【ITニュース解説】MCPにおけるセキュリティリスク

2025年09月05日に「Qiita」が公開したITニュース「MCPにおけるセキュリティリスク」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Anthropicが昨年12月にMCPを発表し、多様なMCPサーバーが公開されている。個人でも自由にサーバーを構築でき、VisualStudio公式やAIBaseでも提供されるなど、利用が拡大している状況だ。

出典: MCPにおけるセキュリティリスク | Qiita公開日:

ITニュース解説

最近、Anthropic社から「MCP(Model Completion Provider)」という新しいAIモデルが発表され、これを活用したさまざまなサービスが個人でも手軽に公開できるようになった。MCPとは、簡単に言えば、人間の言葉を理解し、質問に答えたり文章を生成したりする能力を持つ大規模言語モデルのようなAIの一種だ。このMCPのようなAIモデルを基盤として、独自のアプリケーションやウェブサービス(MCPサーバーと呼ぶ)を構築し、一般に公開する動きが広がっている。しかし、この便利さの裏には、システムを開発・運用する上で注意すべきセキュリティ上のリスクが潜んでいる。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これらのリスクと対策を理解することは非常に重要だ。

まず、最も基本的なセキュリティリスクとして「外部APIキーの取り扱い」が挙げられる。MCPのようなAIモデルを利用する際には、通常、提供元から発行される「APIキー」というパスワードのようなものが必要になる。これは、どのユーザーがどれだけサービスを利用したかを識別し、認証を行うための重要な情報であり、このキーが漏洩すると、悪意のある第三者にサービスを不正に利用されたり、高額な利用料を請求されたりする危険性がある。多くの開発初心者は、このAPIキーをプログラムのソースコードの中に直接書き込んでしまう「ハードコーディング」という方法をとりがちだが、これは非常に危険な行為だ。特に、GitHubのような公開されたコードリポジトリに誤ってAPIキーを含んだコードをアップロードしてしまうと、世界中の誰でもそのAPIキーを入手できてしまう状況になりかねない。このような事態を避けるためには、APIキーをコードから分離し、「環境変数」として設定したり、「シークレット管理サービス」を利用したりして、安全に管理する必要がある。これにより、APIキーがコードに直接埋め込まれることを防ぎ、漏洩のリスクを大幅に軽減できる。

次に、「プロンプトインジェクション」という攻撃手法についても理解が必要だ。MCPのようなAIモデルは、ユーザーが入力した「プロンプト」と呼ばれる指示や質問に基づいて応答を生成する。プロンプトインジェクションとは、このユーザー入力を巧みに操作することで、AIモデルが開発者の意図しない動作をするように仕向ける攻撃だ。例えば、モデルに本来は公開すべきでない内部情報や機密情報を出力させたり、本来のシステム指示を上書きして、攻撃者が望むような振る舞いをさせたりすることが可能になる。これにより、情報の漏洩やシステムの誤作動につながる恐れがある。このリスクに対する対策としては、ユーザーからの入力を厳密にチェックし、悪意のある指示が含まれていないかをフィルタリングすることが求められる。また、モデルの出力内容を常に検証し、不適切な情報が含まれていないかを確認する仕組みも重要だ。

さらに、「データ流出」のリスクも忘れてはならない。MCPを活用したサービスでは、ユーザーが様々な情報、時には個人情報や企業秘密といった機密性の高いデータをAIモデルに入力することがある。これらのデータが、AIモデルの学習データとして利用されたり、システムの不備によって外部に漏洩したりする危険性がある。特に、多くのAIモデルは入力されたデータをサービスの改善のために利用する可能性があるため、機密情報を扱う場合はそのモデルの利用規約やプライバシーポリシーを十分に確認する必要がある。データ流出を防ぐためには、ユーザーの入力データを匿名化したり、機密情報を特定できない形に加工したりするなどの対策が考えられる。また、サービスを提供する際には、どのようなデータが収集され、どのように利用されるのかを明確に提示するプライバシーポリシーを策定し、ユーザーに安心して利用してもらえる環境を整えることが重要だ。

これら以外にも、MCPサーバーを公開する上で考慮すべきセキュリティリスクは存在する。例えば、「認証・認可」の仕組みだ。公開されたサーバーに誰でも自由にアクセスできる状態では、不正な利用やサイバー攻撃の標的になりやすい。そのため、APIキーやOAuthのような認証メカニズムを導入し、正当なユーザーだけがサービスを利用できるようにアクセス制御を行う必要がある。また、「レートリミット」や「コスト管理」も重要だ。悪意のあるユーザーが大量のリクエストを送信したり、設定ミスによって不必要な処理が繰り返されたりすると、提供元のAIモデル利用料金が高額になる可能性がある。これを防ぐために、一人のユーザーが一定期間に利用できる回数を制限する「レートリミット」を設定したり、利用状況を常に監視してコストを管理したりする仕組みが必要となる。

このように、MCPのような最先端のAI技術をシステム開発に活用する際には、その利便性だけでなく、それに伴うセキュリティリスクを深く理解し、適切な対策を講じることが不可欠だ。システムエンジニアを目指す皆さんは、新しい技術に触れる機会が多い分、常にセキュリティに対する高い意識を持ち、安全なシステムを設計・実装するスキルを磨いていくことが求められる。セキュリティ対策は、単なる技術的な課題ではなく、ユーザーからの信頼を得て、サービスを継続的に提供するための土台となる要素だからだ。

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