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NOT回路(ノットカイロ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

NOT回路(ノットカイロ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

否定回路 (テイカイロ)

英語表記

NOT gate (ノットゲート)

用語解説

NOT回路、別名インバータは、デジタル回路における最も基本的な論理ゲートの一つである。その主な役割は、入力された論理信号の値を反転させることにある。デジタル回路は「0」と「1」の二つの状態、すなわち論理値で情報を扱う。NOT回路は、入力が「1」(真、HIGH)であれば出力を「0」(偽、LOW)とし、入力が「0」(偽、LOW)であれば出力を「1」(真、HIGH)とする働きを持つ。これは、ある条件が「成立しない」ことを表現する際に不可欠な要素であり、デジタルシステムを構築する上で欠かせない基礎部品である。この反転動作は、真理値表として表現できる。真理値表は、論理回路の入力と出力の全ての組み合わせを示す表であり、NOT回路の場合は入力が一つ、出力が一つであるため、非常に単純である。入力が0の時に出力は1、入力が1の時に出力は0という二つの行で構成される。このシンプルな特性が、あらゆる複雑なデジタル回路の基盤となる。

詳細に説明すると、デジタル回路における論理値の「0」と「1」は、実際の電子回路では電圧レベルとして表現される。一般的に、高い電圧レベルを「HIGH」と呼び、論理値「1」に対応させ、低い電圧レベルを「LOW」と呼び、論理値「0」に対応させる。NOT回路は、入力端子に入力電圧がHIGH(論理1)として供給された場合、出力端子からはLOW(論理0)の電圧が出力される。逆に、入力端子に入力電圧がLOW(論理0)として供給された場合、出力端子からはHIGH(論理1)の電圧が出力される。この動作原理は、入力信号の極性を完全に逆転させることに他ならない。

論理学の観点からは、NOT回路は「否定」の操作を司る。入力される命題が「P」であるとすると、NOT回路の出力は「Pではない」という命題に対応する。これを論理式で表す場合、入力信号をAとすると、出力はAの上にバーを付けた「A̅」や、「¬A」のように記述される。これらの記法は、Aの論理値が反転されることを意味している。

実際の電子回路において、NOT回路は主にトランジスタを用いて構成される。例えば、CMOS(Complementary Metal-Oxide-Semiconductor)技術を用いたインバータは、PチャネルMOSFETとNチャネルMOSFETを組み合わせて作られる。入力がLOWの場合、PチャネルMOSFETがオンになり、出力は電源電圧(HIGH)に接続される。同時に、NチャネルMOSFETはオフになるため、出力はグランド(LOW)から切り離される。結果として出力はHIGHとなる。反対に、入力がHIGHの場合、NチャネルMOSFETがオンになり、出力はグランド(LOW)に接続される。この時、PチャネルMOSFETはオフになるため、出力は電源電圧(HIGH)から切り離される。結果として出力はLOWとなる。このように、CMOSインバータは入力電圧に応じて、出力端子を電源電圧またはグランドのいずれかに接続することで、HIGHとLOWを効率的に反転させる。この方式は、消費電力が非常に少ないという利点があり、現代の集積回路で広く利用されている。

NOT回路の応用範囲は非常に広い。まず、他の基本的な論理ゲートであるAND回路やOR回路と組み合わせることで、NAND回路やNOR回路といったより複雑な論理ゲートを構築できる。実際、NAND回路とNOR回路は、それぞれ単独で任意の論理回路を構築できる「万能ゲート」として知られており、NOT回路はその構成要素として不可欠である。例えば、NAND回路の出力をNOT回路に入力すると、AND回路と同じ論理機能を実現できる。

また、NOT回路は信号の極性を反転させる目的で直接利用されることもある。例えば、ある信号がアクティブLOW(LOWの時に機能が有効になる)である場合、これをアクティブHIGH(HIGHの時に機能が有効になる)の回路に接続するためには、途中にNOT回路を挟んで信号を反転させる必要がある。

さらに、コンピュータ内部での数値表現においても重要な役割を果たす。特に2の補数表現では、ある数値の負の値を求める際に、ビット列を反転させる(各ビットにNOT操作を適用する)というステップが含まれる。このビット反転操作は、NOT回路によって実行される論理的な否定に他ならない。例えば、8ビットの数値で「00000001」(10進数の1)を反転させると、「11111110」となる。これは2の補数計算における重要な中間ステップである。

記憶素子であるフリップフロップや、データを周期的に移動させるレジスタ、そして数を数えるカウンタ回路など、デジタルシステムの中核をなす多くの回路ブロックにおいて、NOT回路は信号のタイミング調整や特定の状態の否定条件を生成するために頻繁に利用される。例えば、フリップフロップの一種であるSRフリップフロップでは、セット(S)入力とリセット(R)入力が同時にアクティブになるのを防ぐために、内部でNOT回路が利用されることがある。

NOT回路は、単一の入力と単一の出力を持つ最も単純な論理ゲートであるが、その機能はデジタル電子回路の基礎を築く上で極めて重要である。デジタル回路設計者は、NOT回路を他の論理ゲートと組み合わせることで、複雑な計算や制御を行うための論理システムを構築する。そのシンプルさゆえに、NOT回路はあらゆるデジタルプロセッサ、メモリ、通信デバイスなど、現代のITシステムを構成する基盤技術の中に、目に見えない形で深く組み込まれているのである。

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