【ITニュース解説】Cost of AI
2025年09月11日に「Dev.to」が公開したITニュース「Cost of AI」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
AIをシステムに組み込むと、一度作れば安価だった従来と異なり、利用ごとに費用が発生し、運用コストが増大する。AIが不可欠でない場合、規模が大きくなると採算が合わなくなるリスクがあるため、導入の際はその価値を慎重に判断する必要がある。
ITニュース解説
現代社会ではAI(人工知能)技術の進化が目覚ましく、あらゆる分野でAIの活用が期待されている。しかし、AIをビジネスに導入する際には、その「コスト」について深く考える必要がある。AIは確かに便利なツールだが、導入の仕方によっては、企業が健全な利益を上げることが難しくなる可能性を秘めている。
ビジネスにおいて、一つの製品やサービスを提供するのにかかる費用と、そこから得られる収益のバランスは非常に重要だ。特に「ユニットエコノミクス」という考え方は、顧客一人あたり、あるいはサービス一回あたりの経済性を指し、ビジネスの持続可能性を評価する上で欠かせない。現在の「AIがどこにでもある」という状況において、これまで堅実な利益を上げてきた企業が、AIを導入することで、クリックごとに費用が発生するような仕組みに移行することの是非が問われている。
従来のソフトウェア開発がどのようにビジネスに貢献してきたかを見てみよう。もし顧客があることをしたいと考えたとき、その対応を人間が行う場合、企業は担当者の人件費を継続的に支払う必要がある。例えば、顧客からの問い合わせにオペレーターが対応するケースだ。しかし、ここでソフトウェアが活用されると、状況は大きく変わる。顧客がしたいことをソフトウェアが代わりに実行し、顧客自身がソフトウェアを使って問題を解決できるようになる。例えば、顧客がウェブサイトのFAQページやチャットボット(AIではないもの)を利用して自己解決するような場合だ。この変化によって、企業が直接支払う人件費のコストは大幅に削減され、ソフトウェア開発にかかる初期費用は発生するものの、一度作ってしまえば、顧客の利用が増えても追加の人件費はほとんどかからない。つまり、コストの重心が、人件費からソフトウェアを利用したシステムへと移ることで、企業はより効率的な運営が可能になるわけだ。
しかし、AIを導入すると、このコスト構造が再び変化する可能性がある。顧客が何かをしたいと考え、ソフトウェアを利用する際、そのソフトウェアがさらに外部のAIサービスを呼び出し、AIが応答するという流れになる。この場合、企業は顧客がAIサービスを利用するたびに、その利用料を支払わなければならないケースが多くなる。これは、提供するサービスや製品の「売上原価」(COGS: Cost of Goods Sold)が上昇することを意味する。
従来の、AIを利用しないソフトウェアの場合、一度システムを構築してしまえば、開発にかかる費用は発生するものの、その後の利用回数が増えても、サーバーの維持費などを除けば、ほとんど追加の費用はかからない。これは計算量の概念で言えば「O(1)」(定数時間)に近い状態と考えることができる。利用者が何人であろうと、システム構築にかかる費用やその運用コストは大きく変わらないというイメージだ。
一方、AIを導入した場合、顧客がAIサービスを呼び出すたびに、そのAPI(Application Programming Interface)の利用料が発生する。これは「O(n)」(線形時間)に近い状態と考えることができる。つまり、利用回数が増えれば増えるほど、それに比例してコストも増加していくということだ。さらに厄介なことに、ユーザーは必ずしもAIを最適な方法で使うとは限らない。例えば、同じ質問を何度も繰り返したり、AIの能力を過度に期待して不必要な問い合わせをしたりする可能性がある。このような非効率な利用が増えれば増えるほど、企業が支払うAIの利用料も膨らみ、コストはさらに悪化することになる。
このようなコスト問題を回避するための代替策も存在する。それは、外部のAIサービスに依存するのではなく、企業が自社でAIを構築し、それを外部にはサービス事業として提供するという方法だ。自社でAIを開発・運用することで、内部の作業を自動化し、継続的にAIモデルの改善を繰り返すことができる。これにより、売上原価(COGS)を長期的に削減し、コスト構造を自社でコントロールすることが可能になる。外部に依存しないことで、利用回数に比例してコストが青天井で増えるリスクを低減できるのだ。
結局のところ、AIを導入する上で最も重要なポイントは、そのAIが本当に必要不可欠なものなのか、そしてユーザーに対して圧倒的な価値(非対称な価値)を提供できるのかどうかを見極めることである。もしAIがサービスの中心的な機能ではなかったり、提供する価値がコストに見合わない程度であったりする場合、企業はこれまで「一度開発すれば利用コストは低い」というモデルから、「利用ごとにコストが発生する」というモデルへと移行することになる。そして、このようなコスト構造は、ビジネスの規模が大きくなればなるほど、維持が困難になり、最終的には破綻する可能性がある。
もし実際にAIを導入することで、企業の利益率が劇的に向上した成功事例があるならば、そのビジネスモデルの詳細をぜひ公開してほしいというメッセージだ。具体的には、AIに関連する売上原価(AI COGS)、ユーザー一人あたりの平均収益(ARPU: Average Revenue Per User)、そしてその成功を可能にした要因が何だったのかを知りたいと考えている。AIの導入は、単なる技術的な流行に流されるのではなく、コストと価値を綿密に分析した上で、慎重に判断する必要があるのだ。