【ITニュース解説】KDDI、「テックタッチ」導入で営業活動を支援--「Salesforce」の運用効率化
2025年09月08日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「KDDI、「テックタッチ」導入で営業活動を支援--「Salesforce」の運用効率化」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
KDDIは、顧客管理システム「Salesforce」の操作を支援するため、画面上で使い方を案内するツール「テックタッチ」を導入した。これにより、営業担当者がシステムをスムーズに活用できるようになり、業務の効率化とパートナー企業との連携強化を図る。(117文字)
ITニュース解説
大手通信キャリアであるKDDIが、営業活動で利用しているシステムをより効率的に運用するため、新たに「テックタッチ」というツールを導入した。この取り組みは、巨大な組織がITシステムをいかにして現場に浸透させ、その価値を最大限に引き出すかという課題に対する一つの答えを示す事例である。システムエンジニアを目指す上で、単にシステムを開発するだけでなく、それが実際にどのように使われ、どのような課題を解決するのかを理解することは極めて重要だ。
まず、このニュースの背景にある二つの重要なITツールについて理解する必要がある。一つは、KDDIが以前から利用している「Salesforce」である。Salesforceは、顧客関係管理(CRM)や営業支援システム(SFA)と呼ばれる分野で世界的に高いシェアを誇るクラウドサービスだ。簡単に言えば、企業が顧客情報を一元管理し、営業担当者がどの顧客にいつ、どのようなアプローチをしたか、商談がどの段階にあるかといった活動状況を記録・共有するためのプラットフォームである。これにより、組織全体で営業戦略を立てたり、担当者の引き継ぎをスムーズに行ったりすることが可能になる。非常に高機能で、企業の業務に合わせて細かくカスタマイズできる点が強みだが、その反面、機能が多すぎることや、入力すべき項目が複雑になることで、現場の利用者にとっては操作が難しいと感じられることがある。
KDDIも同様の課題を抱えていた。全国の営業担当者や、商品を販売するパートナー企業の担当者など、数多くの人々がSalesforceを利用している。しかし、その操作方法が十分に浸透せず、入力必須の項目が漏れてしまったり、誤ったデータが入力されたりすることがあった。データの品質が低いと、せっかく蓄積した情報を分析して次の営業戦略に活かすことができない。また、Salesforceに新しい機能を追加したり、入力ルールを変更したりするたびに、全利用者に向けてマニュアルを作成し、説明会を開く必要があった。これは膨大な時間とコストがかかるだけでなく、利用者が変更内容をすぐに把握し、日々の業務に反映させることを難しくしていた。
そこで登場するのが、今回新たに導入された「テックタッチ」である。これは「デジタルアダプションプラットフォーム(DAP)」と呼ばれる種類のツールだ。デジタルアダプションとは「デジタルの定着」を意味し、ユーザーが新しいシステムやツールをスムーズに使いこなせるように支援することを目的とする。テックタッチは、既存のWebシステム、この場合はSalesforceの画面上に、操作ガイドや入力ルールに関するナビゲーションを後から追加で表示させることができる。例えば、Salesforceのある入力欄にカーソルを合わせると「ここには半角数字で入力してください」といった吹き出しを表示させたり、「次はこのボタンをクリックしてください」というように、操作の手順を画面上でリアルタイムに案内したりすることが可能だ。重要なのは、これらのガイドやナビゲーションを、Salesforceのプログラム自体を改修することなく、専門的なプログラミング知識が不要な「ノーコード」で設定できる点である。
KDDIがテックタッチを導入したことで、これまで抱えていた課題の多くが解決されると期待されている。まず、データ品質の向上だ。入力すべき項目やそのルールが画面上に直接表示されるため、利用者はマニュアルを確認しなくても、正確なデータ入力を自然と行うことができるようになる。これにより、入力漏れや入力ミスが大幅に削減される見込みだ。次に、システムの利用定着と教育コストの削減である。操作に迷った際、その場でナビゲーションが表示されるため、利用者は自己解決できる場面が増える。これにより、システム管理者やヘルプデスクへの問い合わせが減り、運用側の負担も軽減される。新しい機能が追加された場合も、テックタッチで新たなガイドを作成・配信するだけで、全利用者に新しい操作方法を周知させることができるため、大規模な研修は不要になる。
この事例は、現代のシステム開発・運用の重要な側面を示唆している。システムは、ただ作って提供すれば終わりではない。いかにして多くのユーザーに正しく、そして継続的に使ってもらうかという「定着化」のフェーズが極めて重要なのである。特に大企業では、ITリテラシーが様々なレベルの従業員が同じシステムを使うため、直感的で分かりやすい操作性が求められる。システムの使いやすさ、すなわちUI(ユーザーインターフェース)やUX(ユーザーエクスペリエンス)を向上させるアプローチとして、システム自体を根本から改修するには大きなコストと時間がかかるが、テックタッチのようなDAPを活用することで、より迅速かつ柔軟に改善を図ることが可能になる。システムエンジニアは、こうした外部ツールを組み合わせることで、既存システムの価値をさらに高めるという視点を持つことが今後ますます重要になるだろう。KDDIのこの取り組みは、テクノロジーでシステムを強化するだけでなく、テクノロジーで「人」のシステム利用を支援するという、ユーザーに寄り添ったIT活用の先進的なモデルと言える。