【ITニュース解説】I want to migrate delphi project to c#. Which tool you have used to get the maximum migration done without manual efforts. Please share your experience with the best tool available. I have checked some tool online like GapVelocity, Delphi Parser, Ispirer.

古いプログラミング言語で開発された業務システムを、現代の技術を使って新しいシステムに生まれ変わらせる「マイグレーション（移行）」は、多くの企業にとって重要な課題となっている。今回は、かつてWindowsアプリケーション開発で広く使われた「Delphi」という言語で書かれたプロジェクトを、現代の主流言語の一つである「C#」へ移行する際のツール選びに関する議論を掘り下げて解説する。これは、システムの老朽化、いわゆる「レガシーシステム」問題に直面した際に、エンジニアがどのように課題解決に取り組むかを示す典型的な事例である。

まず、なぜDelphiからC#への移行が必要とされるのか、その背景を理解する必要がある。Delphiは、Object Pascalという言語をベースにした統合開発環境であり、特に1990年代から2000年代にかけて、Windows向けのデスクトップアプリケーションを迅速に開発できるRAD（Rapid Application Development）ツールとして絶大な人気を誇った。画面部品をドラッグアンドドロップで配置し、直感的にユーザーインターフェースを構築できる点が大きな特徴だった。しかし、時代が移り変わり、Webアプリケーションやクラウドサービスが主流となる中で、Delphiを扱えるエンジニアは減少し、新しい技術トレンドへの追随も難しくなってきた。一方、C#はMicrosoftが開発した言語で、強力な.NETプラットフォームを基盤に持つ。Web、デスクトップ、モバイル、クラウド、AI開発まで幅広い用途で利用でき、巨大な開発者コミュニティと豊富なライブラリが存在する。そのため、企業が将来にわたってシステムを安定的に維持・発展させていくためには、古くなったDelphiの資産を、より将来性のあるC#へ移行させるという経営判断が下されるのである。

しかし、この言語間の移行は、単にソースコードを書き換えるだけの単純な作業ではない。DelphiとC#は、言語の文法だけでなく、アプリケーションを構築するための根本的な仕組みや設計思想が大きく異なるため、いくつもの高い壁が立ちはだかる。最大の難関は、ユーザーインターフェース（UI）を構築するフレームワークの違いである。DelphiはVCL（Visual Component Library）という独自のコンポーネントライブラリを用いて画面を構築する。これに対し、C#ではWindows FormsやWPF（Windows Presentation Foundation）といったフレームワークが使われる。両者の画面部品の構造やイベント処理の仕組みは全く互換性がないため、ツールの力だけで自動的に変換することは極めて困難であり、実質的には画面設計から手作業で再構築する必要がある。また、Delphiのプロジェクトでは、特定の機能を実現するためにサードパーティ製のコンポーネント（ライブラリ）が多用されていることが多い。移行先のC#環境に、それと全く同じ機能を持つライブラリが存在するとは限らず、代替となるライブラリを探したり、場合によってはその機能を自前で開発し直したりする必要が生じる。さらに、古いDelphiのコードでは、画面上のボタンがクリックされた際の処理の中に、画面制御のロジックと業務上の計算処理（ビジネスロジック）が混在して記述されているケースが少なくない。現代的なシステム設計では、こうした異なる役割のコードは分離して管理することが推奨されるため、移行を機に、絡み合ったコードを解きほぐし、整理・再設計する作業も求められる。

こうした複雑で膨大な作業を少しでも効率化するために、GapVelocity、Delphi Parser、Ispirerといった自動変換ツールが利用される。これらのツールの主な役割は、DelphiのObject Pascalの文法で書かれたコードを、C#の文法に機械的に変換することにある。例えば、変数の宣言、繰り返し処理（forループ）、条件分岐（if文）といった、言語の基本的な構造を自動で置き換えることで、エンジニアが手作業で行う単純な書き換え作業の工数を大幅に削減できる。また、移行プロジェクトの初期段階でツールを使い、システム全体がどの程度の規模で変換されるかを見積もることで、プロジェクトの計画立案にも役立つ。しかし、これらのツールは決して万能ではないという点を理解しておくことが極めて重要である。前述したUIフレームワークやサードパーティ製ライブラリなど、言語の文法を超えた「仕組み」の違いまでは解釈できず、正しく変換することはできない。ツールが出力したC#コードは、あくまで移行作業の「たたき台」に過ぎない。そのままではコンパイルエラーになったり、動いたとしてもC#の標準的な書き方から外れた不自然なコードになったりすることが多い。したがって、自動変換ツールを過信せず、その出力結果をエンジニアが一つ一つ丁寧にレビューし、手作業で修正・改善していくプロセスが不可欠となる。最終的なシステムの品質は、ツールではなく、エンジニアの知識と技術力に委ねられるのである。

DelphiからC#へのマイグレーションのようなプロジェクトは、システムエンジニアを目指す初心者にとって、多くの学びの機会を提供してくれる。それは単に新しいプログラミング言語を習得するだけでなく、古いシステムの設計思想や、そのシステムが支えてきた業務内容そのものを深く理解するプロセスでもあるからだ。自動変換ツールという便利な道具を使いこなしつつも、その限界を認識し、自らの手でより良い設計のシステムを再構築していく。この経験は、技術的な課題解決能力はもちろん、既存の資産を未来へとつなぐという、エンジニアの重要な役割を体感する貴重な機会となるだろう。