのメモリセルに記憶できるビット数によっていくつかの種類が存在する。最も初期から存在する基本的なタイプはSLC (Single-Level Cell) で、1つのセルに1ビットのデータ(「0」か「1」の2つの状態)を記憶する。これは電子の有無の2つの状態だけでデータを表現するため、高速な読み書きが可能で、書き換え耐性も高く、信頼性も高いが、その分コストも高くなる。次に普及したのがMLC (Multi-Level Cell) で、1つのセルに2ビットのデータ(4つの状態)を記憶する。SLCと比較して記憶密度が2倍になるため、大容量化と低コスト化が可能となる一方で、しきい値電圧の区別が細かくなる分、書き込み速度や書き換え耐性、信頼性はSLCに劣る。さらに、TLC (Triple-Level Cell) は1つのセルに3ビットのデータ(8つの状態)、QLC (Quad-Level Cell) は1つのセルに4ビットのデータ(16の状態)を記憶する。これらの多値セル化が進むにつれて、記憶密度とコスト効率は向上するが、読み書き速度、耐久性、そして信頼性は低下するというトレードオフの関係がある。

従来のNAND型フラッシュメモリは、メモリセルをシリコン基板の表面に平面状に配置していたが、この2次元的な配置では集積度の物理的な限界に直面した。この課題を克服するために開発されたのが3D NAND、またはVertical NAND (V-NAND) と呼ばれる革新的な技術である。これは、メモリセルをシリコン基板に対して垂直方向に多層に積層することで、平面的な限界を超えてさらに大容量化と性能向上を実現するものである。まるで高層ビルを建てるように、多くの記憶層を積み重ねることで、限られた面積でも飛躍的に記憶容量を増やすことが可能になり、現代の大容量SSDの実現に大きく貢献している。

フラッシュメモリは、データを書き換える際にフローティングゲートを絶縁する酸化膜に高い電圧を印加するため、その酸化膜が徐々に劣化するという物理的な特性を持つ。このため、無限にデータを書き換えることはできず、書き換え可能回数には上限が存在する。この上限をP/E (Program/Erase) サイクルと呼び、SLCでは数十万回、MLCでは数千〜数万回、TLCやQLCでは数百〜数千回程度と、多値化が進むほどに耐久性が低下する傾向にある。この耐久性の課題を解決するために、ウェアレベリング (Wear Leveling) と呼ばれる技術が不可欠である。これは、NAND型フラッシュメモリのコントローラが、特定のメモリセルへの書き込みが集中するのを防ぎ、すべてのメモリセルに均等に書き込みを行うことで、メモリ全体の寿命を延ばす仕組みである。また、高密度化によってセル間の電気的な干渉や、電圧の微細な変動によるデータエラーが発生しやすくなるため、ECC (Error Correcting Code) と呼ばれる誤り訂正符号も必須の技術となっている。ECCは、書き込まれたデータに冗長な情報を付加し、読み出し時に発生した軽微なエラーを検出・訂正することで、データの信頼性を確保する。

このように、NAND型フラッシュメモリは、フローティングゲートトランジスタによる不揮発性記憶原理、NANDゲート状の直列接続構造による高密度化、多値セル化による大容量化とコスト低減、3D NAND技術によるさらなる飛躍的な集積度向上、そしてウェアレベリングやECCといった寿命と信頼性を高める技術の組み合わせによって、高性能かつ大容量で低コストなストレージとして進化を続けている。パソコンのSSD、データセンターのストレージ、スマートフォン、エッジデバイスに至るまで、現代のITインフラを支える基盤技術の一つであり、システムエンジニアとしてその特性を深く理解し、適切な用途で活用することが求められる。

関連コンテンツ