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【ITニュース解説】Making io_uring pervasive in QEMU [pdf]

2025年09月12日に「Hacker News」が公開したITニュース「Making io_uring pervasive in QEMU [pdf]」について初心者にもわかりやすく解説しています。

作成日: 更新日:

ITニュース概要

QEMU(仮想化ソフト)に、データ処理を高速化する技術io_uringを幅広く取り入れる。これにより、仮想マシン内のデータ読み書きが効率的になり、システム全体の動作がよりスムーズで高性能になる。

出典: Making io_uring pervasive in QEMU [pdf] | Hacker News公開日:

ITニュース解説

システムエンジニアが扱うコンピュータシステムでは、プログラムがデータを読み書きする「I/O(入出力)」の効率が、全体の性能を大きく左右する。例えば、ハードディスクからファイルを読み込んだり、ネットワークを通じて別のコンピュータと通信したりする処理がこれに当たる。もしこのI/Oが遅ければ、どんなに高速なCPUを持っていても、システム全体の処理はボトルネックとなってしまい、期待通りの性能を発揮できない。

従来のI/O処理の多くは「同期I/O」と呼ばれる方式で行われてきた。これは、プログラムがI/O操作を開始したら、その処理が完了するまで次の作業に進まずに待機するというものだ。たとえるなら、注文した料理が運ばれてくるまで何もできずにテーブルで待っているような状態だ。短い待ち時間なら問題ないが、I/OはCPUの処理速度に比べて非常に遅いため、この待ち時間が積み重なると、プログラムやシステム全体が無駄な時間を過ごすことになり、性能が低下してしまう。

この問題を解決するために登場したのが「非同期I/O」という考え方である。これは、I/O操作を開始したら、その完了を待たずに次の作業を進め、I/Oが完了したときに通知を受け取るという方式だ。先ほどの料理の例で言えば、料理を注文したら、それが出来上がるのを待つ間に飲み物を飲んだり、他の人と会話したりできるようなものだ。これにより、CPUはI/Oの完了を待つことなく他の処理を実行できるため、システム全体を効率よく利用できる。

Linuxカーネルには、長年、さまざまな非同期I/Oの仕組みが存在していたが、それぞれに限界や複雑さがあった。そこに、近年登場したのが「io_uring」という新しい非同期I/Oインターフェースである。io_uringの最大の特徴は、ユーザー空間(アプリケーションが動作する領域)とカーネル空間(OSの核となる領域)の間でのデータのやり取りを最小限に抑え、非常に高い効率でI/O処理を実行できる点にある。具体的には、複数のI/O要求を一度にまとめてカーネルに渡し(バッチ処理)、結果もまとめて受け取ることができるため、システムコール(アプリケーションがカーネルに処理を依頼する命令)の回数を大幅に削減できる。これにより、従来の非同期I/Oに比べて、より低遅延で高スループットなI/Oを実現できるようになった。

さて、ここで「QEMU」というソフトウェアについて考える。QEMUは、オペレーティングシステムやプログラムを仮想マシン上で実行するためのオープンソースの仮想化ソフトウェアだ。例えば、Windows上でLinuxを動かしたり、古いOS環境を再現したりする際に利用される。QEMUの内部では、仮想マシンからのI/O要求、例えば仮想ディスクへの読み書きや仮想ネットワークを介した通信などを、ホストOS(QEMUが動いているOS)の実際のI/O操作に変換して実行している。この変換処理自体が性能のボトルネックとなりやすく、特にストレージやネットワークのI/O性能は、仮想マシンの快適さに直結する重要な要素だ。

QEMUはこれまでもさまざまなI/O最適化に取り組んできたが、その中核となるI/O処理パスにio_uringを適用することで、さらなる性能向上を目指している。ここで「pervasive」(広範囲に浸透させる)という言葉が示唆しているのは、単一の特定のI/O処理だけでなく、QEMU内部の様々なコンポーネント、例えば仮想ディスクのバックエンド処理、仮想ネットワークデバイスの処理、さらにはQEMUが直接関わるストレージ管理やイベント処理など、I/Oが関係するあらゆる場所でio_uringを活用していくという戦略だ。

この取り組みによって得られるメリットは大きい。まず、仮想マシンのI/O性能が大幅に向上する。特に、多数の小さなI/O操作が頻繁に発生するデータベースやウェブサーバーのようなワークロードでは、io_uringの低遅延・高スループットな特性が顕著に現れるだろう。これにより、仮想マシン上で動作するアプリケーションの応答性が向上し、ユーザー体験が改善される。次に、QEMU自身の効率も高まる。I/O処理を待つ時間が減るため、QEMUプロセスがより多くの仮想マシンを効率的に処理できるようになり、ホストOSのリソース(CPUサイクルなど)を有効活用できる。さらに、ホストOSのio_uringという先進的な機能をQEMUが深く利用することで、仮想化技術とLinuxカーnelのI/Oサブシステムとの連携が強化され、今後の性能向上や機能拡張の基盤となる。

このように、QEMUにio_uringを広く適用していくことは、単なる部分的な改良に留まらず、仮想化技術全体の性能と効率を根底から引き上げる重要なステップである。システムエンジニアを目指す者にとって、I/O処理の最適化がいかにシステムの性能に影響を与えるか、そして最新のカーネル機能がどのようにアプリケーションやミドルウェア、さらには仮想化技術に応用されていくかを理解することは、現代のシステム開発において不可欠な知識となるだろう。io_uringは今後、Linuxベースの高性能システムにおいて、デファクトスタンダードとなる可能性を秘めており、その進化と活用はシステムエンジニアにとって常に注目すべきテーマと言える。

【ITニュース解説】Making io_uring pervasive in QEMU [pdf] | いっしー@Webエンジニア