【ITニュース解説】Designing for the AHA Moment with AI
2025年09月11日に「Dev.to」が公開したITニュース「Designing for the AHA Moment with AI」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
製品開発で、ユーザーが製品の価値を理解する「AHAモーメント」を特定し誘導するのは難しい。従来のデータ分析ではユーザーの行動しか分からず、なぜ離脱したか「意図」が見えなかった。しかし、AIは行動だけでなくユーザーの意図を分析し、AHAモーメントへの誘導を支援できる。データだけでなく、ユーザーの意図を理解することが重要だ。
ITニュース解説
AHAモーメントとは、製品やサービスを使い始めたユーザーが、「なるほど、これすごい!」「これだ!」と、その価値や本質を心から理解し、納得する瞬間のことを指す。この瞬間を体験したユーザーは、製品のファンになり、使い続ける可能性が高まるため、製品開発において非常に重要な目標とされる。しかし、このAHAモーメントをデザインすることは、言うほど簡単ではない。多くの開発者が、ユーザーが製品の価値をいつ、どのように「理解」するのかを正確に把握するのに苦労している。
筆者は、かつてウェブサイト構築サービス「Typedream」の開発に携わった経験から、このAHAモーメントの難しさを痛感したと語っている。Typedreamの目標はシンプルに「人々が簡単にウェブサイトを公開できるようにすること」だった。最初は、ユーザーがテンプレートを選び、詳細を入力するだけで、数分後にはライブサイトが完成するという、速度に最適化されたプロセスを構築した。この部分はうまくいき、多くのユーザーが最初のウェブサイト公開には成功した。
しかし、真の課題はその後で顕在化した。ユーザーがウェブサイトを公開した後に、自分好みにカスタマイズしたり、世界に向けて公開したり、独自ドメインを設定したりといった、さらに深くサービスを活用するステップに進むところで、多くのユーザーが離脱してしまったのだ。筆者はこの状況を分析するために、様々な手法を試みた。セッションリプレイという、ユーザーの画面操作を録画したものを確認するツールを使ったが、それはまるで防犯カメラの映像を延々と見ているようなもので、どこでユーザーが迷い、怒り、途中で投げ出したのかの「理由」まではわからなかった。
また、ファネル分析という、ユーザーがある目標を達成するまでのステップを数値で追跡する手法も導入した。これは「どこで」ユーザーが離脱したかを教えてくれたが、やはり「なぜ」離脱したのかまでは教えてくれなかった。たとえば、「70%のユーザーがテンプレートを選んだのに、カスタマイズまで進んだのは20%だった」という事実はわかっても、残りの50%がなぜカスタマイズしなかったのかは不明なままだったのだ。オンボーディング(新規ユーザーがサービスを使い始める際の手順)で「あなたはどのようなユーザーですか?」と質問することで、ユーザー層のデータは得られたが、その情報と実際のユーザー行動を結びつけて、AHAモーメントを特定することは困難だった。
Typedreamが成長し、ブログ作成、ランディングページ構築、デジタル製品販売といった多様な機能を持つオールインワンのダッシュボードになったことで、問題はさらに複雑になった。ユーザーはそれぞれ異なる目的を持ってTypedreamを利用するため、彼らがどの機能で、どのようにAHAモーメントを迎えるのかを明確に把握し、そこへ導く方法を見つけることが非常に難しくなったという。
筆者たちは、こうした課題に対して、当時考えられる最善の策を講じていた。その「プレイブック」には、主に以下の4つの戦術が含まれていた。アナリティクスファネルの利用では、ユーザーがオンボーディングからカスタマイズ、公開、アップグレードに至るまでの各ステップでのイベントを追跡し、具体的な数値データを得た。これにより、どこに問題があるかの「焦点」は絞れた。リリース前のユーザーインタビューでは、主要な機能やフローを大規模に展開する前に、少数のユーザーに実際に使ってもらい、分かりにくい点や混乱するポイントを事前に特定した。たとえば、カスタムドメインの接続手順の分かりにくさなどを改善できた。継続的なユーザーインタビューでは、定期的に実際の顧客に連絡を取り、彼らの経験や意見を聞いた。これらの対話は、コピーライティングの微調整からオンボーディング画面のデザインまで、多くの製品改善の意思決定に影響を与えた。メール通知では、途中で作業を中断してしまったユーザーに対して、「サイトを公開しましょう」「ドメインを接続しましょう」「この機能を試してみましょう」といったリマインダーメールを送ることで、サービスの再利用を促した。
これらの努力にもかかわらず、筆者は常に「何か本質的なものを見落としているのではないか」と感じていたという。離脱したユーザーは単に興味本位で試していただけなのか、それとも真剣な顧客が何らかの障壁にぶつかったのか。製品のどの部分がユーザーをAHAモーメントへと強く引きつけ、どの部分が邪魔になっていたのか。これらの深い疑問には、従来の分析手法では明確な答えを出すことができなかった。ユーザーの具体的な行動データは豊富にあったが、その行動の背後にある「意図」を理解する手段がなかったのだ。この未解決の問いは、Typedreamが買収された後も筆者の心に残り続けた。
しかし、現代の技術、特にAIの進化は、Typedream時代には不可能だった解決策を提供し始めていると筆者は指摘する。現在、Autoplay AIのようなツールは、膨大なセッションリプレイを何時間も見たり、バラバラのファネルデータを繋ぎ合わせようとしたりする代わりに、ユーザーがどこでためらい、どのような目標を持ってどのような経路をたどろうとしているのかを自動的に特定してくれる。
この新しいAIツールの特筆すべき点は、ユーザーが「どこで」離脱したかだけでなく、「なぜ」離脱したのか、という本質的な理由を教えてくれることだ。ユーザーが本当にAHAモーメントに向かっていたのか、それとも最初からTypedreamでは達成できない全く異なる目標を持っていたのか、といった「文脈」を理解できるようになったのだ。これは、Typedream時代に筆者が最も欲していた「意図」を明確に把握する手段に他ならない。
これにより、開発者はもはや推測に頼るのではなく、ユーザーの行動の「全体像」をより正確に把握できるようになったと感じているという。筆者は、このTypedreamでの教訓、つまり「データはどこにでも存在するが、ユーザーの意図こそが最も重要である」という原則を、現在開発中の次のプロジェクト「Sendegg」にも適用している。現代のAI技術は、ユーザーの深い理解を可能にし、より効果的な製品設計への道を開いているのである。