【ITニュース解説】Turning Nepal’s Wasted Hydropower into Digital Gold
2025年09月14日に「Dev.to」が公開したITニュース「Turning Nepal’s Wasted Hydropower into Digital Gold」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
ネパールは、余剰水力発電をデジタルゴールド(仮想通貨)に変える計画を進めている。ブータンの成功例を参考に、強力なコンピューターでマイニングを行い、年間数十億ドルの収益と、技術開発や雇用創出で経済を大きく活性化させようとしている。
ITニュース解説
ネパールでは、豊富な水資源を活用した水力発電によって多くの電力が生み出されている。しかし、送電線や蓄電設備、配電システムといった電力インフラが十分に整備されていないため、生産された電力の一部は活用されずに毎日無駄になっているのが現状だ。特に電力需要の少ない時間帯には、最大で1,400メガワット(MW)もの電力が捨てられている。これは年間で1,000MWに相当し、経済的な観点から見ると大きな機会損失と言える。2020年には、18の民間水力発電所が非効率性により約95.61ギガワット時のエネルギーを失ったという報告もある。この大量の未使用エネルギーは、ネパールの経済発展にとって大きな課題となっていた。
このような状況の中、隣国ブータンの取り組みがネパールにとって大きなヒントとなっている。ブータン政府は2019年から密かに、自国の余剰水力発電を利用してビットコインのマイニング(採掘)を開始した。これは、強力なコンピュータを稼働させてブロックチェーンネットワークの安全性を確保し、その報酬として仮想通貨を得るというシンプルなモデルだ。ブータンはこの方法で数億ドル相当のビットコインを獲得し、外貨準備を強化することに成功している。具体的には、使われていないクリーンな電力を利用し、ASICマイナーと呼ばれる特殊なコンピュータを動かしてブロックチェーンネットワークを支える。その対価として仮想通貨を報酬として得て、最終的にそれを外貨として利用するという流れだ。
ネパールがブータンのこの成功モデルを応用すれば、莫大な経済的恩恵を得る可能性がある。現在ネパールで無駄になっている年間1,000MWの余剰水力発電をビットコインマイニングに活用した場合、年間で約10,000から12,000ビットコインを採掘できると試算されている。現在のビットコイン価格(約116,000ドル)で換算すると、これは年間12億から14億ドルに相当する収入となる。電気料金や運用コストを差し引いたとしても、年間8億から9億ドルの純利益が見込める。この金額は、ネパールの多くの主要な輸出品の総額を上回る規模であり、国の経済に計り知れない貢献をする可能性があるのだ。
この壮大な計画を実現するためには、いくつかの技術的な要素とインフラ投資が必要となる。まず最も重要なのが、ASICマイナーと呼ばれる特殊なコンピュータだ。これらはビットコイン(Antminer S21など)、カスパ(KS5 Proなど)、ライトコインやドージコイン(L7など)といった特定の仮想通貨を効率的に採掘するために特化して設計されている。これらの高性能な機器を大量に設置し、安定して稼働させるためには、専用のデータセンターが不可欠だ。さらに、コンピュータが発する大量の熱を管理するための高度な冷却システムや、電力を安定供給するための送電インフラのアップグレードも求められる。これらのハードウェアや施設への初期投資は、およそ57億ドルから66億ドルと見積もられている。しかし、投資回収期間は約6年から7年と試算されており、この期間を過ぎれば、その後はほぼ純粋な利益として経済に貢献し続けることになる。
この取り組みのメリットは、単に経済的な利益だけにとどまらない。ネパール経済にとって安定したデジタル通貨の流入は、外貨準備を強化し、国際的な経済力を高めることにつながる。また、水力発電というクリーンエネルギーを100%活用して仮想通貨マイニングを行うことで、「クリーンマイニング」のハブとしての国際的なブランドイメージを確立できる。これは、環境意識の高い現代社会において、ネパールの国際的な評価を大きく高めるだろう。さらに、データセンターの建設や運用、ブロックチェーン技術、そして関連する人工知能(AI)分野での新たな雇用創出にも寄与する。そして、マイニングのために構築された高性能なコンピューティングインフラは、将来的にAIの学習やクラウドサービスなど、他の高付加価値な情報技術サービスにも転用できるため、経済の多角化にも貢献する可能性がある。
もちろん、この計画にはリスクと課題も存在する。現在、ネパールでは仮想通貨の取引が禁止されているため、ブータンのように国家主導でマイニングを行うための法整備が必要となる。これは政府や関係機関との密接な連携が求められる。また、仮想通貨の価格は非常に変動しやすく、短期間で大きく上昇したり下落したりする可能性があるため、収益予測には不確実性が伴う。マイニングに使用するASICマイナーは技術の進化が速く、数年で性能が陳腐化するため、定期的な機器の更新とそれに伴う費用も考慮する必要がある。さらに、仮想通貨マイニングは一般的に大量の電力を消費するため、環境への負荷が大きいという負のイメージが世界的に存在する。しかし、ネパールのように水力発電といったクリーンエネルギーを100%利用することで、この負のイメージを払拭し、「グリーン」なマイニングのモデルケースとなることができるだろう。
このビジョンを実現するための具体的なロードマップも描かれている。まずは、100MWの余剰電力を使って小規模なパイロットプロジェクトを開始し、システムや運用体制のテストを行う。この初期段階での経験と知見を基に、3年以内には500MWまで規模を拡大する。そして、6年後には年間1,000MW以上の余剰電力をフル活用した本格的なマイニング体制を確立することを目指す。さらに長期的には、マイニングインフラをAIトレーニングやクラウドサービスといった高性能コンピューティング分野に拡大し、情報技術サービスの多様化を図っていく計画だ。
結論として、ネパールはブータンの成功事例を学び、それをはるかに大規模なスケールで再現するユニークな機会を持っている。毎日無駄になっている水力発電のエネルギーを「デジタルゴールド」に変えることで、ネパール経済に数十億ドルもの新たな価値をもたらし、雇用を創出し、クリーンな仮想通貨マイニングの世界的なリーダーとしての地位を確立できるだろう。これはネパールの未来を大きく変える可能性を秘めた、画期的な取り組みと言える。