PFLOPS(ペタフロップス)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
PFLOPS(ペタフロップス)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
ペタフロップス (ペタフロップス)
英語表記
PFLOPS (ペタフロップス)
用語解説
PFLOPSは、コンピュータの計算性能を示す単位の一つであり、特にスーパーコンピュータのような大規模な計算システムで用いられる。その名称は「Peta Floating Point Operations Per Second」の略であり、1秒間に実行できる浮動小数点演算の回数をペタ(Peta)という単位で表現したものだ。
まず、FLOPSという単位から理解する必要がある。FLOPSは「Floating Point Operations Per Second」の略であり、これは1秒間に実行可能な浮動小数点演算の回数を表す。浮動小数点演算とは、小数点以下の数値を含む実数を扱う計算のことで、科学技術計算、シミュレーション、画像処理、人工知能(AI)の学習など、多くの高度な計算処理で不可欠な要素となる。一般的な整数演算と比較して、浮動小数点演算はより複雑で多くの計算リソースを必要とすることが多いため、コンピュータの性能評価においては重要な指標となる。このFLOPSは、コンピュータの処理能力を客観的に示すための国際的な標準単位として広く認知されている。
FLOPSにはその計算能力の規模に応じて様々な接頭辞が付けられる。例えば、1秒間に100万回(10の6乗)の浮動小数点演算ができる場合はMFLOPS(Mega FLOPS)、10億回(10の9乗)の場合はGFLOPS(Giga FLOPS)、1兆回(10の12乗)の場合はTFLOPS(Tera FLOPS)と表記される。そして、PFLOPSはこれらよりもさらに大きな計算能力を表す単位であり、ペタ(Peta)という接頭辞が10の15乗を意味するため、1 PFLOPSは1秒間に1000兆回(10の15乗)の浮動小数点演算が可能であることを示す。これは1000 TFLOPS、あるいは100万 GFLOPSに相当する極めて膨大な計算能力である。
このようなPFLOPSクラスの計算能力は、通常のパーソナルコンピュータや一般的なサーバーでは到底達成できない。PFLOPSの性能を持つシステムは、主にスーパーコンピュータと呼ばれる大規模な並列計算機で実現される。スーパーコンピュータは、数万から数十万、あるいはそれ以上の多数のプロセッサ(CPUやGPUなど)を相互に高速なネットワークで接続し、それらを協調して動作させることで、単一のプロセッサでは不可能な膨大な計算を並行して処理する。これにより、個々のプロセッサの性能の総和として、PFLOPSレベルの計算能力が達成される。また、計算処理の効率を最大限に高めるためには、高速なメモリ、大容量かつ高速なストレージ、そしてプロセッサ間のデータ転送を担う低遅延かつ高帯域なインターコネクトネットワークなども不可欠となる。
PFLOPSクラスの計算能力が求められる分野は多岐にわたる。例えば、地球規模の気象変動予測や地震・津波のシミュレーション、新薬の開発における分子構造解析、自動車や航空機の設計における流体力学シミュレーション、宇宙の起源や銀河の形成に関する天文学的な計算、新たな材料の物性予測、そして近年急速に発展している人工知能(AI)のディープラーニングにおける大規模なモデルの学習などが挙げられる。これらの分野では、極めて複雑なモデルや膨大なデータを扱うため、PFLOPSレベルの計算能力がなければ現実的な時間内で計算を完了させることができない。
スーパーコンピュータの性能は、その開発の歴史において着実に向上してきた。1990年代にはGFLOPSクラスのシステムが最先端とされ、2000年代にはTFLOPSクラスのシステムが登場した。そして2010年代には、日本の「京」コンピュータをはじめとするPFLOPSクラスのスーパーコンピュータが次々と開発され、世界の計算科学分野を牽引してきた。この性能向上は、プロセッサ自体の高性能化だけでなく、多数のプロセッサを効率的に連携させる並列処理技術や、大規模システムを安定稼働させるためのソフトウェア技術の進歩によって支えられてきた。
現在では、PFLOPSを超えるExaFLOPS(エクサフロップス、10の18乗)クラスの計算能力を持つシステムの開発が進められており、さらなる大規模な計算需要に応えようとしている。PFLOPSは、現代の科学技術、産業、社会の発展を支える上で欠かせない、最先端の計算能力を示す指標として、今後もその重要性を維持し続けるだろう。システムエンジニアを目指す者にとって、このような大規模計算の概念とそれを支える技術への理解は、将来のITインフラを設計・構築・運用する上で重要な基礎知識となる。