LAG(ラグ)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

LAG(ラグ)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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読み方

日本語表記

ラグ (ラグ)

英語表記

LAG (ラグ)

用語解説

LAG(ラグ)とは、IT分野において、データ転送、システム処理、またはデバイスの応答などにおいて発生する「遅延」そのものを指す言葉である。この用語は、一般的には「もたつき」「遅れ」といった感覚で使われることが多いが、システムエンジニアを目指す上で、その具体的な原因や影響、そして対策を理解することは極めて重要である。LAGは、ネットワークの混雑、サーバーの処理能力不足、ソフトウェアの非効率性、さらにはデータベースの同期遅延など、様々な要因によって引き起こされる現象である。これは単なる不便さだけでなく、ユーザー体験の著しい悪化やビジネス機会の損失、さらにはシステムの信頼性低下に直結する深刻な問題となるため、その本質を深く理解し、適切に対処する能力が求められる。

LAGは発生するレイヤーによってその様相と原因が異なるため、それぞれを詳細に理解する必要がある。

ネットワークにおけるLAGは、データが送信元から宛先に到達するまでに要する時間の遅延、すなわち通信遅延を指す。これはデータパケットがネットワーク経路を通過する際に発生する様々な要因によって引き起こされる。主な原因としては、まずネットワーク帯域幅の不足が挙げられる。利用可能な帯域幅に対して送受信されるデータ量が多すぎる場合、データはキューに滞留し、処理が遅れる。次に、ネットワーク回線の混雑や品質の低下もLAGの原因となる。多数のユーザーが同時にネットワークを利用することで、データ伝送路が飽和状態になり、パケットの転送速度が低下する。ルーターやスイッチといったネットワーク機器自体の処理能力が限界に達している場合も、パケットの処理に時間がかかりLAGを引き起こす。さらに、地理的な距離も無視できない要因である。データが遠隔地のサーバーとやり取りされる場合、物理的な距離が長ければ長いほど、信号の伝送に時間がかかるため、必然的にLAGは大きくなる。パケットロスもLAGの主要な原因の一つである。ネットワーク上でデータパケットが失われると、再送処理が発生し、その分の時間が余計にかかるため、実質的な遅延が増大する。これらのネットワークLAGは、オンラインゲームにおけるキャラクターの操作遅延や反応の鈍さ、動画ストリーミングサービスにおける頻繁なバッファリングや画質の低下、Webページの表示速度の遅延、VoIP通話における音声の途切れや遅延といった形でユーザーに知覚される。

次に、システム処理におけるLAGについて解説する。これは、サーバーやクライアントPCといったコンピューター内部での処理が遅延し、アプリケーションやオペレーティングシステム(OS)の応答性が低下する状態を指す。この種のLAGの主な原因は、ハードウェアリソースの不足にある。具体的には、CPU(中央演算処理装置)の処理能力が限界に達し、多くのプロセスがCPUの実行待ち状態になることが挙げられる。これにより、ユーザーからの入力やプログラムの実行が遅れる。また、RAM(主記憶装置)の不足も深刻なLAGの原因となる。メモリが不足すると、OSはディスクの一部を仮想メモリとして利用する「スワップ」処理を開始する。ディスクへのアクセスはRAMに比べて非常に遅いため、このスワップ処理が頻繁に発生すると、システム全体のパフォーマンスが著しく低下し、顕著なLAGとして現れる。ストレージ(HDDやSSD)のI/O(入力/出力)性能がボトルネックになることも少なくない。特に大量のデータ読み書きが必要なデータベースサーバーや、頻繁にファイルアクセスが発生するアプリケーションにおいては、ストレージのI/O速度が処理全体の律速段階となり、LAGを発生させる。ソフトウェアの設計や実装の非効率性もLAGの重要な原因である。最適化されていないアルゴリズムの利用、無限ループやデッドロックの発生、大量のリソースを消費する処理の実行、データベースへの非効率なクエリ発行などが含まれる。これらのシステム処理におけるLAGは、アプリケーションのフリーズ、GUI(グラフィカルユーザーインターフェース)の操作に対する反応の遅延、バッチ処理の完了時間の長時間化として現れ、ユーザー体験の低下やビジネスプロセスの停滞を引き起こす。

データベースの世界では、特にレプリケーション、すなわちデータの複製において「LAG」という用語が頻繁に使われる。これは、マスターデータベース(データの更新元)に書き込まれたデータが、レプリカであるスレーブデータベース(データの複製先)に反映されるまでの時間差を指す。一般的に「レプリケーションラグ」と呼ばれる。このLAGは、マスターとスレーブ間のデータ一貫性を脅かす可能性があり、非常に重要な指標である。レプリケーションラグが発生する原因は複数存在する。まず、マスター側での更新頻度が非常に高い場合、スレーブ側がその更新に追いつくのが難しくなる。マスターが大量のトランザクションを処理する一方で、スレーブの処理能力が相対的に低いと、更新ログの適用が遅延する。ネットワーク遅延も原因の一つである。マスターからスレーブへ更新ログを転送する際のネットワークボトルネックや帯域幅の不足が、ログ転送を遅らせ、結果としてレプリケーションラグを増加させる。また、スレーブデータベース自体の処理能力不足も主要な原因である。スレーブがマスターと同じ、あるいはそれ以上のI/O性能やCPU性能を持っていない場合、更新ログをディスクに書き込み、トランザクションを適用する処理がボトルネックとなる。レプリケーションラグが大きくなると、リードレプリカとして利用されているスレーブデータベースから古いデータが読み込まれる可能性が生じ、アプリケーションのデータ一貫性に関わる問題を引き起こす。

これらのLAGを特定し解決するためには、PingやTracerouteを用いたネットワーク経路の分析、システムパフォーマンスモニタリングツールを用いたCPU使用率、メモリ使用率、ディスクI/Oの監視、データベース監視ツールによるレプリケーション状態の確認などが重要となる。対策としては、ネットワーク帯域幅の増強やQoS設定、ハードウェアのアップグレード、ソフトウェアの最適化、データベースクエリのチューニングなどが挙げられる。

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