【ITニュース解説】What AI Still Gets Wrong About Code
2025年09月09日に「Medium」が公開したITニュース「What AI Still Gets Wrong About Code」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
AIはプログラミングを助ける便利なツールだが、まだ完璧ではない。ChatGPTやCopilotなどが生成するコードには間違いが含まれることがあるため、内容を理解し、自分で確認するスキルが重要である。
ITニュース解説
近年、ChatGPTやGitHub CopilotといったAIを活用したコーディング支援ツールが急速に普及し、ソフトウェア開発のあり方を大きく変えつつある。これらのツールは、簡単な指示を与えるだけでコードの断片や関数全体を自動生成し、プログラミングの生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めている。しかし、その利便性の裏で、AIが生成するコードに潜む課題や限界も明らかになってきた。システムエンジニアを目指す上で、これらのツールを効果的に活用するためには、AIが何を苦手とし、どのような間違いを犯しやすいのかを正確に理解しておくことが不可欠である。
第一に、AIはプログラムが置かれている「文脈」を完全に理解することができない。ソフトウェア開発は、単に独立したコードを書く作業ではない。多くの場合、開発中のプログラムは、既存の巨大なシステムの一部として機能する必要がある。そこには、プロジェクト固有のコーディング規約、社内で定められた設計思想、他のモジュールとの依存関係、そしてそのソフトウェアが解決しようとしているビジネス上の課題といった、複雑な背景情報、すなわち文脈が存在する。AIは、提示された一部分のコードに基づいて処理を生成することは得意だが、こうしたプロジェクト全体の構造や長期的な保守性までを考慮した、最適なコードを生成する能力はまだ持っていない。結果として、AIが生成したコードは、その場では正しく動作するように見えても、システム全体に組み込んだ際に予期せぬ不具合を引き起こしたり、後々の修正を困難にしたりする可能性がある。
第二に、セキュリティ上の脆弱性を見過ごす、あるいは生み出してしまうリスクがある。AIは、インターネット上に公開されている膨大な量のコードを学習データとしているが、その中には古い情報や、セキュリティ的に問題のあるコードも含まれている。そのため、AIが生成したコードに、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティング(XSS)といった古典的だが深刻な脆弱性が含まれてしまうことがある。AIは最新のセキュリティ攻撃の手法や、それに対する防御策のベストプラクティスを常に完璧に把握しているわけではない。人間による注意深いレビューとセキュリティチェックがなければ、AIが意図せず作り出した脆弱性が、システム全体を危険に晒すことになりかねない。
第三に、AIは必ずしも効率的なコードを生成するとは限らない。同じ処理を実現するプログラムでも、使用するアルゴリズムやデータ構造によって、計算速度やメモリ使用量といったパフォーマンスは大きく異なる。AIは、機能的には正しいコードを生成できても、それが最も効率的であるとは限らない。大規模なデータを扱うシステムや、高速な応答が求められるサービスにおいて、非効率なコードは性能低下の直接的な原因となる。さらに、「ハルシネーション(幻覚)」と呼ばれる、AIが事実に基づかない情報を生成する現象も問題である。プログラミングの文脈では、これは存在しないライブラリや関数を、あたかも実在するかのようにコードの中に記述してしまうといった形で現れる。初心者がこれに気づかずに実装を進めると、解決が困難なエラーに直面することになる。
第四に、AIへの過度な依存は、エンジニア個人のスキル向上を妨げる危険性がある。特にプログラミングを学び始めたばかりの初心者が、問題解決のプロセスをAIに丸投げしてしまうと、論理的思考力やデバッグ能力といった、エンジニアとして最も重要な基礎スキルが身につかなくなる恐れがある。エラーの原因を特定し、粘り強く解決策を探るという経験は、エンジニアの成長に不可欠だ。AIが提示した答えを鵜呑みにするだけでは、なぜそのコードが正しく動くのか、あるいはなぜエラーが発生したのかという根本的な理解が深まらない。
最後に、著作権やライセンスの問題も無視できない。AIの学習データには、GPLなど特定の利用条件が定められたオープンソースのコードが含まれている可能性がある。AIが生成したコードに、そうしたライセンス付きコードの断片が意図せず混入した場合、商用プロジェクトなどで利用すると、深刻なライセンス違反を引き起こすリスクがある。
結論として、AIコーディングツールは開発者を置き換える存在ではなく、あくまで強力な「アシスタント」であると認識することが重要だ。これからのエンジニアには、AIを賢く使いこなし、その提案を批判的に評価する能力が求められる。AIが生成したコードを鵜呑みにするのではなく、その内容を深く理解し、文脈に合わせて修正し、セキュリティやパフォーマンスの観点から検証し、徹底的にテストする。このような人間による監督と判断があって初めて、AIは真価を発揮する。単純なコード生成はAIに任せ、人間はシステムの全体設計や複雑な問題解決、創造的なアーキテクチャの考案といった、より高次の知的作業に集中することが、将来のソフトウェア開発における成功の鍵となるだろう。