【ITニュース解説】IGN: Nioh 3 - 19 Minutes of Open Exploration Gameplay - IGN First

人気アクションRPG「仁王」シリーズの最新作として期待される「仁王3」に関して、オープンワールドでの探索に焦点を当てた新たなゲームプレイ映像が公開された。これまでのシリーズ作品は、明確に区切られたステージを攻略していく形式を採用していたが、本作では広大な世界を自由に冒険できるオープンワールドシステムが導入されることが示唆されており、技術的な観点からも大きな注目を集めている。この変更は、ゲーム体験を根本から変えるだけでなく、その裏側で動作するシステムにも多大な影響を与えるものであり、システムエンジニアを目指す者にとって興味深い技術的挑戦が数多く含まれている。

まず、オープンワールドとは、プレイヤーがゲーム内の広大な世界を読み込み時間なしに、あるいは最小限の読み込みでシームレスに移動できるゲームデザインを指す。従来のステージクリア型ゲームでは、各ステージのデータは個別に管理され、ステージ間の移動時には明確なロード画面が挟まるのが一般的であった。しかし、オープンワールドでは、この「区切り」を取り払い、一つの巨大な仮想空間を構築する必要がある。これを実現するためには、いくつかの重要な技術が不可欠となる。その代表例が「ストリーミング技術」である。これは、プレイヤーキャラクターの周辺にある地形やオブジェクト、キャラクターのデータのみをリアルタイムでメモリに読み込み、遠く離れたり視界から外れたりした部分のデータはメモリから解放する技術だ。これにより、ゲーム機やPCの限られたメモリ容量でも、広大な世界の表現が可能になる。もし全てのデータを一度にメモリに読み込もうとすれば、膨大なリソースを消費し、システムの動作が極端に遅くなるか、あるいは不可能になってしまう。

さらに、描画負荷を軽減するための工夫も欠かせない。例えば「LOD（Level of Detail）」と呼ばれる技術は、プレイヤーからの距離に応じてオブジェクトのポリゴン数（形状を構成する多角形の数）を動的に変化させる。遠くにあるオブジェクトは簡略化されたモデルで表示し、近くにあるものほど詳細なモデルで表示することで、描画処理の全体的な負荷を抑え、滑らかなフレームレートを維持する。このような技術は、膨大な数のオブジェクトが存在するオープンワールド環境において極めて重要となる。「仁王3」の映像で見て取れる、遠景の美しい山々から手前の細かな草木までが滑らかに表示されている背景には、こうした描画最適化技術が駆使されていると考えられる。また、これら無数のオブジェクトや地形データを効率的に管理し、必要に応じて迅速に読み出すためには、高度なデータ管理構造が求められる。空間をグリッド状に分割して管理する「空間分割」などの手法を用い、どのデータがどこに存在するかを効率的にインデックス化するデータベース的なアプローチも必要不可欠である。

オープンワールド化は、敵キャラクターのAI（人工知能）にも大きな変化を要求する。限定されたステージ内での行動パターンを設計するのとは異なり、広大なフィールドでは、プレイヤーをどのように発見し、追跡し、連携して攻撃するかといった、より高度で複雑な索敵ロジックや行動アルゴリズムが必要になる。プレイヤーがどの方向から来るか予測できないため、AIは常に周囲の環境を認識し、状況に応じて動的に行動を決定しなければならない。これは、状態遷移を管理するステートマシンや、より高度な判断を下すためのビヘイビアツリーといったAI技術の応用が鍵となる。さらに、物理演算エンジンの役割も増大する。映像内でキャラクターが草木をかき分けて進んだり、オブジェクトを破壊したりする様子は、物理法則に基づいたシミュレーションによって実現されている。オープンワールドでは、プレイヤーとのインタラクションの対象となるオブジェクトが膨大になるため、これらの物理計算をリアルタイムで効率的に処理する能力がシステム全体に求められる。

こうしたゲーム開発の裏側は、システムエンジニアリングの世界と密接に関連している。大規模な仮想世界を安定して動作させるためには、サーバーサイドの技術も重要だ。特にオンラインマルチプレイ要素が加わる場合、多数のプレイヤーの位置情報やアクションを同期させるための低遅延なネットワーク通信技術、膨大なアクセスを処理するサーバーインフラの設計と構築、プレイヤーデータを永続化するためのデータベース管理など、Webサービス開発で用いられる技術と多くの共通点を持つ。開発プロセスにおいても、数百万行にも及ぶコードや大量のアセット（3Dモデル、テクスチャ、音声など）を効率的に管理するためのバージョン管理システム（Gitなど）の運用は不可欠であり、ビルドやテストを自動化するCI/CD（継続的インテグレーション/継続的デリバリー）のパイプライン構築も、大規模なゲーム開発プロジェクトを支える基盤技術となる。

「仁王3」が採用するオープンワールドという仕組みは、単にゲームの遊び方を変えるだけでなく、その実現のために多岐にわたる高度なIT技術が集約された結果である。ストリーミングによるデータ管理、LODによる描画最適化、高度なAI、そしてそれら全てを支える堅牢なシステムアーキテクチャは、まさに複雑なソフトウェアシステムの結晶と言える。システムエンジニアを目指す者にとって、このような最先端のエンターテインメントコンテンツがどのような技術によって成り立っているのかを考察することは、自らが学ぶべき技術分野への理解を深め、具体的な応用例を知る上で非常に有益な機会となるだろう。