ソフトウェア品質特性 (ソフトウェアヒンシツトクセイ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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ソフトウェア品質特性 (ソフトウェアヒンシツトクセイ) の読み方

日本語表記

ソフトウェア品質特性 (ソフトウェアヒンシツトクセイ)

英語表記

Software quality characteristics (ソフトウェア クオリティ キャラクターリスティックス)

ソフトウェア品質特性 (ソフトウェアヒンシツトクセイ) の意味や用語解説

ソフトウェア品質特性とは、ソフトウェアがどの程度優れた性質を持っているかを示す指標である。これはソフトウェアの設計、開発、運用において非常に重要な概念であり、ユーザーの満足度やビジネスの成功に直結する。国際標準化機構 (ISO) と国際電気標準会議 (IEC) が定めるISO/IEC 25010 (SQuaRE) などの国際規格では、ソフトウェアの品質特性を複数の主要なカテゴリに分類し、それぞれをさらに細分化して定義している。システムエンジニアにとって、これらの品質特性を理解し、開発するソフトウェアに適切に組み込むことは、高品質なシステムを提供する上で不可欠な知識となる。 ソフトウェア品質特性の詳細は、主に以下の八つのカテゴリに分類される。まず、機能適合性とは、ソフトウェアが、ユーザーや利害関係者の明示的および暗示的な要求に応じた機能を提供する度合いを指す。これはソフトウェアが「何ができるか」を評価するもので、例えば、ECサイトであれば商品の検索、購入、決済といった主要な機能が正確に動作することや、必要な情報がきちんと表示されることなどがこれに該当する。機能の正確性、完全性、適切性が評価の対象となる。 次に、性能効率性とは、指定された条件下で、ソフトウェアが時間やリソース(CPU、メモリ、ネットワークなど)を効率的に利用して目的を達成できる度合いである。具体的には、システムの応答速度、処理能力、使用メモリ量などが挙げられる。例えば、ウェブサイトのページ表示が速いことや、多くのユーザーが同時にアクセスしても処理が遅くならないことなどがこれにあたる。システムの快適な利用にはこの特性が重要となる。 互換性は、ソフトウェアが、異なる環境(例えば、異なるオペレーティングシステム、ブラウザ、ハードウェア、または他のソフトウェアシステム)で問題なく動作できる、またはデータや機能の交換ができる度合いである。例えば、あるアプリケーションがWindowsでもmacOSでも動作することや、異なるバージョンのデータ形式を読み書きできることなどがこれに該当する。多様な利用環境に対応するためには、この特性が不可欠である。 使用性は、特定の利用者が、特定の利用状況において、効果的に、効率的に、そして満足してソフトウェアを利用できる度合いである。操作のしやすさ、学習しやすさ、エラー発生時のリカバリーのしやすさ、ユーザーインターフェースの分かりやすさなどが評価対象となる。例えば、直感的に操作できるデザインや、ヘルプ機能が充実していることなどがこれに当たる。ユーザーがストレスなくソフトウェアを使いこなせるかどうかを左右する。 信頼性は、ソフトウェアが、指定された条件下で、指定された期間にわたって、指定された性能レベルを維持できる度合いである。具体的には、故障の発生頻度、復旧のしやすさ、障害発生時の安定性などが評価される。例えば、システムが頻繁にクラッシュしないことや、万一エラーが発生してもデータが失われにくいことなどがこれに該当する。システムが安定して稼働し続けるためには最も基本的な特性と言える。 セキュリティは、ソフトウェアが、情報やデータを不正なアクセス、使用、開示、破壊、変更、または妨害から保護できる度合いである。プライバシー保護、アクセス制御、認証の強固さ、データの機密性、完全性、可用性の確保などがこれに当たる。例えば、個人情報が漏洩しないように暗号化されていることや、不正ログインを防ぐ仕組みがあることなどがこれに該当する。情報が重要な現代において、システムに対する信頼を得る上で極めて重要な特性である。 保守性は、ソフトウェアが、将来的な修正、改善、または適応(例えば、バグ修正、機能追加、環境の変化への対応)を容易に行える度合いである。コードの可読性、モジュール性、変更の容易さなどが評価される。例えば、プログラムの構造が分かりやすく、一部分を変更しても他の部分に影響が出にくいことなどがこれに当たる。ソフトウェアは一度開発されて終わりではなく、運用していく中で常に変化が求められるため、長期的な視点で見ると非常に重要な特性である。 最後に、移植性は、ソフトウェアが、異なるハードウェア、ソフトウェア、またはその他の動作環境に移行できる度合いである。例えば、開発環境から本番環境へスムーズに移行できることや、新しいバージョンのOSに対応しやすいことなどがこれに該当する。システム環境が変化しても、柔軟に対応できる能力を示す。 これらの品質特性は、個々に独立しているわけではなく、相互に影響し合う関係にある。例えば、セキュリティを高めると処理が複雑になり性能が低下したり、機能を追加しすぎるとシステムの保守性が低下したりするなど、特性間にはトレードオフの関係が存在することがしばしばある。システムエンジニアは、プロジェクトの目的やユーザーの要件に基づいて、これらの品質特性の優先順位を適切に設定し、バランスを取りながらソフトウェア開発を進める必要がある。高品質なソフトウェアは、ユーザーの信頼を獲得し、長期的な利用を促進し、ビジネス価値を高める上で不可欠な要素である。そのため、ソフトウェア開発の初期段階から品質特性を意識し、設計、実装、テストの各フェーズで適切に評価・改善を行うことが求められる。

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