スタティックルーティング (スタティックルーティング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

作成日: 更新日:

スタティックルーティング (スタティックルーティング) の読み方

日本語表記

スタティックルーティング (スタティックルーティング)

英語表記

Static routing (スタティックルーティング)

スタティックルーティング (スタティックルーティング) の意味や用語解説

スタティックルーティングは、ネットワークにおけるパケットの経路を、ネットワーク管理者が手動で設定する方法である。ルータがパケットをどの経路に転送するかを決定するための情報、すなわちルーティングテーブルのエントリを、管理者が一つ一つ直接登録する。これに対し、ルータ同士が互いに経路情報を自動的に交換し、最適な経路を動的に学習する方法はダイナミックルーティングと呼ばれる。スタティックルーティングは、その名の通り固定された経路を用いるため、小規模なネットワークや特定の条件下でその利点を活かすことができる。シンプルな構成が特徴であり、ネットワークの動作が予測しやすいという特性を持つ。 スタティックルーティングの具体的な動作原理は、ネットワーク管理者がルータに対して、特定の宛先ネットワークへのパケットをどのネクストホップルータに転送するか、またはどのインターフェースから出力するかを明示的に指示することにある。この指示は、ルータのルーティングテーブルに永続的なエントリとして記録される。例えば、「192.168.1.0/24というネットワークへのパケットは、10.0.0.1というIPアドレスを持つ隣接ルータに送れ」といった形式で経路情報が設定される。ルータは受信したパケットの宛先IPアドレスとルーティングテーブルのエントリを照合し、最も一致度の高い(最長一致)経路に従ってパケットを転送する。 この方式の最大のメリットは、そのシンプルさと安定性にある。動的なルーティングプロトコルを実行するための複雑な設定やプロトコルのオーバーヘッドが不要であり、ルータのCPUリソースやメモリ消費を抑えることができる。また、経路情報が管理者の意図通りに固定されるため、ネットワークの動作が予測しやすく、トラブルシューティングも比較的容易である。外部からのルーティング情報の不正な注入を防ぐことができ、セキュリティ面での利点も大きい。特に、インターネットへの出口となるデフォルトルートの設定や、外部の特定のネットワークへの接続経路など、限定された経路を固定したい場合に有効活用される。 しかし、デメリットも存在する。最も顕著なのは、大規模なネットワークにおいては管理の手間が膨大になることである。ネットワーク上のルータの数や経路の数が多くなると、すべてのルータに手動で経路を設定することが現実的ではなくなる。また、ネットワーク構成に変更があった場合、例えば新しいネットワークセグメントが追加されたり、既存の経路が変更されたりした際には、関係するすべてのルータのルーティングテーブルを管理者が手動で更新しなければならない。これは非常に時間と労力を要する作業であり、設定ミスを引き起こすリスクも高まる。 さらに、スタティックルーティングは経路障害に対する自動的な対応ができない。もし設定された経路上のルータやリンクに障害が発生した場合、パケットはその経路を迂回することができず、通信が途絶してしまう。これを回避するためには、事前にバックアップ経路も手動で設定しておく必要があるが、これも管理の複雑さを増す要因となる。ダイナミックルーティングが経路障害を検知し、自動的に代替経路へ切り替える機能を持つことと比べると、この点は運用上の大きな課題となる。 スタティックルーティングが用いられる具体的なシナリオとしては、非常に小規模なネットワーク、例えば数台のルータしかない環境が挙げられる。また、外部のネットワークと接続する「スタブネットワーク」(他のネットワークへの出入口が一つしかないネットワーク)のルーティングや、インターネットへの唯一の出口となる「デフォルトルート」の設定に頻繁に利用される。デフォルトルートとは、ルーティングテーブルに一致する特定の経路が見つからない場合に、すべてのパケットを転送する最終的な出口を指す。これは「すべての不明な宛先へのパケットは、この特定のルータへ送れ」という形で設定される。このように、限定された条件下ではそのシンプルさ、安定性、セキュリティの高さから依然として重要なルーティング手法の一つとして活用されている。

スタティックルーティング (スタティックルーティング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説