【ITニュース解説】I love UUID, I hate UUID

2025年09月09日に「Reddit /r/programming」が公開したITニュース「I love UUID, I hate UUID」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

どこでも生成でき重複しないIDであるUUIDは、分散システムで便利。一方、ランダムな値のためデータベースのインデックス効率を下げ、性能問題を起こすことも。利点と欠点を理解した使い分けが重要となる。

出典: I love UUID, I hate UUID | Reddit /r/programming公開日:

ITニュース解説

システム開発において、データベースに保存される一つ一つのデータを区別するために「識別子」は不可欠な存在である。この識別子として、古くから使われているのが1、2、3といった連続した整数、いわゆる連番(シーケンシャルID)だ。しかし、現代の複雑なシステムでは、連番IDだけでは対応が難しい場面が増え、それに代わる技術としてUUIDが広く利用されている。UUIDとは「Universally Unique Identifier」の略で、日本語では「汎用一意識別子」と訳される。これは、128ビットの数値で表現され、アルゴリズムに基づいて生成されることで、全世界のどのコンピューターでいつ生成しても、他のUUIDと重複する可能性が天文学的に低いという特徴を持つ。しかし、このUUIDには強力な利点がある一方で、無視できない欠点も存在し、開発者の間では「好きでもあり、嫌いでもある」という評価がなされることが多い。

UUIDが支持される最大の理由は、その圧倒的な一意性にある。連番IDは一つのデータベース内でしか一意性を保証できないが、UUIDは理論上、地球上のすべてのコンピューターが協力しても重複させることが困難なほど、広大な空間を持つ。この特性は、複数のサーバーが連携して動作する「分散システム」において絶大な効果を発揮する。例えば、各サーバーが中央の管理機構に問い合わせることなく、独立して安全にIDを生成できるため、システムの性能を低下させるボトルネックが生まれにくい。これは、システムの規模が大きくなっても性能を維持しやすい「スケーラビリティ」の向上に直結する。また、セキュリティ面でも大きな利点がある。WebアプリケーションのURLなどで連番IDを使用すると、IDを1つ増減させるだけで他人の情報にアクセスできてしまう危険性がある。しかし、UUIDはランダムな文字列にしか見えないため、IDを推測して不正アクセスを試みる攻撃を極めて困難にする。さらに、異なる環境で開発された複数のデータベースを一つに統合する際も、IDの重複を心配する必要がなく、マージ作業を大幅に簡略化できる。

一方で、UUIDが敬遠される理由も明確に存在する。最も大きな問題は、データベースのパフォーマンスに与える影響だ。UUIDは通常16バイトのデータサイズを持つのに対し、一般的な整数の連番IDは4バイトや8バイトで済む。これは、データ一件ごとにストレージ容量をより多く消費することを意味し、大量のデータを扱うシステムでは無視できない差となる。さらに深刻なのが、データベースの検索速度を向上させる「インデックス」との相性の悪さである。一般的に利用されるランダムなUUID(バージョン4)は、生成される値が完全にバラバラであるため、新しいデータが追加されるたびに、インデックスの様々な場所に書き込みが行われる。これにより、インデックスの構造が断片化し、データの追加や検索の性能が徐々に低下していく。連番IDであれば、常にインデックスの末尾にデータが追加されるため、このような問題は起きにくい。また、開発者や運用者にとっての扱いづらさも欠点として挙げられる。エラーログの確認やデバッグの際に、長くて複雑なUUIDを読み取ったり、口頭で伝えたり、手で入力したりするのは非常に困難で、作業効率の低下やミスの原因となる。ID自体に生成順などの意味がないため、IDを使ってデータを時系列に並び替えるといった操作も基本的にはできない。

このように、UUIDは万能な解決策ではなく、その採用は常にトレードオフを伴う。分散システムにおけるID生成の自律性やセキュリティの向上といったメリットが、データベースのパフォーマンス低下や開発上の扱いにくさといったデメリットを上回るかどうかを、システムの要件に照らして慎重に判断する必要がある。近年では、UUIDの欠点を克服する試みも進んでいる。例えば、生成時刻の情報を含み、時系列に並び替え可能な新しいバージョンのUUID(バージョン7など)が登場し、インデックス性能の低下をある程度緩和できるようになった。システムエンジニアを目指す者は、こうした技術的な背景を深く理解し、単に流行しているからという理由で技術を選択するのではなく、それぞれの技術が持つ特性、利点、欠点を正確に把握した上で、構築するシステムにとって何が最適解であるかを見極める設計能力を養うことが重要である。

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