タグVLAN (タグブイエルエーエヌ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
タグVLAN (タグブイエルエーエヌ) の読み方
日本語表記
タグVLAN (タグブイラン)
英語表記
Tag VLAN (タグブイラン)
タグVLAN (タグブイエルエーエヌ) の意味や用語解説
タグVLANは、物理的なネットワーク構成とは独立して、仮想的な複数のネットワークを構築するVLAN(Virtual Local Area Network)を実現するための主要な技術の一つである。VLANは、物理的には同じスイッチに接続されているコンピュータを、あたかも異なるネットワークに接続されているかのように論理的に分割する仕組みである。この分割により、部署ごとや用途ごとにネットワークを分離し、不要な通信を遮断してセキュリティを向上させたり、ネットワーク全体の通信効率を高めたりすることが可能になる。タグVLANは、このVLANの仕組みを、特に複数のネットワークスイッチをまたがるような、より大規模で複雑な構成において効率的に実現するために用いられる。その核心は、個々の通信データ(イーサネットフレーム)に「タグ」と呼ばれる識別情報を付加し、そのデータがどのVLANに所属するものなのかを明確にすることで、一本の物理的なケーブル上で複数のVLANの通信を多重化して伝送する点にある。これにより、物理的な配線やポートの数を増やすことなく、柔軟で拡張性の高いネットワークを構築できる。 タグVLANの技術的な仕組みは、国際標準規格であるIEEE 802.1Qによって定められている。この規格では、イーサネットフレームの内部に「VLANタグ」と呼ばれる4バイトの特別なフィールドを挿入することが定義されている。このVLANタグには、主にそのフレームが所属するVLANを識別するための12ビットの情報、すなわちVLAN ID(VID)が含まれる。VIDは理論上0から4095までの値を持ち、これにより最大で約4000個の異なるVLANを識別することが可能となる。ネットワーク機器、特にVLAN対応のスイッチは、フレームを中継する際にこのVLANタグ内のVIDを参照し、どのVLAN向けの通信なのかを判断して適切なポートにのみデータを転送する。この動作により、異なるVLANに所属する端末間の通信は、ルーターなどを介さない限り直接行われることがなくなり、論理的なネットワーク分割が実現される。 タグVLANを運用する上で、スイッチのポート設定には主に二つの種類が存在する。一つは「アクセスポート」、もう一つは「トランクポート」である。アクセスポートは、特定の単一のVLANにのみ所属するように設定されたポートであり、主にパソコンやサーバーといった、VLANの仕組みを意識しないエンドデバイスを接続するために使用される。アクセスポートは、接続されたデバイスからVLANタグの付いていない通常のフレームを受信すると、そのポートに設定されたVLANのVIDを持つタグを付加してスイッチ内部で処理する。逆に、スイッチ内部からそのデバイスへフレームを送信する際には、VLANタグを取り除いてから送り出す。これにより、エンドデバイスはVLANの存在を意識することなく通信できる。 一方、トランクポートは、複数の異なるVLANの通信を同時に通すことができるように設定されたポートである。主にスイッチ同士を接続するために用いられる。トランクポートは、VLANタグが付加されたフレームをそのままの形で送受信する。これにより、一本の物理ケーブルだけで複数のVLANに所属する端末間の通信をすべて中継することが可能となり、ネットワークの物理的な配線を大幅に簡素化できる。例えば、あるスイッチにVLAN 10とVLAN 20が存在し、別のスイッチにも同様のVLANが存在する場合、この二つのスイッチをトランクポートで接続すれば、一本のケーブルでVLAN 10とVLAN 20の両方の通信をやり取りできる。もしタグVLANの仕組みがなければ、VLANごとに物理的なケーブルで接続する必要があり、非常に非効率となる。 また、トランクポートの概念に関連して「ネイティブVLAN」という設定も存在する。これは、トランクポートにおいて例外的にVLANタグを付けずに送受信されるVLANを指定するものである。VLANに対応していない古い機器との接続や、特定の管理用通信のために利用されることがあるが、設定を誤ると意図しないVLANに通信が流れてしまうセキュリティリスクも伴うため、慎重な設計が求められる。 結論として、タグVLANは、イーサネットフレームにVLAN IDを含むタグを付加することで、物理的な制約を超えて論理的なネットワーク分割を柔軟かつ効率的に実現する技術である。アクセスポートとトランクポートという異なる役割を持つポートを適切に設定し組み合わせることで、配線の簡素化、物理ポートの有効活用、そして迅速なネットワーク構成の変更が可能となり、現代の企業ネットワークにおいて不可欠な基盤技術となっている。