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レイトレーシング(レイトレーシング)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

レイトレーシング(レイトレーシング)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

レイトレーシング (レイトレーシング)

英語表記

ray tracing (レイ トレーシング)

用語解説

レイトレーシングとは、三次元コンピュータグラフィックス(3DCG)において、光の物理的な挙動をシミュレーションすることで、極めて写実的な画像を生成するレンダリング手法の一つである。従来のレンダリング手法では表現が難しかった、光の複雑な反射、屈折、影、そして間接照明の効果などを、より物理法則に忠実に再現することを目指す。その結果、あたかも現実世界で撮影されたかのような、高品位なCGイメージを作り出すことが可能になる。これは、映画、アニメーション、建築パース、そして最近ではゲームといった多様な分野で、視覚表現のリアリティを大幅に向上させるために利用されている。

レイトレーシングの基本的な考え方は、仮想的なカメラの視点からシーンへ光線を「逆向き」に放ち、その光線がオブジェクトに当たった際の振る舞いを追跡することである。これにより、各ピクセルが最終的にどのような色になるかを決定する。具体的な処理は、まずカメラの各ピクセルから光線を発射し、シーン内のオブジェクトとの交差判定を行うことから始まる。この光線が最初に当たるオブジェクトを見つけ出すと、その交差点において、光源からの直接光、周囲からの間接光、そしてオブジェクト自身の材質特性(色、反射率、透明度など)に基づいて、その点の明るさや色が計算される。

レイトレーシングの核心的な処理は、一度オブジェクトに当たった光線が、その材質に応じて反射、屈折、または散乱するといった「二次光線」を生成し、これらの二次光線もまたシーン内を追跡し続ける点にある。例えば、鏡面のような反射率の高いオブジェクトに光線が当たった場合、鏡面反射の法則に従って反射する方向に新たな光線(反射光線)が生成され、その反射光線が次に当たるオブジェクトを探索し、その情報を取得する。同様に、ガラスや水のような透明なオブジェクトに当たった場合、スネルの法則に従って屈折する方向に新たな光線(屈折光線)が生成され、その経路が追跡される。また、影を生成するためには、光線がオブジェクトに当たった交差点から各光源に向かって光線(影光線)を飛ばし、その光線が光源に到達するまでに他のオブジェクトによって遮られるかどうかを判定する。もし遮蔽物があればその点は影になる。これらの二次光線は、さらに三次、四次と再帰的に生成され、複雑な光の相互作用をシミュレートしていくことで、現実世界に近い写実性を実現する。この再帰的な計算プロセスによって、互いに映り込む鏡像や、透明な物体を通した複雑な像、そして物体が環境光を反射して周囲を照らす「大域照明(Global Illumination)」といった物理現象が自然に表現される。

レイトレーシングの大きな利点は、これらの複雑な光の現象を、物理法則に基づいて比較的容易に、かつ高精度に表現できる点にある。従来のレンダリング手法であるラスタライゼーションが、主に物体の表面を投影し、テクスチャやシェーダーを用いてその表面の色や質感を表現するのに対し、レイトレーシングは光の経路を直接計算するため、アーティストが手作業で複雑な照明設定や影の調整を行う手間を削減し、自然な反射、屈折、影、そして大域照明を実現できる。特に、光沢のある表面でのリアルなハイライト、透明なオブジェクトの内部構造の正確な表現、複数の物体が互いに光を反射し合う複雑なシーンにおいて、その真価を発揮する。

しかし、その一方で、レイトレーシングは計算負荷が非常に高いという大きな課題を抱えていた。各ピクセルごとに多数の光線を生成し、それぞれがシーン内の無数のオブジェクトと交差判定を行い、さらに再帰的に二次光線を追跡するため、膨大な計算資源と時間が必要となる。そのため、長らく映画や建築パースなどの、レンダリングに時間をかけることが許容されるオフラインレンダリングの分野での利用が主であり、リアルタイム性が求められるゲームやインタラクティブアプリケーションでの採用は困難であった。

近年、この状況は大きく変化している。グラフィックスプロセッシングユニット(GPU)の性能が飛躍的に向上し、特にレイトレーシング専用のハードウェアコア(NVIDIAのRTコアなど)が搭載されるようになったことで、リアルタイムでのレイトレーシング処理が可能になってきた。NVIDIAのRTXシリーズやAMDのRDNA 2以降のGPUなどがこれに該当する。また、MicrosoftのDirectX Raytracing (DXR) や Khronos GroupのVulkan Ray Tracing といったグラフィックAPIが整備され、開発者がレイトレーシング機能を容易に利用できる環境が整ったことも大きい。

現在の主流は、従来のラスタライゼーションを主軸としつつ、影、反射、大域照明などの特定の効果にのみレイトレーシングを適用する「ハイブリッドレンダリング」手法である。これにより、リアルタイム性能を維持しつつ、レイトレーシングがもたらす高い写実性を部分的に享受できるようになっている。さらに、生成されたノイズの多いレイトレーシング画像を機械学習ベースのディノイザーで処理することで、計算量を削減しつつ、高品質な最終画像を得る技術も進化している。これにより、少ない光線数で高速に処理し、ディノイジングで品質を向上させるアプローチが広く採用されている。

レイトレーシングは、映画やアニメーションのVFX、建築や製品デザインのビジュアライゼーション、自動車開発におけるライティングシミュレーションなど、その応用範囲を広げている。そして、最新のゲームでは、より没入感のあるリアルな光環境を提供するためにリアルタイムレイトレーシングが積極的に導入されており、今後、システムエンジニアが関わるさまざまな分野で、その知識と技術がますます重要になっていくことは間違いない。

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