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【ITニュース解説】ネパールでソーシャルメディア禁止措置を発端とする大規模抗議が起き死者が発生、VPN登録数は8000%も増加

2025年09月09日に「GIGAZINE」が公開したITニュース「ネパールでソーシャルメディア禁止措置を発端とする大規模抗議が起き死者が発生、VPN登録数は8000%も増加」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

ネパール政府が主要SNSへのアクセスを国内から遮断。これに反発した国民による大規模な抗議活動が起き、死者も発生した。規制されたサービスにアクセスするため、通信を暗号化して中継するVPNの利用者が8000%も急増した。

ITニュース解説

ネパールで政府が主要なソーシャルメディアへのアクセスを国内から遮断するよう命じ、それに反発した大規模な抗議活動が発生した。この出来事は、現代社会におけるインターネットの重要性と、それを支える技術的な仕組みを理解する上で非常に示唆に富む事例である。特に、この規制への対抗策としてVPN(Virtual Private Network)の利用が爆発的に増加した点は、システムエンジニアを目指す者にとって注目すべきポイントだ。

まず、政府がどのようにして特定のウェブサイトへのアクセスを遮断するのか、その技術的な仕組みから見ていく必要がある。一般的に、このようなアクセス遮断は、国内のインターネットサービスプロバイダー(ISP)に対して指示を出すことで実行される。ISPは、家庭や企業にインターネット接続サービスを提供する通信事業者であり、ユーザーからのすべての通信はISPが管理するネットワークを経由する。そのため、ISPの段階で特定の通信をブロックすることが可能となる。最も一般的な遮断方法は「DNSブロッキング」と「IPブロッキング」である。DNS(Domain Name System)とは、私たちが普段使う「facebook.com」のようなドメイン名を、コンピューターが理解できる「157.240.22.35」といったIPアドレスに変換する、いわばインターネット上の住所録のようなシステムだ。DNSブロッキングでは、ISPが管理するDNSサーバーにおいて、遮断対象のドメイン名への問い合わせがあった際に、意図的に間違ったIPアドレスを返したり、応答しないように設定する。これにより、ユーザーは目的のサイトにたどり着けなくなる。一方、IPブロッキングはより直接的な方法で、対象サービスのサーバーが持つIPアドレスそのものへの通信を、ISPのネットワーク機器(ルーターやファイアウォール)で遮断する。これらの方法は、ISP側で比較的容易に実装できるため、国家レベルでのインターネット検閲によく用いられる手法である。

このようなアクセス遮断に対して、ネパールの人々が対抗策として用いたのがVPNである。VPN登録者数が8000%も増加したという事実は、この技術がいかに有効な回避手段であったかを物語っている。VPNは、直訳すると「仮想専用線」となり、本来は公衆網であるインターネット上に、あたかも専用線のような安全なプライベートな通信経路を仮想的に構築する技術だ。VPNを利用すると、ユーザーのデバイスと海外などに設置されたVPNサーバーとの間に、暗号化された通信のトンネルが作られる。ユーザーが行うすべてのインターネット通信は、まずこの暗号化されたトンネルを通ってVPNサーバーに送られる。そして、VPNサーバーがユーザーの代わりに目的のウェブサイト(例えばFacebook)にアクセスし、その結果を再び暗号化してユーザーのデバイスに送り返す。この仕組みがアクセス遮断を回避する鍵となる。ISPから見ると、ユーザーは特定のVPNサーバーと暗号化された通信を行っているようにしか見えず、その通信の中身や最終的なアクセス先がFacebookであることは分からない。また、Facebookのサーバー側から見ても、アクセス元はネパール国内のユーザーではなく、VPNサーバーが設置されている国のIPアドレスになる。結果として、ISPによるDNSブロッキングやIPブロッキングの影響を受けることなく、規制対象のソーシャルメディアにアクセスすることが可能になるのだ。

この一連の出来事は、システムエンジニアを目指す上で重要な複数の視点を提供してくれる。第一に、ネットワークインフラが単なる技術基盤ではなく、社会や政治と密接に結びついているという現実である。インターネットのアクセス性は、情報の自由や表現の自由といった基本的な権利に直結しており、エンジニアが構築・運用するシステムが、意図せずともそうした権利を制限、あるいは保護する役割を担う可能性があることを示している。第二に、技術が持つ二面性だ。VPNは元来、企業の拠点間通信やリモートワークにおいて、通信の安全性を確保するためのセキュリティ技術として発展してきた。しかし、今回の事例のように、検閲を回避し、情報への自由なアクセスを確保する手段としても強力な機能を発揮する。一つの技術が、使われる文脈によって全く異なる価値を持つことを理解するのは重要である。最後に、インフラの安定性と拡張性(スケーラビリティ)の問題である。VPNサービスの登録者数が8000%も急増するということは、サービス提供者側から見れば、サーバーリソース、ネットワーク帯域、IPアドレスの確保など、インフラへの負荷が短期間で爆発的に増加したことを意味する。このような予期せぬトラフィックの急増に耐えうる、堅牢で柔軟なシステムをいかに設計し、運用するかは、システムエンジニアにとって常に問われる課題である。

結論として、ネパールでのソーシャルメディア遮断とそれに伴うVPN利用の急増は、単なる海外のニュースとして片付けるべきではない。インターネットのアクセス制御の仕組み、それを回避する暗号化技術、そしてそれらが社会に与えるインパクトを具体的に示す生きた教材である。ネットワーク、セキュリティ、サーバーインフラといった技術が、現実世界でどのように機能し、人々の生活にどれほど大きな影響を及ぼすのか。この事例は、技術の力を深く理解し、その社会的責任を考えるきっかけとなるだろう。

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