【ITニュース解説】NEC、AI強化の新「LAVIE」3シリーズを発表--NPU搭載でCopilot+ PC対応も

2025年09月09日に「ZDNet Japan」が公開したITニュース「NEC、AI強化の新「LAVIE」3シリーズを発表--NPU搭載でCopilot+ PC対応も」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

NECがAI機能を強化した新PC「LAVIE」を発表。AI処理専用プロセッサ「NPU」を搭載し、PC単体でのAI処理を高速化する。マイクロソフトの新しいAI PC規格「Copilot+ PC」にも対応し、OSレベルでの高度なAI活用を実現する。

ITニュース解説

NECパーソナルコンピュータが、AI機能を大幅に強化した新しいパソコン「LAVIE」シリーズを発表した。これは、単に性能が向上しただけでなく、今後のパソコンのあり方そのものを変える可能性を秘めた、重要な動きである。システムエンジニアを目指す上で、このニュースが持つ技術的な意味を理解することは非常に有益だ。

今回の新製品の最大の特徴は、「NPU」と呼ばれる新しいタイプのプロセッサを搭載している点にある。NPUは「Neural Processing Unit」の略称で、日本語では「ニューラル・プロセッシング・ユニット」と訳される。これは、AI、特にニューラルネットワークに関連する計算を専門に、高速かつ効率的に処理するために設計された半導体だ。これまでパソコンの頭脳として中心的な役割を担ってきたのは「CPU(中央演算処理装置)」だった。CPUは、OSの実行からアプリケーションの動作まで、あらゆる処理をこなす汎用的な司令塔のような存在である。また、美しい映像や3Dグラフィックスを表示するためには「GPU(画像処理装置)」が使われてきた。GPUは、単純な計算を大量に同時に行う「並列処理」が得意なため、近年ではAIモデルの学習にも活用されている。では、なぜCPUやGPUがあるのに、新たにNPUが必要になったのだろうか。それは、AIの利用形態が変化してきたからだ。従来、高度なAI機能の多くは、インターネット経由でデータセンターにある強力なサーバー(クラウド)にデータを送り、そこで処理された結果を受け取るという形だった。しかしこの方法には、通信の遅延が発生する、インターネット接続が必須である、プライバシーに関わるデータを外部に送りたくない、といった課題があった。そこで、スマートフォンやパソコンといった手元のデバイス上で直接AIを動かす「オンデバイスAI」または「エッジAI」という考え方が注目されるようになった。NPUは、このオンデバイスAIを実現するための鍵となる技術であり、CPUやGPUよりもはるかに少ない消費電力で、特定のAI処理(特に学習済みモデルを使って答えを導き出す「推論」処理)を実行できるという強みを持っている。

このNPUの搭載と密接に関わっているのが、Microsoftが提唱する新しいパソコンのコンセプト「Copilot+ PC」である。Copilot+ PCとは、Windowsに深く統合された高度なAI機能を、クラウドに頼ることなく、パソコン本体の力だけで快適に実行できる性能を持つパソコンのことを指す。その性能要件の核となるのが、一定以上の性能(具体的には40TOPS以上、1秒間に40兆回の演算能力)を持つNPUを搭載していることだ。これにより、例えば「先週見た、猫の動画を探して」といった曖昧な指示でパソコン内のファイルを検索したり、オンライン会議中にリアルタイムで多言語の字幕を表示したり、簡単な指示で画像を生成・編集したりといった作業が、インターネット接続の有無にかかわらず、瞬時に行えるようになる。これまでのパソコンでは考えられなかったような、直感的でパワフルな体験がOSレベルで標準提供されるのだ。今回のNECの新LAVIEシリーズは、まさにこのCopilot+ PCの要件を満たすモデルを含んでおり、新しい時代のパソコンの先駆けとなる製品群と言える。

この一連の動きは、システムエンジニアを目指す者にとって、無視できない技術的な転換点を示唆している。これまでのアプリケーション開発では、CPUの処理能力をいかに効率的に使うかが一つの焦点だった。しかし、これからはCPU、GPU、そしてNPUという3種類のプロセッサの特性を理解し、処理内容に応じて最適なプロセッサにタスクを振り分けるようなソフトウェア設計が求められるようになる可能性がある。例えば、ユーザーインターフェースの制御はCPU、グラフィック描画はGPU、そして背景で常に動くAIアシスタント機能はNPUに任せる、といった具合だ。これは、ハードウェアのアーキテクチャを理解した上でソフトウェアを開発する能力の重要性が増すことを意味する。また、クラウドAIとオンデバイスAIの使い分けも重要なテーマとなるだろう。大規模な学習や膨大なデータ処理はクラウドで行い、リアルタイム性やプライバシーが求められる処理はデバイス上のNPUで行うといった、ハイブリッドなAIシステムの構築が一般的になるかもしれない。

結論として、NECによるNPU搭載・Copilot+ PC対応の新LAVIEの発表は、単なる新製品のニュースではない。パソコンの進化の方向性が、純粋な計算速度の向上から、AI処理能力の向上へと大きく舵を切ったことを示す象徴的な出来事である。これからのコンピュータは、AIがより身近で、よりパーソナルな存在になるためのプラットフォームへと進化していく。システムエンジニアとしてキャリアを築いていく上で、NPUという新しいハードウェアの役割や、オンデバイスAIという技術トレンドを理解しておくことは、将来、より高度で価値のあるシステムを構築するための確かな土台となるだろう。

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