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【ITニュース解説】宇宙太陽光発電をも見据えた「レーザー送電」、三菱重工とNTTが世界最高効率に--大気影響下で

2025年09月17日に「CNET Japan」が公開したITニュース「宇宙太陽光発電をも見据えた「レーザー送電」、三菱重工とNTTが世界最高効率に--大気影響下で」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

NTTと三菱重工は、レーザー光を使い1km先の場所へワイヤレスで電力を送る実験で、世界最高効率の15%を達成した。大気の揺らぎがある環境下、1kWのレーザーから152Wの電力を得た。これはシリコン製の光電変換素子を使った無線給電として世界最高の効率となる。

ITニュース解説

NTTと三菱重工業が、レーザー光を使って1km離れた場所へワイヤレスで電力を送る実験に成功したというニュースが発表された。これは電力伝送効率15%という世界最高記録を達成したもので、特に大気の揺らぎが強い環境下でこの成果を出した点が注目されている。今回の成功は、将来的に宇宙太陽光発電のような大規模なエネルギー供給システムを実現するための重要な一歩となることが期待されている。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、この技術がどのように機能し、どのような可能性を秘めているのか、その全体像を理解することは、未来の技術を支える上で非常に役立つだろう。

まず、レーザー送電とは何かから解説する。通常、電力は電線という物理的な媒体を通して送られる。しかし、レーザー送電では、光の一種であるレーザー光をエネルギーの運び手として利用し、空中を介して電力を伝送する。送信側では電気エネルギーをレーザー光に変換し、これを特定の方向へ照射する。受信側では、照射されたレーザー光を光電変換素子、つまり太陽電池のような装置で再び電気エネルギーに変換して利用する仕組みである。電線が不要になるため、ケーブル敷設が困難な場所や、移動する物体への給電など、幅広い応用が期待されている。

なぜ今、このようなワイヤレス送電技術が注目されているのか。既存の電線による送電は非常に効率的で安定している一方で、物理的な制約も多い。例えば、災害で電線が寸断された場合や、山間部、離島、あるいは遠隔地のセンサー、水中ドローンなど、電線を引くことが難しい場所に電力を供給する際には、ワイヤレス送電が強力な解決策となり得る。また、将来的に宇宙空間で発電した電力を地上へ送る「宇宙太陽光発電」のような壮大な計画を実現するためには、長距離を効率よく電力を送る技術が不可欠となる。今回のレーザー送電技術は、まさにそのような未来のニーズに応えるべく研究開発が進められている先端技術の一つなのである。

NTTと三菱重工業が今回発表した実験は、約1kW(キロワット)のレーザー光を1km(キロメートル)先へ照射し、その地点で152W(ワット)の電力を得ることに成功した。この結果、電力伝送効率は15%に達した。この15%という数値は、一見すると低いように感じるかもしれないが、1kmという長距離を、しかも大気中の影響を受けながらワイヤレスで電力を送る技術としては、これまでの世界記録を更新する最高効率である。特に、送電ロスを最小限に抑えつつ、安定して電力を供給できる可能性を示した点で、その価値は非常に大きい。

今回の実験が特に注目されるのは、「大気の揺らぎが強い環境下」でこの効率を達成した点である。大気中には、空気の温度差や流れによって発生する「揺らぎ」が存在する。これは、遠くの景色がゆらゆらと揺れて見える蜃気楼のような現象と同じ原理で、レーザー光のような光の波は、この揺らぎによって進行方向が曲がったり、分散してしまったりする。これにより、受信側に到達するレーザー光のエネルギーが減少したり、安定しなくなったりする問題が発生する。これまでの長距離レーザー送電の研究では、この大気の影響をいかに克服するかが大きな課題であった。今回の実験では、この課題に対して何らかの技術的ブレークスルーがあったと推測されるが、具体的な詳細は公表されていないものの、高度な光制御技術や、大気の状況をリアルタイムで検知し、レーザービームを補正するアダプティブ光学技術などが用いられている可能性が高い。このように、環境ノイズの影響を抑えながら安定した電力伝送を実現したことが、今回の成果の非常に重要な側面である。

受信側でレーザー光を電気に変換するために使われたのは、シリコン製の光電変換素子である。シリコンは太陽電池の主要な材料として広く利用されており、その安定性やコスト面での利点がある。一般的な太陽電池は太陽光スペクトル全体からエネルギーを吸収するが、レーザー送電では特定の波長のレーザー光を効率よく電気に変換できるような、最適化された素子が用いられていると考えられる。この技術により、受信側でのエネルギー変換ロスを最小限に抑え、全体としての伝送効率を高めることに貢献している。

このレーザー送電技術の最終的な目標の一つとして、「宇宙太陽光発電」が挙げられている。宇宙空間に巨大な太陽光パネルを設置し、地球に降り注ぐ太陽光エネルギーを直接電力に変換する。そして、その膨大な電力をレーザーやマイクロ波といったワイヤレス送電技術を使って地球上の特定の地点へ送る構想である。宇宙は常に太陽光が当たるため、天候に左右されることなく安定して発電できるという大きなメリットがある。今回の1km、15%という成果は、宇宙から地上までの数万kmという途方もない距離を伝送する技術の基礎となるものであり、この分野の研究が着実に進展していることを示している。

このような革新的な技術を実用化していく過程では、システムエンジニアの役割が非常に重要になる。例えば、送信側と受信側のレーザービームを正確に同期させ、大気の揺らぎをリアルタイムで補正するための複雑な制御システムを開発すること。また、送電効率を最大化するためのデータ分析や最適化アルゴリズムを設計すること。さらに、安全に電力を伝送するための監視システムや、万が一の異常発生時に自動で停止するような安全機構を組み込むことも必要となる。これらのシステムは、ハードウェアだけでなく、それを動かすソフトウェア、そして全体のインフラ構築によって成り立っており、システム全体の設計から実装、運用、保守に至るまで、幅広い知識と技術を持つシステムエンジニアの専門性が不可欠である。今回のレーザー送電技術の進展は、将来のエネルギー供給のあり方を大きく変える可能性を秘めており、システムエンジニアとしてこのような最先端技術の発展に貢献できる機会は、これからますます増えていくことだろう。

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