シグネチャ (シグネチャ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

作成日: 更新日:

シグネチャ (シグネチャ) の読み方

日本語表記

シグネチャ (シグネチャ)

英語表記

signature (シグネチャー)

シグネチャ (シグネチャ) の意味や用語解説

シグネチャとは、情報技術の分野において、特定の対象を識別・認証するための特徴的なパターンや署名を指す言葉である。この概念は多岐にわたる文脈で用いられるが、特にセキュリティ対策の分野と、電子データの信頼性を保証するデジタル署名の分野で重要な役割を果たす。ITシステムが日々遭遇する様々な脅威やデータの信頼性に関わる課題に対し、シグネチャは具体的な解決策の一つとして広く活用されている。 詳細に入ると、まずセキュリティ分野でのシグネチャの使われ方について解説する。最も身近な例は、ウイルス対策ソフトウェアにおけるシグネチャである。ウイルス対策ソフトウェアは、既知のコンピュータウイルスやマルウェアのコードの中から、そのウイルス特有のバイト列や命令の並びといった固有の特徴を抽出・登録し、これを「ウイルスシグネチャ」または「ウイルス定義」と呼ぶ。このシグネチャは、ウイルス対策ソフトウェアに組み込まれた「定義ファイル」に格納されており、ユーザーのコンピュータをスキャンする際に、ファイルの内容が定義ファイル内のシグネチャと一致するかどうかを比較照合する。もし一致するパターンが見つかれば、それは既知のウイルスであると判断され、隔離、削除、あるいは警告といった措置が取られる。この仕組みにより、多くの既知の脅威からシステムを保護することが可能となる。しかし、新たなウイルスが日々登場するため、ウイルスシグネチャは常に最新の状態に保つ必要があり、定義ファイルの定期的な更新が不可欠である。シグネチャマッチングは既知の脅威に対しては高い検出率を誇るが、まだシグネチャが作成されていない新種のウイルスや、巧妙にコードを変化させるタイプのウイルス(ポリモーフィック型ウイルス)に対しては検出が難しいという限界も持つ。そのため、近年ではファイルの振る舞いを監視して異常を検知する「振る舞い検知」といった技術と組み合わせて、防御力を高めるアプローチが主流となっている。 次に、ネットワークセキュリティにおけるシグネチャの利用について触れる。侵入検知システム(IDS: Intrusion Detection System)や侵入防御システム(IPS: Intrusion Prevention System)は、ネットワーク上を流れる通信パケットの内容や、システムログに記録されるイベントを監視し、既知の攻撃パターンや不正アクセスの兆候を検出するためにシグネチャを利用する。例えば、特定のポートへの異常な接続試行、脆弱性を狙った特定の文字列が含まれるリクエスト、または既知のマルウェアが通信に利用するプロトコルパターンなどがシグネチャとして登録される。IDSはシグネチャに一致する活動を検知すると管理者へ警告を発し、IPSはさらにその通信を自動的に遮断するといった防御行動を実行する。Webアプリケーションファイアウォール(WAF)も同様に、SQLインジェクションやクロスサイトスクリプティングといったWebアプリケーションに対する既知の攻撃パターンをシグネチャとして持ち、不正なリクエストをブロックする。これらのシステムにおけるシグネチャは、ネットワークとシステムの安全を守る上で不可欠な要素となっている。 セキュリティ分野とは異なるが、データの信頼性を保証する上で重要な「デジタル署名」も、ある意味でシグネチャの一種である。デジタル署名とは、電子データが正規の送信者によって作成され、かつ途中で改ざんされていないことを証明する技術である。これは公開鍵暗号方式を基盤としており、送信者が秘密鍵を用いてメッセージのハッシュ値(データから一方向で生成される固定長の要約値)を暗号化することで署名を作成する。この暗号化されたハッシュ値が「シグネチャ」と呼ばれる。受信者は、送信者の公開鍵を用いてこのシグネチャを復号し、同時に受信したメッセージから自身でハッシュ値を計算する。両方のハッシュ値が一致すれば、メッセージは改ざんされておらず、秘密鍵を持つ正規の送信者から送られてきたものであると確認できる。デジタル署名は、電子メールの認証、ソフトウェアのダウンロード時のファイル改ざん検知、電子契約の信頼性確保など、多岐にわたる場面でデータの完全性と送信者の真正性を保証するために利用されている。 最後に、プログラミングの文脈でも「関数シグネチャ」という言葉が使われることがある。これは、関数の名前、引数の型と数、そして戻り値の型をまとめたもので、その関数のインターフェース(外部から利用するための形式)を定義する。これはセキュリティや認証におけるシグネチャとは直接的な関係はないが、特定の関数を識別するための特徴的なパターンという点で共通の概念を持つと言える。 このように、シグネチャはIT分野において、脅威の識別、データの信頼性保証、そしてプログラムの構造定義といった様々な目的で、特定の対象を特徴づけるパターンとして機能する、極めて広範で重要な概念である。

シグネチャ (シグネチャ) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説