IAM(アイアム)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
IAM(アイアム)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
読み方
日本語表記
アイアム (アイアム)
英語表記
IAM (アイアム)
用語解説
IAMはIdentity and Access Managementの略称であり、日本語では「ID管理」や「アイデンティティ・アクセス管理」と訳される。その中心的な目的は、組織内の情報資産に対して「誰が」「何に」「どのような操作を」実行できるのかを適切に管理し、制御することにある。現代の企業活動において、コンピュータシステムやデータは不可欠な経営資源であり、これらを不正なアクセスや情報漏洩、改ざんといった脅威から保護することは極めて重要である。IAMは、このセキュリティの根幹を支える仕組みであり、システムエンジニアが理解すべき必須の概念と言える。具体的には、ユーザーがシステムを利用する際の本人確認から、利用できる機能の制限、さらには退職後のアクセス権の剥奪まで、ユーザーアカウントのライフサイクル全体にわたって一貫した管理を提供する。これにより、セキュリティレベルの向上だけでなく、コンプライアンスの遵守やIT管理業務の効率化にも大きく貢献する。
IAMを構成する主要な機能は、大きく分けて「認証」「認可」「ID管理」「アクセス管理」「監査」の五つに分類できる。まず「認証」とは、システムを利用しようとしている人物が、本当にその本人であるかを確認するプロセスである。最も一般的な認証方法は、ユーザーIDとパスワードの組み合わせだが、これだけではパスワードの漏洩リスクがあるため、近年ではより強固な認証が求められる。その代表例が多要素認証(MFA)であり、パスワードといった「知識情報」に加え、スマートフォンに送られるワンタイムパスワードなどの「所持情報」や、指紋や顔といった「生体情報」を複数組み合わせて本人確認を行うことで、セキュリティを大幅に向上させる。認証は、システムへの入口を守る最初の関門としての役割を担う。
次に「認可」は、認証によって本人確認が完了したユーザーに対し、具体的にどのような操作を許可するかを決定するプロセスである。認証が「誰であるか」を確認するのに対し、認可は「何をしてよいか」を制御する。例えば、あるファイルサーバーにおいて、Aさんはファイルの閲覧のみ可能、Bさんは閲覧と編集が可能、Cさんはアクセス自体が許可されない、といった制御が認可にあたる。この認可の仕組みがなければ、認証された全てのユーザーがシステム内のあらゆる情報にアクセスできてしまい、内部不正や操作ミスのリスクが非常に高くなる。したがって、ユーザーの役職や業務内容に応じて必要最小限の権限のみを付与する「最小権限の原則」を徹底することが、認可における重要な考え方となる。
「ID管理」は、ユーザーアカウントのライフサイクル全体を管理する機能である。従業員の入社時には新しいアカウントを作成し、必要なシステムへのアクセス権を付与する。部署異動や昇進があった際には、それに応じてアクセス権を見直したり、追加したりする必要がある。そして、退職時には速やかに全てのアカウントを削除または無効化し、情報資産へのアクセスを完全に遮断しなければならない。この一連のプロセスを「プロビジョニング」と呼び、手作業で行うと設定ミスや削除漏れが発生しやすく、セキュリティホールを生む原因となる。IAMシステムは、人事システムなどと連携し、これらのアカウント管理プロセスを自動化することで、迅速かつ正確なID管理を実現する。
「アクセス管理」は、認可の仕組みをより効率的かつ体系的に運用するための機能群である。その中核となるのが、RBAC(Role-Based Access Control)という考え方だ。これは、ユーザー一人ひとりに直接権限を設定するのではなく、「営業部」「開発部」「人事部」といった役割(ロール)を定義し、そのロールに対して必要な権限をまとめて割り当てる手法である。ユーザーには適切なロールを付与するだけで権限設定が完了するため、管理が大幅に簡素化され、設定ミスも防ぎやすくなる。また、アクセス管理にはシングルサインオン(SSO)も含まれる。これは、一度の認証処理で、許可された複数のクラウドサービスやアプリケーションにログインできる仕組みである。ユーザーは複数のIDとパスワードを覚える必要がなくなり利便性が向上する一方で、企業側は認証を一元管理できるため、セキュリティポリシーの徹底が容易になる。
最後に「監査」は、ユーザーのアクセス履歴や操作ログを記録し、監視、分析する機能である。誰が、いつ、どの情報にアクセスし、どのような操作を行ったかを記録しておくことで、万が一、情報漏洩や不正アクセスといったセキュリティインシデントが発生した際に、その原因を迅速に追跡し、特定することが可能になる。また、定期的にアクセスログをレビューすることで、不審な挙動を早期に検知したり、不要な権限が付与されているユーザーを発見したりすることにも繋がる。これらの監査記録は、業界の規制や法規制(コンプライアンス)で提出が求められることも多く、組織の信頼性を担保する上でも不可欠な機能である。以上のように、IAMは認証、認可、ID管理、アクセス管理、監査という機能が相互に連携することで、組織の情報資産を包括的に保護する、現代のITセキュリティにおける基盤技術なのである。