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【ITニュース解説】Nepal reverses social media ban as protests turn deadly

2025年09月09日に「TechCrunch」が公開したITニュース「Nepal reverses social media ban as protests turn deadly」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

ネパール政府は、SNSの利用禁止措置を撤回した。この決定は、Z世代が主導する全国的な抗議デモが激化し、国民からの強い反発を受けたことによるものだ。

ITニュース解説

ネパール政府が一度は実施したソーシャルメディア(SNS)の全面的な利用禁止措置を、国民からの強い反発と激化した抗議デモを受けて撤回した。この出来事は、単なる政治的な決定に留まらず、現代社会におけるインターネット技術の役割、そしてそれを制御しようとする試みがどのような技術的攻防を生むのかを具体的に示す事例である。システムエンジニアを目指す上で、このような社会と技術が交差する事象を理解することは、自らが扱う技術の社会的影響力を知る上で非常に重要となる。

政府が特定のウェブサイトやサービスへのアクセスを禁止する際、いくつかの技術的な手法が用いられる。最も一般的で基本的な方法が「DNSブロッキング」である。DNS(ドメインネームシステム)とは、人間が覚えやすいドメイン名(例: techcrunch.com)を、コンピュータが通信に使うIPアドレス(例: 192.0.2.1)という数値の住所に変換する、いわばインターネット上の住所録のような仕組みである。政府は国内のインターネットサービスプロバイダ(ISP)に対し、特定のSNSのドメイン名に対する正しいIPアドレスを返さないよう指示する。これにより、ユーザーがブラウザにURLを入力しても、目的地であるサーバーにたどり着けなくなり、アクセスが失敗する。

さらに強力な手法として「IPブロッキング」がある。これは、SNSのサーバーが持つIPアドレスそのものを特定し、ISPが管理するネットワークの出入り口であるルーターやファイアウォールで、そのIPアドレスへの通信を直接遮断する方法である。住所録をごまかすDNSブロッキングに対し、特定の住所への道を物理的に封鎖するようなイメージだ。しかし、巨大なSNSプラットフォームは世界中に多数のサーバーを持っており、IPアドレスが変更されることもあるため、完全なブロックは容易ではない。より高度な技術としては「ディープ・パケット・インスペクション(DPI)」が挙げられる。これは、インターネット上を流れるデータを小分けにした「パケット」の中身を監視し、特定のアプリケーション(例えばTikTokやInstagram)に特有の通信パターンを検出して遮断する技術である。通信が暗号化されていても、その特徴からサービスを特定できる場合があり、より精密なアクセス制御を可能にする。

一方で、このような政府による情報統制に対して、市民側も技術を用いて対抗する。その代表的な手段が「VPN(仮想プライベートネットワーク)」の利用である。VPNは、利用者のコンピュータと海外にあるVPNサーバーとの間に暗号化された通信トンネルを構築する技術だ。利用者のすべてのインターネット通信はこのトンネルを経由して行われるため、国内のISPからは、利用者がVPNサーバーと通信していることしか分からず、最終的にどのサイトにアクセスしているのかを把握することが困難になる。あたかも海外からインターネットに接続しているかのように振る舞えるため、国内でかけられたDNSブロッキングやIPブロッキングを容易に回避できる。ネパールでの抗議活動においても、多くの市民がVPNを利用してSNSへのアクセスを維持し、情報の共有やデモの組織化を続けたとされている。

このネパールでの一件は、SNSが単なるコミュニケーションツールではなく、世論を形成し、人々を動員する強力な社会基盤となっている現実を浮き彫りにした。政府は社会の不安定化を懸念してその流れを断ち切ろうとしたが、情報へのアクセスを断たれることへの反発が、結果的により大きな抗議活動へとつながった。これは、インターネットと情報への自由なアクセスが、現代人にとって基本的な権利の一部として認識されていることを示している。また、インターネットの遮断は、オンラインでのビジネスや金融取引、情報収集など、経済活動全体に深刻な打撃を与える。サービスの安定稼働、すなわち「可用性」は、システムエンジニアが常に追求すべき重要な品質目標であるが、このような政治的な要因によって、国単位でサービスが利用不能になるというリスクは、グローバルにサービスを展開する企業にとって無視できない課題となる。自社のサービスが特定の国で突然アクセス不能になる事態を想定し、技術的、あるいは事業的な対策を講じる必要性も示唆している。

結論として、このニュースは、ネットワーク、セキュリティ、暗号化といった技術が、単にコンピュータシステムを動かすためのものではなく、社会のあり方や人々の行動、国家の政策にまで深く関わっていることを示している。システムエンジニアを目指す者は、コードを書いたりサーバーを構築したりするスキルだけでなく、自らが開発・運用するシステムが社会の中でどのような意味を持つのか、どのような力を行使しうるのかを理解する視点を持つことが不可欠である。技術は中立的な道具であると同時に、使い方次第で社会を大きく動かす力となり得る。その力を理解し、責任ある技術者として社会に貢献していくことが、これからの時代に求められるエンジニア像と言えるだろう。

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