【ITニュース解説】いまさら聞けない、ハイパーバイザー「タイプ1」と「タイプ2」の違い

2025年09月09日に「TechTargetジャパン」が公開したITニュース「いまさら聞けない、ハイパーバイザー「タイプ1」と「タイプ2」の違い」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

仮想化技術の基盤となるハイパーバイザーには、ハードウェア上で直接動く「タイプ1」と、OS上でアプリとして動く「タイプ2」がある。それぞれ性能や用途が異なるため、システム構築時には両者の違いを理解しておくことが重要だ。

ITニュース解説

コンピュータの仮想化は、現代のITシステムを支える重要な技術の一つである。この技術は、1台の物理的なコンピュータのハードウェア資源、例えばCPUやメモリ、ストレージなどをソフトウェアによって論理的に分割し、その上で複数の独立したコンピュータ、すなわち仮想マシンを同時に動作させることを可能にする。この仮想化を実現する中心的な役割を担うソフトウェアが「ハイパーバイザー」だ。ハイパーバイザーは、物理的なハードウェアと仮想マシンの間に立ち、ハードウェア資源を各仮想マシンに適切に割り当てる司令塔の役割を果たす。このハイパーバイザーには、その動作方式によって大きく「タイプ1」と「タイプ2」の二種類が存在し、それぞれの特性を理解することは、システムエンジニアが適切なシステムを構築する上で不可欠な知識となる。

まず、タイプ1ハイパーバイザーについて解説する。タイプ1は「ベアメタル型」とも呼ばれ、物理的なコンピュータのハードウェア上に直接インストールされて動作する。つまり、WindowsやLinuxといった一般的なオペレーティングシステム(OS)を介さず、ハイパーバイザー自体がハードウェアを直接管理・制御する。構造としては、物理ハードウェアのすぐ上にハイパーバイザー層があり、その上で複数の仮想マシン(ゲストOS)が稼働する形だ。この構造の最大の利点は、パフォーマンスの高さにある。ハードウェアを直接制御するため、処理のオーバーヘッド、すなわち余分な処理の介在が非常に少なく、仮想マシンはハードウェアの性能を最大限に近い形で引き出すことができる。また、間に介在するソフトウェア層が少ないことは、セキュリティ上の利点にもつながる。攻撃の対象となる箇所が限定されるため、堅牢なシステムを構築しやすい。このような高いパフォーマンスと安定性から、タイプ1ハイパーバイザーは、企業のデータセンターで稼働するサーバーや、クラウドコンピューティングサービスの基盤など、高い性能と信頼性が要求される本番環境で広く採用されている。代表的な製品には、VMware vSphere/ESXiやMicrosoft Hyper-V、オープンソースのKVMなどがある。ただし、導入や管理には専門的な知識が必要となり、対応するハードウェアが限定される場合があるため、事前の調査が重要となる。

次に、タイプ2ハイパーバイザーは「ホストOS型」と呼ばれる。こちらは、WindowsやmacOS、Linuxといった既存のOS(ホストOS)の上に、一つのアプリケーションとしてインストールされて動作する。我々が普段使っているパソコンにソフトウェアをインストールするのと同じ感覚で導入できるのが特徴だ。構造は、物理ハードウェアの上にまずホストOSがあり、その上でアプリケーションとしてタイプ2ハイパーバイザーが動作し、さらにその上で仮想マシン(ゲストOS)が稼働するという階層になる。この方式の最大のメリットは、その手軽さと導入の容易さにある。特別なハードウェアを用意する必要がなく、使い慣れたOS上で簡単に仮想環境を構築できるため、システム開発のテスト環境や、特定のOSでしか動作しないアプリケーションを利用したい場合など、個人レベルでの利用や小規模な検証用途に適している。代表的な製品としては、Oracle VM VirtualBoxやVMware Workstation Playerなどが有名だ。しかし、デメリットも存在する。タイプ2ハイパーバイザーは、ハードウェアにアクセスする際に必ずホストOSを経由する。このホストOSの介在がオーバーヘッドとなり、タイプ1に比べてパフォーマンスが低下する傾向にある。また、ホストOS上で動作する一アプリケーションであるため、ホストOS自体のセキュリティ脆弱性の影響を受けやすく、安定性もホストOSの動作状況に左右される。

結論として、タイプ1とタイプ2のハイパーバイザーは、どちらが優れているというわけではなく、その用途と目的によって使い分けるべきものである。高いパフォーマンス、セキュリティ、安定性が求められる企業の基幹システムやクラウド基盤のような大規模な本番環境では、ハードウェアの性能を直接引き出せるタイプ1が選択される。一方、開発や学習、一時的なテスト環境の構築など、手軽さと導入の容易さが重視される場面では、アプリケーションのようにインストールできるタイプ2が非常に有効である。システムエンジニアを目指す上で、これら二つのハイパーバイザーの根本的な違いとそれぞれの長所・短所を正確に把握し、構築すべきシステムの要件に応じて最適な方式を選択できる能力は、極めて重要だと言えるだろう。