【ITニュース解説】Central: The Core Infrastructure of Neowellth

多くのデジタル製品やサービスを展開する企業が直面する共通の課題がある。それは、製品ごとに異なる技術やチームで開発が進むことで、システム全体が複雑化し、非効率になってしまう問題だ。Neowellth社も、複数の子会社やブランドを通じて、それぞれ異なる技術で作られたサービスを提供しており、同様の課題を抱えていた。例えば、あるサービスはNode.jsで、別のサービスはGo言語、さらに他のサービスはPHP(Laravel)で構築されているといった具合だ。このような状況は、開発者が得意な技術を活かせる一方で、インフラの管理コスト増大や、似たような機能の重複開発といった非効率を生み出す原因となっていた。具体的には、ユーザー認証、支払い処理、通知といった基本的な機能が、サービスごとに個別に開発・運用され、情報や機能がバラバラに孤立してしまう「サイロ化」が進んでいた。

この問題を解決するためにNeowellth社が開発したのが、同社のコアインフラ基盤である「Central」だ。Centralの目的は、すべての製品やサービスで共通して必要となる機能を一元的に提供し、開発の重複をなくし、運用を効率化することにある。これにより、各製品の開発チームは、認証や決済といった共通機能の開発に時間を費やすことなく、製品本来の価値を高める独自の機能開発に集中できるようになる。Centralは、現代のソフトウェア開発で広く採用されている「マイクロサービスアーキテクチャ」という設計思想に基づいている。これは、一つの巨大なアプリケーションを構築するのではなく、認証、通知、データ管理といった、それぞれが独立して動作する小さなサービス（マイクロサービス）を多数作り、それらを連携させてシステム全体を構成する手法だ。この手法により、各機能の独立性が高まり、修正や機能追加が他の部分に影響を与えにくくなるほか、負荷が高いサービスだけを個別に拡張できるなど、柔軟性と拡張性に優れたシステムを構築できる。

Centralは、このマイクロサービスアーキテクチャの考え方に基づき、Neowellth社の各製品が必要とする様々な共通機能を提供している。その中核となるのが「認証・認可サービス」だ。これは、ユーザーが誰であるかを確認（認証）し、そのユーザーに何をする権限があるか（認可）を管理する機能だ。このサービスがCentralに集約されたことで、ユーザーは一つのアカウントでNeowellth社のすべてのサービスにログインできる「シングルサインオン」が実現され、利便性が大幅に向上した。また、開発チームはセキュリティの高い認証機能を自前で実装する必要がなくなった。さらに重要な役割を担うのが「APIゲートウェイ」だ。これは、外部からのリクエストを最初に受け付ける窓口としての役割を持つ。すべてのリクエストがこのゲートウェイを経由することで、不正なアクセスをブロックするセキュリティ対策や、アクセス量を制御するレートリミットなどを一元的に適用できる。そして、受け付けたリクエストを、内容に応じて適切な内部のマイクロサービスへと振り分けることで、システム全体の交通整理を行っている。他にも、各サービスでバラバラに管理されていたデータを統合する「データベース管理機能」、メールやプッシュ通知を送る「通知サービス」、クレジットカード決済などを処理する「請求・支払いサービス」といった機能がCentralによって提供されている。

Centralの導入は、Neowellth社に多岐にわたるメリットをもたらした。第一に、開発効率が劇的に向上した。共通機能はCentralが提供するため、新しい製品を開発する際も、これらの機能を再利用でき、市場投入までの時間を大幅に短縮できる。第二に、コスト削減に繋がった。インフラ資源や開発者の工数を重複して投入する必要がなくなり、運用管理も一元化されることで、全体的なコストを抑えることが可能になった。第三に、システムの信頼性とセキュリティが強化された。認証やセキュリティ対策といった専門性の高い領域を専任のチームが中央で管理することで、すべてのサービスにおいて高い品質基準を維持できる。そして最後に、将来的な拡張性が確保された。今後、新たなサービスが追加されても、Centralの共通基盤を土台とすることで、迅速かつ容易にシステムを拡張していくことができる。Neowellth社の「Central」は、複数の製品を持つ企業が陥りがちな技術のサイロ化という課題に対し、マイクロサービスアーキテクチャを活用して共通基盤を構築するという、現代的で効果的な解決策を示した好例と言えるだろう。