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【ITニュース解説】CPU Utilization is Wrong (2017)

2025年09月08日に「Hacker News」が公開したITニュース「CPU Utilization is Wrong (2017)」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

システム負荷を示すCPU使用率は、見かけの数値だけでは実態を正確に表さない場合がある。CPUが処理待ちでアイドル状態でも、使用率が低く見えても実際は高負荷な場合があるためだ。複数の指標で総合的に判断する必要がある。

出典: CPU Utilization is Wrong (2017) | Hacker News公開日:

ITニュース解説

システム運用や性能監視において、中央演算処理装置(CPU)の使用率は、システムがどれくらい忙しいかを示す最も基本的な指標の一つとして広く利用されている。しかし「CPU使用率は間違っている」という指摘は、この数字を単独で見てシステムの状況を判断することの危険性に対する重要な警告である。システムエンジニアを目指す初心者にとって、この概念を深く理解することは、将来システムの問題を正確に特定し、性能を改善していく上で不可欠な知識となる。

CPU使用率とは、CPUが一定の期間内に、何らかの処理のために活動していた時間の割合を示す。例えば、CPU使用率が70%であれば、CPUは測定期間の70%の時間を使ってタスクを実行し、残りの30%は何もしていない「アイドル」状態であったことを意味する。多くの人は、この数字が高いとCPUが忙しすぎて処理能力が不足していると考え、低いと問題ないと判断しがちだ。しかし、この単純な解釈が常に正しいとは限らない。

CPU使用率が「間違っている」と言われる主な理由は、その数字がシステムのパフォーマンスボトルネックや問題の本質を必ずしも直接的に示さない点にある。システムの性能は、CPUだけでなく、メモリ、ディスク入出力(I/O)、ネットワークI/O、そして実行されているアプリケーションの設計など、多くの要素が複雑に絡み合って決まる。CPU使用率だけを見て対策を講じると、誤った原因に時間やリソースを費やしてしまう可能性がある。

CPU使用率を正しく理解するためには、CPUがどのような種類の処理に時間を使っているか、すなわちCPUの「ステート」を把握することが重要である。多くの性能監視ツールは、CPU使用率をいくつかのカテゴリに分類して表示する。主なステートには、ユーザー(User)、システム(System)、I/O待機(I/O Wait)、アイドル(Idle)、スティール(Steal)などがある。

「ユーザー」ステートは、アプリケーションやユーザープログラムがCPUを使用している時間を示す。これは、実際にシステムがビジネスロジックを実行している時間と見なせるため、通常は高いほど望ましい。 「システム」ステートは、オペレーティングシステム(OS)のカーネルが、システムコール処理やデバイスドライバの実行、スケジューリングなどの内部処理にCPUを使っている時間を示す。この値が高い場合、OSレベルでのオーバーヘッドが大きい可能性があり、アプリケーションが効率的にCPUを使えていない可能性がある。

特に注意すべきは「I/O待機」ステートである。これは、CPUがディスクやネットワークなどの入出力処理の完了を待っている時間を示す。このときCPU自体は次の処理を実行できず、実質的にはアイドル状態に近い。もしI/O待機が高い場合、CPU使用率の合計が高く見えても、実際にCPUが計算処理を行っているわけではない。この状況では、ボトルネックはCPUではなく、ストレージやネットワークにある可能性が非常に高い。システムはI/O待ちで処理が滞っており、たとえCPU使用率が低くても応答性が著しく悪化することがあるため、I/O待機はシステムパフォーマンスを評価する上で極めて重要な指標となる。

「アイドル」ステートは、CPUが文字通り何の処理も実行していない自由な時間だ。この時間が多ければ、CPUにはまだ余力があることを意味する。 仮想化環境では「スティール」ステートも考慮する必要がある。これは、仮想マシンがCPUを使おうとしているにもかかわらず、ホストOSによって物理CPUリソースを他の仮想マシンに割り当てられ、CPUリソースを「奪われている」時間を示す。スティールが高い場合、ホストのCPUリソースが競合している状態であり、仮想マシンのパフォーマンスがホスト側の問題によって低下していることを意味する。

このように、CPU使用率の合計値だけを見て「CPUが忙しい」と判断しても、その忙しさの原因が「アプリケーションの処理」なのか、「I/O待ち」なのか、「OSのオーバーヘッド」なのか、「仮想化環境でのリソース競合」なのかによって、取るべき対策は全く異なる。単にCPUを増強するだけでは解決しないどころか、無駄な投資となる場合もある。

さらに、CPU使用率を補完する重要な指標として「ロードアベレージ」がある。ロードアベレージは、一定期間(通常は1分、5分、15分)にわたって、システム上で実行可能状態にあるプロセス、つまりCPUを待っているプロセスの平均数を表す。CPU使用率が低くてもロードアベレージが高い場合がある。これは、多くのプロセスがI/O処理の完了を待っているなど、CPU以外のリソースを待機しているためCPUが使われていないが、待機が解消されればすぐにCPUを使いたいプロセスが多数存在することを示唆している。この状況では、CPU使用率が低くてもシステムは「詰まっている」状態であり、応答性が悪い可能性が高い。

現代のシステムでは、ほとんどがマルチコアCPUを採用しているため、CPU使用率の解釈はさらに複雑になる。システム全体のCPU使用率が50%だとしても、それが4コアCPUの各コアが平均的に50%使われているのか、それとも1つのコアが100%使い切られていて他の3つのコアがほぼアイドル状態なのかでは、意味が全く異なる。もし特定のコアだけが常に100%になっている場合、そのコアに依存する単一スレッドのアプリケーションがボトルネックになっている可能性が高い。したがって、個々のCPUコアの使用率も確認することが重要である。

最終的に、「CPU使用率は間違っている」という言葉は、CPU使用率という単一の数字を盲目的に信用するのではなく、常に疑いの目を持って、多角的な視点からシステムの状態を分析するべきだという警鐘である。システムエンジニアとしてパフォーマンス問題を診断する際には、CPU使用率だけでなく、メモリ使用量、ディスクI/Oの量とレイテンシ、ネットワークトラフィック、ロードアベレージ、そしてアプリケーションのログや特性などを総合的に考慮し、それらの関連性を理解することが不可欠である。これらの情報を組み合わせて分析することで、初めてシステム全体の健全性や真のボトルネックを正確に特定できるようになる。単に「CPU使用率が高いからCPUを増やす」という安易な結論に飛びつくのではなく、なぜCPU使用率が高いのか、その背景にある根本的な原因を探求することこそが、優れたシステムエンジニアへの第一歩となる。

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