【ITニュース解説】AI活用で顧客体験はどう変わっていくか--Twilioの調査結果から探る
2026年09月17日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「AI活用で顧客体験はどう変わっていくか--Twilioの調査結果から探る」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
人が中心だった顧客体験(CX)にAIが導入され、そのあり方が変化している。将来的にはAI同士の関係性がCXの主体となり、顧客体験の概念が根本的に変わる可能性について議論されている。
ITニュース解説
顧客体験、略してCXとは、顧客が商品やサービスを認知し、購入し、利用するまでの一連のプロセスにおいて感じる、あらゆる体験の総称である。例えば、ウェブサイトでの情報収集、店舗での接客、購入後のサポート対応などがCXに含まれる。これまでは、このような顧客体験は、基本的に「人」が中心となって提供されてきた。顧客が疑問を抱けば、企業の担当者が直接対応し、顧客の要望に応じて、人がサービスを調整する、という形が一般的だった。
しかし、近年AI(人工知能)技術の急速な進化に伴い、この顧客体験のあり方が大きく変わりつつある。AIが企業の顧客対応やサービス提供の現場に深く入り込み始めたのだ。顧客が企業のウェブサイトで何かを検索する際にチャットボットが応答したり、過去の購買履歴に基づいてAIが自動でおすすめ商品を提案したりする、といった事例はすでに身近なものとなっている。これは、顧客とAIが直接コミュニケーションを取る「人とAIの関係性」の始まりであり、これまでの人同士のやり取りとは異なる新たな局面を迎えていると言える。
この「人とAIの関係性」において、AIは顧客の質問に迅速に答えたり、大量のデータから個々の顧客に最適な情報を見つけ出したりすることで、顧客の利便性を高める役割を果たす。企業側から見れば、AIを活用することで、人手不足の解消や業務効率の向上、そしてよりパーソナライズされたサービス提供が可能になるというメリットがある。しかし、一方で、AIの対応がマニュアル的すぎたり、顧客の複雑な感情を理解できなかったりするなどの課題も指摘されており、いかにAIが人間の温かみや柔軟性を持った対応に近づけるか、という点が議論の対象となっている。
Twilioという企業が行った調査結果は、このような顧客体験におけるAIの役割が、現在の「人とAIの関係性」にとどまらず、数年後にはさらに進化する可能性を示唆している。その進化の先には、「AIとAIの関係性」が顧客体験の主体になる、という未来が描かれているのだ。これは一体どういうことだろうか。
「AIとAIの関係性」とは、顧客側のAIと企業側のAIが直接連携し、相互に作用し合うことで、顧客体験を最適化する仕組みを指す。例えば、顧客が持つスマートデバイスに搭載されたパーソナルAIアシスタント(顧客側のAI)が、顧客の好みや行動パターンを学習しているとする。この顧客側のAIが、企業が提供するサービス(例えば、旅行会社のウェブサイトやECサイトなど)のAI(企業側のAI)と連携し、顧客の明示的な指示を待つことなく、自律的に最適な情報やサービスを提案する、といった状況が考えられる。
具体的に考えてみよう。顧客が「来月の旅行を計画したい」と漠然と考えているとする。顧客側のAIは、過去の旅行履歴、検索履歴、SNSでの発言などから、その顧客がどのような場所やアクティビティに関心があるかを理解している。同時に、企業側のAIは、旅行会社の空き状況、価格変動、人気のツアー情報などをリアルタイムで把握している。この二つのAIが連携することで、顧客が明示的に検索する前に、顧客の好みに完全に合致し、かつその時点で最もお得な旅行プランを自動的に提案できるようになるかもしれない。さらに、そのプランの予約手続きや、現地の情報収集、宿泊施設の手配なども、AI同士の連携によってスムーズに進められるようになる可能性がある。
これは単なる情報提供に留まらない。顧客が過去に体験したネガティブな要素(例えば、特定のホテルでの不快な経験)を顧客側のAIが記憶していれば、企業側のAIはその情報を考慮に入れ、同じような体験を避けるような提案をするだろう。また、顧客側のAIが顧客の健康状態や気分を察知し、企業側のAIに伝えることで、よりきめ細やかなサービス(例えば、体調に応じた食事の提案や、リラックスできる環境の提供など)が可能になることも考えられる。
このような「AIとAIの関係性」が主体となる顧客体験は、これまでの「人がサービスを選び、人がサービスを提供する」というモデルから、「AIが顧客のニーズを先読みし、AIが最適なサービスを自動で提供する」という、より自律的でパーソナライズされたモデルへの根本的な転換を意味する。顧客は、膨大な選択肢の中から自分で情報を探し出す手間から解放され、常に自分に最適化された体験を、意識することなく享受できるようになる。
企業にとっても、顧客の潜在的なニーズをAIが発掘し、適切なタイミングで適切なサービスを自動提供することで、顧客満足度を飛躍的に向上させ、結果として売上増や顧客ロイヤルティの強化に繋がるだろう。システムエンジニアの視点からは、このような未来を実現するためには、高度なAI開発はもちろんのこと、異なるシステム間でAIが円滑に連携するためのAPI設計やデータ共有基盤の構築、セキュリティ対策など、多岐にわたる技術的な課題を解決していく必要が出てくる。顧客体験の進化は、まさにAI技術とシステム構築の最前線を切り開く試みとなるだろう。