機微情報 (キビジョウホウ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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機微情報 (キビジョウホウ) の読み方

日本語表記

機微情報 (キビジョウホウ)

英語表記

sensitive information (センシティブ インフォメーション)

機微情報 (キビジョウホウ) の意味や用語解説

機微情報とは、個人情報の中でも特に慎重な取り扱いが求められる、個人の尊厳やプライバシーに深く関わる情報を指す。英語では「Sensitive Personal Information」や「Sensitive Data」と表現される。この情報が漏洩したり、不適切に利用されたりすると、本人に対して不当な差別や偏見、その他の不利益が生じるおそれが極めて高いため、法律やガイドラインによって厳格な保護措置が定められている。システムエンジニアは、機微情報を取り扱うシステムを開発・運用する際に、その重要性とリスクを正しく理解し、技術的および組織的な安全管理措置を講じる重い責任を負う。 機微情報の概念を理解する上で最も重要なのが、日本の「個人情報の保護に関する法律」(個人情報保護法)で定められている「要配慮個人情報」である。機微情報という言葉は法律上の正式な用語ではないが、一般的にこの要配慮個人情報とほぼ同義で用いられる。個人情報保護法では、要配慮個人情報を「本人の人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により害を被った事実その他本人に対する不当な差別、偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要するものとして政令で定める記述等が含まれる個人情報」と定義している。具体的には、人種、信条(思想や宗教)、社会的身分(被差別部落の出身など)、病歴、犯罪の経歴、犯罪被害の事実、身体障害・知的障害・精神障害などがあること、健康診断の結果、医師による指導や診療・調剤の情報などが該当する。これらの情報を取得する際には、法令に基づく場合などの例外を除き、原則としてあらかじめ本人の同意を得ることが義務付けられている。これは、通常の個人情報(氏名や住所など)の取得よりも厳格なルールであり、機微情報の特殊性を示している。 また、金融分野や医療分野など、特定の業界では、個人情報保護法が定める要配慮個人情報よりもさらに広い範囲の情報を機微情報として定義し、その取り扱いを厳しく制限している場合がある。例えば、金融庁のガイドラインでは、労働組合への加盟、門地、本籍地、保健医療、性生活に関する情報(性交渉の経験や性的指向など)も機微情報に含めている。これらの情報は、融資の審査などで差別的な判断材料として使われることを防ぐ目的から、原則として取得、利用、第三者提供が禁止されている。システムエンジニアは、担当するシステムの業界特有のガイドラインも把握しておく必要がある。 システム開発の現場において、機微情報を取り扱う際には、設計段階から運用に至るまで、あらゆる工程で細心の注意が求められる。データベースを設計する際は、機微情報を含むカラムやテーブルを明確に識別し、アクセス権限を最小限の担当者に限定するなどの対策が不可欠である。例えば、一般の顧客情報テーブルとは別に、機微情報専用のテーブルを作成し、より厳格なアクセスポリシーを適用することが考えられる。データの保管にあたっては、保存媒体の暗号化は必須である。データベース全体を暗号化する透過的データ暗号化(TDE)や、特定のカラムのみを暗号化する方式を適切に選択し、実装しなければならない。さらに、システム間の通信経路上で情報が傍受されるリスクに備え、TLS/SSLによる通信の暗号化も当然の要件となる。 開発やテストの工程で本番データを利用する際には、特に注意が必要だ。本番環境と同等の厳密な管理が難しい開発環境やテスト環境に、暗号化されていない生の機微情報を配置することは、重大な情報漏洩インシデントにつながる。そのため、データをマスキング(意味のない別の文字列に置き換える)したり、統計的な性質を保ちつつ個人を特定できないようにする匿名化処理を施したりすることが極めて重要である。 システムの運用段階では、誰が、いつ、どの機微情報にアクセスしたのかを正確に記録するアクセスログの取得と定期的な監査が欠かせない。これにより、不正なアクセスや内部犯行を検知し、万が一インシデントが発生した際の原因究明を迅速に行うことができる。権限管理においては、業務上本当に必要な担当者のみが必要な情報にアクセスできるという「最小権限の原則」を徹底しなければならない。また、ファイアウォールや侵入検知システム(IDS/IPS)といった技術的な対策に加え、サーバールームへの入退室管理といった物理的な安全管理措置も組み合わせて、多層的な防御を構築することが求められる。 機微情報は、単なるデータではなく、個人の人生や尊厳そのものに関わる情報である。システムエンジニアは、技術的なスキルを駆使して情報を保護するだけでなく、関連する法律やガイドラインを遵守し、高い倫理観を持って業務に臨むことが強く求められる。機微情報の適切な取り扱いは、企業の信頼性を担保し、社会的な責任を果たす上で不可欠な要素なのである。

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