ダイナミックルーティング (ダイナミックルーティング) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

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ダイナミックルーティング (ダイナミックルーティング) の読み方

日本語表記

動的ルーティング (ドウテキルーティング)

英語表記

dynamic routing (ダイナミックルーティング)

ダイナミックルーティング (ダイナミックルーティング) の意味や用語解説

ダイナミックルーティングは、ネットワーク上のデータが目的地に到達するための最適な経路を、ルータが自動的に学習し、維持する技術である。これは、あらかじめ手動で経路を設定するスタティックルーティングとは異なり、ネットワークの状況変化に応じて柔軟に経路情報を更新できる点が最大の特徴となる。これにより、大規模なネットワークにおいて管理の負担を大幅に軽減し、耐障害性や可用性を高めることが可能となる。 詳細を述べる。 ネットワークにおいて、データパケットが送信元から目的地へ効率的に到達するためには、ルータが適切な転送経路を選択する必要がある。この経路選択の仕組みをルーティングと呼ぶ。ルーティングには大きく分けてスタティックルーティングとダイナミックルーティングの二種類がある。スタティックルーティングは、管理者がルータ一台一台に手動で経路情報を設定する方法で、小規模かつ構成変更が少ないネットワークに適している。しかし、ネットワークの規模が拡大したり、頻繁に構成が変更されたりする場合、手動での設定・管理は膨大な労力と時間が必要となり、人為的なミスが発生するリスクも高まる。また、経路に障害が発生した際には、管理者が手動で代替経路を設定し直すまで、通信が停止する可能性がある。 このようなスタティックルーティングの限界を克服するために開発されたのがダイナミックルーティングである。ダイナミックルーティングでは、ルータ同士が「ルーティングプロトコル」と呼ばれる特定の通信規約を用いて互いに情報交換を行い、ネットワーク全体のトポロジ情報や経路情報を自動的に学習し、自身の「ルーティングテーブル」を動的に更新する。これにより、ネットワーク構成の変更や障害発生時にも、人間が介入することなく自動的に最適な経路を再計算し、通信を継続できるようになる。 ダイナミックルーティングの基本的な仕組みは、ルータが以下のプロセスを継続的に実行することにある。まず、同一のルーティングプロトコルを有効にしている隣接ルータ同士が、定期的に「ハローパケット」などの制御メッセージを交換し、互いの存在を確認する。次に、各ルータは自身の知っている経路情報や、接続しているリンクの状態(例:帯域幅、遅延など)を他のルータに通知する。この情報を受け取ったルータは、それらを基にネットワーク全体の地図のような情報(トポロジ情報)を構築し、そこから目的地までの最短経路や最適な経路を、それぞれが持つアルゴリズムに従って計算する。計算された最適な経路情報はルーティングテーブルに登録され、データパケットの転送に利用される。ネットワークに何らかの変化(新しいルータの追加、既存のルータの故障、リンク障害など)が発生すると、その変化を検知したルータが新たな情報を他のルータに通知し、全てのルータがルーティングテーブルを再計算・更新する。この一連のプロセスにより、ネットワーク全体の経路情報が常に最新の状態に保たれる。経路が変化してから、すべてのルータのルーティングテーブルが更新され、最適な経路に収束するまでの時間をコンバージェンスタイムと呼ぶ。 代表的なルーティングプロトコルには、主に同一組織内のネットワーク(自律システム:AS)で利用されるIGP(Interior Gateway Protocol)と、異なるAS間、すなわちインターネット全体で利用されるEGP(External Gateway Protocol)がある。 IGPには、RIP(Routing Information Protocol)やOSPF(Open Shortest Path First)、EIGRP(Enhanced Interior Gateway Routing Protocol)などがある。 RIPは最も古く、シンプルで実装が容易な距離ベクトル型プロトコルである。ルータ間のホップ数(経由するルータの数)を基準に最適な経路を選択し、最大ホップ数が15という制限があるため、小規模なネットワークで利用されることが多い。コンバージェンスが比較的遅いという特徴も持つ。 OSPFはリンクステート型プロトコルで、大規模なネットワーク環境に広く利用される。ネットワーク内のすべてのルータがリンクの状態情報を交換し、ネットワーク全体のトポロジ情報を正確に把握した上で、Dijkstraアルゴリズム(SPFアルゴリズム)を用いてコスト(帯域幅、遅延など)を考慮した最短経路を計算する。コンバージェンスが速く、ネットワークをエリアに分割して階層化できるため、大規模ネットワークの管理性と拡張性に優れる。 EIGRPはシスコシステムズ社が開発したハイブリッド型のプロトコルで、距離ベクトル型の簡便さとリンクステート型の高速なコンバージェンスを併せ持つ。 一方、EGPの代表例はBGP(Border Gateway Protocol)である。BGPはインターネットの根幹を支えるパスベクトル型プロトコルで、異なるAS間で経路情報を交換するために利用される。BGPは単に最短経路を選ぶだけでなく、ルーティングポリシーに基づいて経路を選択できるため、ISP(インターネットサービスプロバイダ)間の複雑なルーティング要件に対応できる。 ダイナミックルーティングの利点は多岐にわたる。第一に、自動化とスケーラビリティである。ネットワークの規模が拡大しても、手動設定の負担なく新しいルータやネットワークセグメントを容易に追加できる。第二に、耐障害性と冗長性である。経路に障害が発生した場合でも、ルーティングプロトコルが自動的に代替経路を検出し、トラフィックを迂回させるため、ネットワークのダウンタイムを最小限に抑えることができる。第三に、常に最適な経路を選択する効率性である。ネットワークの状態(トラフィック量やリンクの負荷など)が変化しても、ルーティングプロトコルが動的に最適な経路を計算し直すため、データ転送の効率が向上する。 しかし、ダイナミックルーティングには考慮すべき欠点も存在する。ルーティングプロトコルが常時経路情報の交換と計算を行うため、ルータのCPUやメモリといったリソースを消費し、スタティックルーティングに比べてルータへの負荷が高い。また、ルーティングプロトコルの設定やトラブルシューティングは、スタティックルーティングよりも複雑であり、ネットワーク技術に関する深い知識が求められる。さらに、ルーティング情報の不正な注入や改ざんが行われると、ネットワーク全体に影響が及ぶセキュリティリスクも存在する。このため、ルーティングプロトコルの認証機能などを利用してセキュリティ対策を講じる必要がある。 これらの利点と欠点を理解し、ネットワークの規模、複雑性、必要な可用性、セキュリティ要件などを考慮して、ダイナミックルーティングとスタティックルーティングを適切に使い分けることが、効果的なネットワーク設計と運用には不可欠である。

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