【ITニュース解説】Why I Stopped Using Google After Training My Own AI Search Engine

2025年09月09日に「Medium」が公開したITニュース「Why I Stopped Using Google After Training My Own AI Search Engine」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

ある開発者が、自身のブラウザ履歴などをAIに学習させ、パーソナライズされた検索エンジンを自作した。このAIは検索ワードを入力する前に必要な情報を予測して提示するため、開発者はGoogleの使用をやめたという。(118文字)

ITニュース解説

現代のインターネット検索は、Googleをはじめとする巨大な検索エンジンによって支えられているが、多くのユーザーが情報の洪水や広告、検索エンジン最適化(SEO)を目的とした低品質なコンテンツに悩まされている。こうした課題に対し、自分専用のデータを学習させたパーソナライズAI検索エンジンを構築することで、検索体験を根本から変革しようとする試みが注目されている。これは、単に検索結果の精度を高めるだけでなく、ユーザーが情報を探すという行為そのもののあり方を変える可能性を秘めている。

この自作AI検索エンジンの中心的な考え方は、不特定多数に向けられた広大なインターネットの情報ではなく、ユーザー個人のデジタル資産を知識の源泉とすることにある。具体的には、日々のブラウジング履歴、読んだ記事、個人的なメモ、ブックマークといった、その人自身の興味や関心、思考の軌跡を反映したデータを収集し、AIの学習対象とする。これにより、検索システムはユーザーの文脈や専門分野を深く理解し、一人ひとりに最適化された情報を提供することが可能になる。

この仕組みを実現しているのが、近年のAI技術の進歩、特に「ベクトル化(Embedding)」と「大規模言語モデル(LLM)」、そして「ベクトルデータベース」である。まず、収集されたテキストデータは、ベクトル化というプロセスを経て、AIが理解できる数値の配列に変換される。これは、単語や文章が持つ意味的な内容を、多次元空間上の座標として表現する技術である。意味が近い単語や文章は、この空間上で互いに近い位置に配置されるため、AIは単なるキーワードの一致ではなく、文脈やニュアンスといった意味的な類似性に基づいて情報を扱うことができるようになる。

次に、ベクトル化されたデータは「ベクトルデータベース」と呼ばれる専用のデータベースに格納される。このデータベースは、膨大なベクトルデータの中から、特定のベクトルと最も近い位置にあるベクトルを極めて高速に検索することに特化している。ユーザーが検索クエリ(質問)を入力すると、その質問文も同様にベクトル化され、データベース内で意味的に最も関連性の高い情報が瞬時に特定される。

そして最後に、大規模言語モデル(LLM)がその役割を果たす。ベクトルデータベースによって探し出された関連性の高い情報群は、ユーザーの元の質問と共にプロンプトとしてLLMに渡される。LLMは、これらの情報を基に、文脈を統合し、自然で分かりやすい文章を生成して回答する。この一連の流れは「検索拡張生成(Retrieval-Augmented Generation, RAG)」と呼ばれ、LLMが元々持っている膨大な知識に、個人の持つ専門的かつ最新の情報を付加して、より正確でパーソナライズされた回答を生成するための強力な手法となっている。

このアプローチは、従来の検索エンジンとは根本的に異なる価値を提供する。Google検索が全世界のウェブページをインデックス化し、キーワードとの関連性やページの権威性に基づいてランキング表示するのに対し、パーソナライズAI検索は、信頼できる自分自身の知識ベースの中から直接的な答えを導き出す。そのため、検索結果に広告や無関係な情報が紛れ込むことがなく、過去に自分が価値あると判断した情報源から、純度の高い知見を得ることができる。例えば、過去に読んだ特定の技術記事の断片的な記憶を頼りに質問すれば、AIがその記事の内容を正確に要約し、現在の課題解決に必要な部分を提示してくれるだろう。

さらに、このシステムはユーザーの行動を学習し続けるため、「入力する前に必要なものを予測する」といった高度な機能も実現可能になる。ユーザーが特定のプロジェクトに関連する資料を連続して閲覧している場合、システムはその文脈を理解し、次に関心を持つであろう関連ドキュメントや過去のメモを先回りして提示することができる。これは、検索が「能動的に探す」行為から、AIが「受動的に支援する」パートナーへと変化することを意味する。

システムエンジニアを目指す者にとって、この技術は非常に重要である。なぜなら、これは単なる検索ツールの話ではなく、今後のアプリケーション開発における新しい設計思想を示すものだからだ。ユーザーの文脈を理解し、対話的に情報を提供するインターフェースは、あらゆるサービスにおいて顧客満足度を向上させる鍵となるだろう。ベクトルデータベースの活用やLLMのAPI連携は、これからのシステム開発で求められる基本的なスキルセットの一部となる可能性が高い。情報の探し方が変わることは、私たちの働き方や学び方、そして問題解決のアプローチそのものを変革する力を持っている。このようなパーソナライズされた情報環境の構築は、技術が真に個人の知的生産性を拡張する未来の姿を示唆している。