【ITニュース解説】Hashed sorting is typically faster than hash tables

2025年09月09日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「Hashed sorting is typically faster than hash tables」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

大量のデータを集計する際、ハッシュテーブルよりデータをソートしてから処理する方が高速な場合が多い。ソートされたデータはCPUキャッシュが有効に働き効率が良いが、ハッシュテーブルはランダムなメモリアクセスが多くなりキャッシュ効率が悪化しやすいためである。(119文字)

ITニュース解説

システム開発において、大量のデータの中から特定のキーを使って情報をグループ化し、集計する処理は非常に頻繁に登場する。例えば、Webサーバーのアクセスログに含まれる膨大な記録から、IPアドレスごとにアクセス回数を数え上げるといったタスクがこれにあたる。このような課題を解決するために、多くのエンジニアがまず思い浮かべるのが「ハッシュテーブル」というデータ構造である。しかし、特定の条件下では、一見すると非効率に見える「ソート(並べ替え)」を活用したアプローチが、ハッシュテーブルよりも高速に動作することがある。

まず、一般的な解決策であるハッシュテーブルについて解説する。ハッシュテーブルは、キーと値のペアを効率的に格納・検索するためのデータ構造だ。内部では、キー(例えばIPアドレス)を「ハッシュ関数」という特殊な計算式に入力し、「ハッシュ値」と呼ばれる一意に近い数値に変換する。そして、このハッシュ値を配列のインデックス(添え字)として利用し、対応する値(アクセス回数など)を格納する。この仕組みにより、あるキーに対応する値を探したいとき、再度ハッシュ値を計算するだけで、データが格納されている場所を瞬時に特定できる。そのため、データの検索や追加、削除といった操作が平均的に非常に高速に行えるという大きな利点がある。

理論上は非常に高速なハッシュテーブルだが、現代のコンピュータの動作原理を考慮すると、必ずしも最速の選択肢とは言えない場合がある。その最大の理由は、CPUとメインメモリの間に存在する「CPUキャッシュ」との相性の悪さにある。CPUの処理速度はメインメモリの読み書き速度に比べて桁違いに高速である。この速度差を埋めるため、CPUは一度メインメモリから読み込んだデータを、手元にある小容量で超高速な「キャッシュ」に一時的に保存する。次に同じデータやその近くにあるデータが必要になった場合、低速なメインメモリにアクセスすることなく、キャッシュから瞬時に取り出すことができる。これを「キャッシュヒット」と呼び、プログラムの実行速度を大幅に向上させる。しかし、ハッシュテーブルでは、ハッシュ関数がキーを意図的にバラバラの値に変換するため、データはメインメモリ上の広範囲に分散して格納される傾向がある。その結果、データにアクセスするたびに、キャッシュに存在しない全く異なるメモリ領域を読みに行く必要が生じやすくなる。このランダムなメモリアクセスが多発すると、CPUはキャッシュの恩恵を十分に受けられず、メインメモリからのデータ転送を待つ時間が増え、パフォーマンスが低下する原因となる。

そこで提案されるのが「ハッシュソート」というアプローチだ。これは、データを処理する前にまずソートするという、一見遠回りに見える手法である。具体的な手順は以下のようになる。まず、集計したい全てのデータ要素に対して、キーからハッシュ値を計算する。次に、この計算したハッシュ値を基準として、全データを並べ替える。ソートが完了すると、同じキーを持つ(正確には、同じハッシュ値を持つ)データは、メモリ上で隣り合って配置されることになる。この状態になれば、あとはデータの先頭から末尾まで一度だけ順番にスキャンしていくだけで、同じキーのグループを簡単に見つけ出し、効率的に集計作業を行うことができる。

ハッシュソートが高速である最大の理由は、CPUキャッシュの性能を最大限に引き出せる点にある。ソートされたデータは、メモリ上で連続した領域に整然と並ぶ。そのため、集計処理でデータを読み込む際は、メモリのある場所から順番に読み進めていくだけの「シーケンシャルアクセス」になる。CPUは、このようなシーケンシャルアクセスを非常に得意としており、「プリフェッチ」という機能が効果的に働く。プリフェッチとは、CPUが次に必要となりそうなデータを予測し、事前にキャッシュに読み込んでおく機能である。シーケンシャルアクセスではこの予測が非常に容易なため、CPUは処理に必要なデータが常にキャッシュに準備されている状態を維持できる。これにより、CPUはメインメモリの応答を待つことなく、フルスピードで処理を続けることができるのだ。また、キーが長い文字列など比較に時間のかかるデータの場合、まず固定長の数値であるハッシュ値でソートすることで、高コストな比較処理の回数を大幅に削減できるという利点もある。

アルゴリズムの性能を評価する際、理論的な計算量だけでなく、それが実行されるハードウェア、特にCPUやメモリの特性を考慮することが極めて重要である。ハッシュテーブルは多くの場面で有効なデータ構造だが、大量のデータを一括で集計するようなバッチ処理においては、そのランダムなメモリアクセスパターンがボトルネックとなることがある。一方で、ハッシュソートは、データをソートするという前処理を加えることで、メモリアクセスをCPUにとって最も効率的なシーケンシャルアクセスに変換する。これにより、CPUキャッシュの能力を最大限に活用し、結果としてハッシュテーブルを上回るパフォーマンスを達成することが可能になる。この事例は、ソフトウェアの性能を追求する上で、データ構造やアルゴリズムの選択がいかにハードウェアの挙動と密接に関連しているかを示す好例と言えるだろう。

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