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【ITニュース解説】DVCをSageMakerのトレーニングジョブで利用する方法

2025年09月16日に「Qiita」が公開したITニュース「DVCをSageMakerのトレーニングジョブで利用する方法」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

データバージョン管理ツールDVCと、機械学習のトレーニングサービスAmazon SageMakerを連携させる方法を解説。DVCで管理されたデータセットをSageMakerの学習ジョブで利用する手順や、調査した結果をまとめている。初心者でもDVCとSageMakerを活用するヒントになるだろう。

ITニュース解説

システムエンジニアとして機械学習プロジェクトに関わる際、データの管理は非常に重要な課題となる。特に、モデルの性能を左右するデータセットが頻繁に更新される中で、どのバージョンのデータを使ってどのモデルが生成されたのかを正確に把握し、再現性のある開発を行うことは、プロジェクト成功の鍵を握る。ここで登場するのが、データセットのバージョン管理ツール「DVC (Data Version Control)」と、機械学習のトレーニングを効率化するクラウドプラットフォーム「Amazon SageMaker (以下、SageMaker)」である。これらを連携させることで、機械学習開発の再現性と効率性を飛躍的に向上させることが可能となる。

まず、DVCとは何かについて解説する。ソフトウェア開発においてソースコードの変更履歴を管理するGitは広く普及しているが、大量のデータセットをGitで直接管理しようとすると問題が発生する。Gitは大きなファイルを扱うのが苦手で、リポジトリのサイズが肥大化し、クローンやプッシュに膨大な時間がかかってしまうためだ。DVCは、この課題を解決するために開発されたツールで、Gitと連携しながらデータセットのバージョン管理を行う。DVCの基本的な考え方は、実際のデータファイルそのものをGitリポジトリに含めるのではなく、データファイルへの「ポインタ」となる小さな.dvcファイルだけをGitで管理するというものだ。実際のデータファイルは、Amazon S3のようなオブジェクトストレージサービスやGoogle Cloud Storage、Azure Blob Storageといった外部のストレージに保存される。開発者はGitを通じて.dvcファイルをコミットすることでデータセットの変更を追跡し、必要に応じてdvc pullコマンドを実行すれば、DVCがGitの履歴に基づいて対応するバージョンのデータファイルを外部ストレージからダウンロードしてくる仕組みになっている。これにより、データセットの変更履歴をソースコードと同様に管理でき、過去の任意の時点のデータセットを簡単に再現できるため、モデルのトレーニング結果の再現性保証に不可欠なツールと言える。

次に、Amazon SageMakerについて説明する。SageMakerは、機械学習モデルの開発、トレーニング、デプロイといった一連のプロセスを、AWS (Amazon Web Services) のクラウド上で効率的に実行するためのフルマネージドサービスである。データサイエンティストやエンジニアは、ローカル環境で複雑な環境構築を行うことなく、SageMakerが提供する様々な機能を利用して機械学習モデルを開発できる。特に、本記事で焦点となるのは「トレーニングジョブ」という機能だ。これは、定義されたスクリプトとデータセットを用いて、指定された計算リソース(GPUインスタンスなど)上でモデルをトレーニングするための機能である。トレーニングジョブを実行すると、SageMakerは自動的に必要な環境を構築し、トレーニングを実行し、その結果(学習済みモデルなど)を指定されたS3バケットに保存する。これにより、大規模なデータセットを使ったトレーニングや、計算負荷の高いモデルの学習も、柔軟かつスケーラブルに実行できる。

DVCでバージョン管理されたデータセットをSageMakerのトレーニングジョブで利用しようとする場合、いくつかの課題が生じる。DVCが管理するデータは外部ストレージにあるため、SageMakerのトレーニングジョブが実行される環境(通常は一時的に起動されるコンテナ)から、そのデータに正しくアクセスできるようにする必要がある。また、DVCの設定情報もトレーニング環境に渡す必要がある。

この課題を解決し、DVCとSageMakerを連携させる具体的な方法は以下のようになる。まず、前提として、データセットはDVCを使ってバージョン管理され、実データはS3バケットに保存されているものとする。

  1. DVC設定ファイルの準備: DVCは、どの外部ストレージにデータが保存されているかという情報を、プロジェクト内の.dvc/configファイルで管理している。この設定ファイルを、SageMakerのトレーニングジョブがアクセスできる場所(例えば、S3バケット)に配置するか、トレーニングコンテナを起動する際に提供する必要がある。多くの場合、Gitリポジトリに.dvc/configを含め、それをSageMakerからクローンすることで設定が読み込まれるようにする。
  2. トレーニングスクリプト内でのDVCコマンド実行: SageMakerのトレーニングジョブは、Pythonスクリプトなどのトレーニングコードを実行する。このスクリプト内で、DVCのdvc pullコマンドを実行するように記述する。具体的には、トレーニングジョブが開始された後、必要なデータセットをS3からダウンロードするためにdvc pullが呼ばれる。これにより、SageMakerのトレーニングコンテナが起動し、トレーニングスクリプトが実行される際に、指定されたバージョンのデータセットが自動的にダウンロードされる。
  3. S3バケットへのアクセス権限設定: SageMakerのトレーニングジョブがDVCで管理されているS3バケットからデータをダウンロードするためには、適切なIAM (Identity and Access Management) ロールを設定する必要がある。このIAMロールには、DVCデータが保存されているS3バケットに対する読み取り権限(s3:GetObjectなど)を付与することが不可欠だ。これにより、SageMakerトレーニングジョブはセキュアな方法でDVCの管理するデータにアクセスできるようになる。
  4. 必要な依存関係のインストール: SageMakerのトレーニングコンテナには、デフォルトでDVCがインストールされているとは限らない。したがって、トレーニングスクリプトの実行前に、pip install dvc[s3]などのコマンドを使ってDVCとそのS3連携に必要なライブラリをインストールする必要がある場合がある。SageMakerのフレームワークコンテナによっては、あらかじめDVCがインストールされているものもあるため、事前に確認するか、Dockerfileを用いてカスタムコンテナを作成する方法も検討する。

これらの手順を踏むことで、SageMakerのトレーニングジョブからDVCでバージョン管理されたデータセットにアクセスし、再現性のある形でモデルトレーニングを実行できるようになる。データサイエンティストやエンジニアは、DVCを使ってデータセットの変更をGitで追跡し、SageMakerを使ってスケーラブルな環境でモデルをトレーニングできるため、データの変更がモデル性能に与える影響を追跡しやすくなり、モデルの改善サイクルを効率的に回すことが可能となる。過去のデータセットを使ってモデルを再トレーニングすることも容易になり、実験の再現性が保証されるため、共同開発や長期的なプロジェクトにおいて非常に大きなメリットをもたらす。

このように、DVCとSageMakerの連携は、機械学習開発におけるデータ管理とトレーニング実行の課題を解決し、より堅牢で効率的なワークフローを構築するための強力な組み合わせである。システムエンジニアを目指す上で、このようなデータ管理とクラウド環境の活用技術は、現代の機械学習プロジェクトに必須のスキルと言えるだろう。

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