【ITニュース解説】Cloudflare Blocks Record-Breaking 11.5 Tbps DDoS Attack

2025年09月03日に「The Hacker News」が公開したITニュース「Cloudflare Blocks Record-Breaking 11.5 Tbps DDoS Attack」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Cloudflareが、過去最大規模のDDoS攻撃を自動で阻止した。攻撃は最大11.5Tbpsに達し、同社はここ数週間で同様の超大規模DDoS攻撃を数百件自律的にブロックしている。

ITニュース解説

Cloudflareが過去最大の分散型サービス拒否(DDoS)攻撃を自動的に軽減したというニュースは、現代のインターネットセキュリティにおける脅威の深刻さと、それを守る技術の進化を示している。この攻撃はピーク時で11.5テラビット/秒(Tbps)という途方もない規模に達し、さらに5.1Bpps(billion packets per second)ものパケットが押し寄せたという。

まず、DDoS攻撃とは何かを理解する必要がある。DDoSとは「Distributed Denial of Service」の略で、複数の異なる場所にある多数のコンピュータから、特定のウェブサイトやオンラインサービスに対して、一斉に大量のデータやリクエストを送りつける行為だ。これらの攻撃元となるコンピュータは、しばしば「ボットネット」と呼ばれる、マルウェアに感染して不正に乗っ取られたコンピュータのネットワークで構成される。攻撃の目的は、対象のサーバやネットワークリソースを過負荷状態に陥らせ、正規のユーザーがサービスを利用できないようにすること、つまりサービスを「拒否」することにある。単一のコンピュータから行われるDoS攻撃と比較して、DDoS攻撃は攻撃元が分散しているため、防御がはるかに困難になる。攻撃元を特定しづらく、また単一の防御壁で全てのトラフィックを遮断することが難しいからだ。

今回のニュースで特に注目すべきは、その攻撃規模である。11.5Tbpsという数字は、単に大きいというだけでなく、一般の想像を絶するレベルのデータ量を示している。Tbpsの「T(テラ)」は1兆を意味し、1テラビットは1000ギガビット、100万メガビットに相当する。例えば、一般的な家庭の光回線が数百Mbps(メガビット/秒)から数Gbps(ギガビット/秒)であることを考えると、11.5Tbpsがいかに膨大なデータ量であるかが分かるだろう。これは、文字通りインターネットの主要幹線が束になって同時に押し寄せるような異常な状態だ。 さらに、5.1Bppsという数字も重要である。これは「billion packets per second」、つまり1秒あたり51億個のパケットが送られてきたことを意味する。インターネット上のデータは、小さな「パケット」という単位に分割されて送受信される。このパケットの数が膨大であるということは、攻撃者が単純なデータ量だけでなく、サーバの処理能力やネットワーク機器のリソースを消耗させることを狙った、より高度な攻撃も仕掛けている可能性を示唆している。これほどのパケット数を処理しようとすると、通常のサーバやネットワーク機器はすぐにパンクし、サービス提供が困難になる。

このような記録的な攻撃からウェブインフラとサービスを守ったのがCloudflareである。Cloudflareは、世界中に分散配置されたデータセンターとサーバのネットワークを持ち、Webサイトの高速化、信頼性向上、そしてセキュリティ対策を提供する企業だ。彼らの主な役割の一つは、DDoS攻撃を含む様々なサイバー攻撃から顧客のウェブサイトやアプリケーションを保護することである。 CloudflareのDDoS防御の仕組みは、まず顧客のWebサイトへのトラフィックをCloudflareのネットワークを経由させることから始まる。これにより、CloudflareはWebサイトに到達する前の段階で、すべての通信を監視・分析できる。大量のデータが押し寄せた際、Cloudflareのシステムは、そのトラフィックが正規のユーザーからのものか、それともDDoS攻撃の一部であるかを自動的に判断する。今回のニュースにある「自動的に軽減した」という表現は、このプロセスが人間による介入なしに、高度なアルゴリズムと機械学習によって瞬時に行われたことを意味する。攻撃が非常に高速かつ大規模であるため、手動での対応では間に合わないからだ。 Cloudflareのシステムは、異常な量のトラフィックパターンや、既知の攻撃シグネチャ(特徴)を検知すると、それをWebサイトに到達させる前にブロックしたり、別の経路に迂回させたり、あるいはクリーンなトラフィックだけを選別してWebサイトに届けたりする。世界中に分散されたネットワークを利用することで、攻撃トラフィックを複数の拠点に分散させ、一つの拠点に負荷が集中するのを防ぐ「スクラビング」と呼ばれる手法も用いる。これにより、たとえ記録的なDDoS攻撃が仕掛けられても、顧客のサービスがダウンすることなく稼働し続けることを可能にする。

近年、DDoS攻撃は増加の一途を辿っている。IoTデバイスの普及により、多くのセキュリティが脆弱なデバイスがインターネットに接続され、これらがボットネットとして悪用されやすくなった。また、DDoS攻撃を容易に行えるツールやサービスが闇市場で提供されるようになり、専門知識を持たない攻撃者でも大規模な攻撃を仕掛けることが可能になった背景がある。企業や組織にとってDDoS攻撃は、サービス停止によるビジネス機会の損失、顧客からの信頼失墜、復旧コストの発生など、多大な損害をもたらす深刻な脅威である。 このような状況において、Cloudflareのような専門的なセキュリティサービスが果たす役割は極めて大きい。彼らの技術は、インターネットの安定稼働を支え、サイバー空間における安全な活動を保証するための重要なインフラとなっている。今回の記録的な攻撃の自動軽減は、サイバーセキュリティの最前線で働く技術者たちの不断の努力と、高度な自動化技術が現代の脅威に対抗するためにいかに不可欠であるかを改めて示す出来事と言えるだろう。システムエンジニアを目指す者にとって、このようなセキュリティの基礎知識と、大規模な攻撃からシステムを守る技術の重要性を理解することは、これからのキャリアを築く上で欠かせない要素となるはずだ。