【ITニュース解説】富士通らが仕掛ける新ネットワークOSは“ゲームチェンジャー”になり得るか
2025年09月12日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「富士通らが仕掛ける新ネットワークOSは“ゲームチェンジャー”になり得るか」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
富士通らが新ネットワークOSを開発中だ。これがネットワーク業界の常識を変える「ゲームチェンジャー」となるか注目される。富士通の森林氏やArcserveのBabel氏による関連発言も紹介されている。
ITニュース解説
システムエンジニアを目指す皆さんにとって、ネットワークはITシステムの基盤であり、その進化は常に注目すべき重要なテーマだ。今回、富士通が中心となって進めている「新ネットワークOS」の動きは、まさにこのネットワークの世界に大きな変革をもたらす可能性を秘めているため、その内容と意義について解説する。
まず、ネットワークOSとは何か、から説明しよう。パソコンやスマートフォンにWindowsやmacOS、AndroidといったOS(オペレーティングシステム)が搭載され、ハードウェアを制御し、様々なアプリケーションを動かす土台となっているように、ネットワーク機器、例えば企業内で通信を中継するルーターやスイッチにも、その機器を制御し、ネットワークを適切に機能させるためのOSが搭載されている。これまでのネットワークOSの多くは、特定の機器メーカー(ベンダー)が自社のハードウェアとセットで開発・提供してきた。これにより、ネットワークを構築する際には、特定のベンダーの機器とOSを組み合わせて使うことが一般的で、一度採用すると他のベンダーの製品に乗り換えにくい「ベンダーロックイン」と呼ばれる状況が生まれやすかった。
このベンダーロックインの問題点は、特定のベンダーに依存することで、コストが高止まりしやすかったり、最新の技術やオープンな標準を取り入れにくかったりする点にある。また、機器ごとに異なるOSや管理体系を持つため、大規模なネットワークでは運用が複雑になり、新しい機能を追加する際にも手間がかかることが多かった。デジタルトランスフォーメーション(DX)が加速し、クラウドサービスの利用が当たり前になる現代において、企業が求めるネットワークは、より柔軟で、低コストで、迅速に変化に対応できるものでなければならない。
そこで登場するのが、富士通が「ゲームチェンジャー」と位置づけている「新ネットワークOS」の考え方だ。この新しい取り組みの核心は、「ソフトウェアとハードウェアの分離」、つまり「ディスアグリゲーション」にある。従来のネットワーク機器は、ハードウェアとOSが一体となって提供されていたが、ディスアグリゲーションでは、汎用的なハードウェアの上に、オープンソースをベースとしたソフトウェアとしてのネットワークOSを自由に導入・運用することを目指す。これは、パソコンのハードウェアに、WindowsでもLinuxでも好きなOSをインストールして使えるのと同じような考え方だ。
富士通は、この新ネットワークOSの実現に向けて「1FINITY」という専門会社を設立し、開発を進めている。1FINITYが目指すのは、特定のベンダーに縛られず、様々なメーカーのネットワーク機器に対応できるオープンなネットワークOSを提供することだ。オープンソースを基盤とすることで、多くの開発者がその開発に貢献できるようになり、特定の企業に依存しない、透明性の高い技術革新が期待できる。これにより、企業は特定のベンダーの製品に縛られることなく、汎用的なハードウェアとオープンなOSを自由に組み合わせられるようになる。
この変化がもたらすメリットは大きい。まず、コスト削減が挙げられる。汎用的なハードウェアは特定ベンダーの専用機器よりも安価に手に入れやすく、またオープンソースのOSはライセンス費用がかからないか、大幅に抑えられる可能性があるため、ネットワーク全体の構築・運用コストを大幅に削減できる。次に、柔軟性と俊敏性の向上だ。ソフトウェアとハードウェアが分離されることで、ネットワークの機能や設定をソフトウェアで柔軟に変更できるようになり、新しいサービスやアプリケーションの展開に迅速に対応できるようになる。例えば、クラウドサービスのように、必要な時に必要なリソースを柔軟に利用・拡張できるネットワークが実現に近づく。
さらに、これはネットワーク業界全体の競争を促進し、イノベーションを加速させる効果も期待できる。様々な企業がオープンなプラットフォーム上で独自のネットワークソリューションを開発・提供できるようになるため、より多様で革新的なサービスが生まれる土壌となるだろう。システムエンジニアとしては、このようなオープンな環境で、特定のベンダーの知識だけでなく、汎用的な技術やプログラミングスキルがより重要になる。ネットワークの設計から運用、さらには自動化(ネットワークオーケストレーション)といった分野で、これまでにないアプローチが求められるようになるはずだ。
富士通がこの取り組みを「ゲームチェンジャー」と呼ぶのは、まさにこれまでのネットワークの常識を根本から変え、新しいビジネスモデルや技術開発の可能性を切り開くものだからだ。システムエンジニアを目指す皆さんは、単に既存のネットワーク機器の使い方を覚えるだけでなく、ネットワークがどのように進化し、どのように利用されるべきか、といった将来のビジョンを持つことが重要になる。今回の富士通の取り組みは、その未来の一端を示しており、オープンで柔軟なネットワーク環境の構築が、これからのITインフラの主流になっていくことを強く示唆している。