【ITニュース解説】Catch ‘Em All: Hunting Accessibility Bugs Like a Champion with Manual Testing
2025年09月05日に「Dev.to」が公開したITニュース「Catch ‘Em All: Hunting Accessibility Bugs Like a Champion with Manual Testing」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
Webアクセシビリティ向上のためには手動テストが重要だ。Tabキーでのキーボード操作でフォーカス移動や操作性を確認し、スクリーンリーダーで構造や代替テキストの読み上げを試す。これらのテストで、多くの利用者が直面する問題を早期に発見できる。(118文字)
ITニュース解説
ウェブサイトやアプリケーションを開発する際、誰もが利用できるようにすることは非常に重要であり、これを「アクセシビリティ」と呼ぶ。特に、障害を持つ人々が情報にアクセスし、サービスを利用できるようなウェブサイトやアプリケーションを作ることは、システムエンジニアとして不可欠な責任である。アクセシビリティを確保するためには、自動テストだけでは見つけられない多くの問題が存在し、それらを発見するためには「手動テスト」が非常に有効な手段となる。
手動テストの最初のステップとして、キーボードのみでの操作を検証することが挙げられる。多くの補助技術(アシスティブテクノロジー)は、キーボードからの入力を模倣してウェブページを操作する。そのため、マウスを使わずにキーボードだけでウェブページ上のすべての要素を操作できるかどうかを確認することは、アクセシビリティテストの基本中の基本である。特に「タブキー」は、ウェブページ上のボタン、リンク、入力フィールドなどの操作可能な要素間を移動するために頻繁に使用される。このタブキーを使ったナビゲーションを丹念に検証することで、ウェブサイトの主要な部分におけるアクセシビリティを大きく向上させられる。
タブキーによるテストでは、いくつかの重要な点に注目する必要がある。まず、タブキーを押したときに、どの要素にフォーカスが当たっているのかが視覚的に明確に示されているかを確認する。フォーカスが見えにくいと、ユーザーは自分が今どこを操作しているのか分からなくなり、ウェブサイトの利用が困難になる。次に、フォーカスの移動順序がウェブサイトの論理的な構造、つまりユーザーが自然に情報を追いかける順序に沿っているかを検証する。例えば、ページのヘッダーからメインコンテンツ、そしてフッターへと流れるように移動するべきである。さらに、フォーカスが当たった要素に対して、エンターキーやスペースキーなどの適切なキー操作で、期待通りの動作(ボタンがクリックされる、リンク先に移動するなど)が行えるかどうかも重要な確認項目となる。また、手足の運動に制限がある人が使う「適応スイッチ」のような補助技術も、キーボード入力をシミュレートして動作するため、キーボードナビゲーションの正確な実装は、これらの技術を使うユーザーにとっても不可欠である。このように、タブキーは単純な操作に見えるが、その動作が適切であるかどうかの確認は、アクセシビリティテストにおいて非常に広範な影響を持つ。
次に重要なのは「スクリーンリーダー」を用いたテストである。スクリーンリーダーは、視覚障害を持つ人々がコンピュータの画面上の情報にアクセスするために使用するソフトウェアで、画面上のテキストや画像の内容を音声で読み上げたり、点字で表示したりする。一般的に音声での読み上げがよく知られているが、「点字ディスプレイ」もスクリーンリーダーの一種と見なされる。これは、画面に表示されているテキスト情報を点字コードに変換し、物理的な点字として表示することで、ユーザーが指で触って読み取れるようにする装置である。音声での情報取得が難しい環境や、点字での読解を好むユーザーにとって、点字ディスプレイは不可欠なアクセシビリティツールとなる。
様々なスクリーンリーダーが存在し、それらを異なるウェブブラウザと組み合わせて使用すると、同じウェブサイトでも読み上げられる情報やその表現方法が異なる場合がある。これは、スクリーンリーダーとブラウザが情報を解釈し、ユーザーに提示する方法に違いがあるためである。そのため、多様なユーザー環境に対応するためには、複数のスクリーンリーダーとブラウザの組み合わせでテストを行うことが望ましい。どのような環境でもウェブサイトの情報が正確に伝わるようにするためには、ウェブサイトの基本的な構造や内容が適切にマークアップされていることが非常に重要となる。具体的には、ページの主要な領域を示す「ランドマーク」が正しく設定されているか、コンテンツの階層構造を示す「見出し(h1, h2など)」が論理的に使われているか、そして画像にはその内容を説明する「代替テキスト(alt属性)」が適切に記述されているか、といった点である。これらの基本的なマークアップが正しく行われていれば、あらゆるスクリーンリーダーがウェブサイトの情報をより正確にユーザーに伝えることができる。
どのスクリーンリーダーとブラウザの組み合わせでテストすべきか迷った際には、WebAIM(ウェブアクセシビリティ向上を目的とした組織)が毎年実施している「スクリーンリーダーユーザー調査」の結果を参考にすると良い。この調査は、世界中のスクリーンリーダーユーザーが最も多く利用しているソフトウェアやブラウザの組み合わせを明らかにしており、一般的なユーザーがどのようにウェブを利用しているかを理解するのに役立つ。しかし、この調査結果だけを鵜呑みにすることは避けるべきである。アクセシビリティに対する意識が低いユーザーや、デジタルリテラシーが不十分で調査に参加しないユーザーも多数存在するからだ。特に、生活の必要性から初めてスクリーンリーダーを使い始めたばかりのユーザーは、最新のウェブアクセシビリティの動向や調査結果にまで目を通しているとは限らない。そのため、より広範なユーザー層に配慮するためには、Androidスマートフォンの「TalkBack」のような、OSに標準で組み込まれているアクセシビリティツールなど、多様な環境でのテストも積極的に行うことが推奨される。
これらの手動テスト手法を組み合わせることで、自動テストでは検出が難しい、人間の感覚や操作によってのみ発見できる多くのアクセシビリティ上の問題を見つけ出し、修正することが可能となる。開発するウェブサイトやアプリケーションが、より多くの人々にとって使いやすく、アクセスしやすいものとなるよう、このような包括的なアクセシビリティテストを実践していくことが、システムエンジニアにとって非常に重要である。