専用線 (センヨウセン) とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説
専用線 (センヨウセン) の読み方
日本語表記
専用線 (センヨウセン)
英語表記
leased line (リースドライン)
専用線 (センヨウセン) の意味や用語解説
専用線とは、通信事業者が提供する特定の二拠点間を接続するためだけに占有された通信回線である。公衆網であるインターネットとは異なり、契約者だけが排他的に利用できる点が最大の特徴だ。この占有性により、第三者による盗聴や不正アクセスのリスクが極めて低く、非常に高いセキュリティを確保できる。また、他の利用者の通信トラフィックの影響を受けないため、常に安定した通信速度と品質が保証される。これは帯域保証型サービスと呼ばれ、通信の遅延やゆらぎが許されないミッションクリティカルなシステムの通信基盤として重用される。その一方で、回線を占有することから利用コストは非常に高額になる傾向がある。 専用線の利点は主に、セキュリティ、品質、信頼性の三点に集約される。第一に、セキュリティの高さは物理的または論理的な独立性に由来する。専用線は、契約した二つの拠点を文字通り一本の線で結ぶイメージであり、インターネットのような不特定多数が利用するネットワークとは完全に切り離されている。このようなネットワークは閉域網と呼ばれ、外部からの侵入経路が存在しないため、通信内容の機密性を極めて高いレベルで維持できる。個人情報や金融取引データ、企業の基幹システムに関する情報など、漏洩が許されない重要情報をやり取りする際に最適な選択肢となる。第二に、通信品質の安定性が挙げられる。インターネット回線はベストエフォート型と呼ばれ、表示されている通信速度は理論上の最大値であり、実際の速度はネットワーク全体の混雑状況によって変動する。しかし、専用線は契約した帯域が常に保証されている帯域保証型であるため、時間帯や他の利用者の影響を受けることなく、常に一定のパフォーマンスを発揮する。これにより、映像伝送や大規模なデータ同期、リアルタイム性が求められるシステムにおいて、予測可能で安定した通信環境を実現できる。第三の利点は、高い信頼性である。通信事業者は専用線サービスに対してSLA(Service Level Agreement)と呼ばれる品質保証制度を設けている。SLAでは、回線の稼働率や障害発生時の復旧時間などが具体的に保証されており、万が一のトラブル発生時にも迅速な対応が期待できる。企業の事業継続性を支えるインフラとして、極めて高い可用性が求められる場面でその価値を発揮する。 一方で、専用線にはいくつかのデメリットも存在する。最も大きな課題はコストである。回線を物理的または論理的に完全に占有するため、月額利用料はインターネット回線などと比較して格段に高くなる。料金は拠点間の距離や契約帯域幅に比例して増加する傾向があり、長距離の接続や広帯域が必要な場合はさらに高額になる。また、柔軟性に欠ける点も考慮が必要である。専用線は基本的に1対1の接続を前提としているため、複数の拠点を網の目のように接続する多拠点ネットワークを構築しようとすると、拠点ごとに回線契約が必要となり、コストと管理の複雑さが飛躍的に増大する。拠点の新設や移転、帯域の増減といった変更にも、工事や手続きが必要となり、時間と追加費用がかかる場合が多い。導入までのリードタイムも、物理的な回線敷設が必要な場合には数ヶ月単位で要することがあり、迅速なネットワーク構築には向かない。これらの特性から、専用線の用途は限定的であり、高いセキュリティと安定した品質がコストを上回る価値を持つ特定の分野で利用される。具体的な例としては、企業のデータセンターと本社を結ぶ基幹ネットワーク、金融機関の勘定系システムや取引システム、放送局のスタジオ間を結ぶ映像・音声伝送、そして近年では、パブリッククラウドサービスと企業拠点を閉域網で接続するためのダイレクト接続サービスなどが挙げられる。 専用線と比較検討される技術として、VPN(Virtual Private Network)が存在する。特にインターネットVPNは、公衆網であるインターネット上に暗号化技術を用いて仮想的なトンネルを構築し、安全な通信経路を確保する手法である。インターネット回線を利用するため、専用線に比べて圧倒的に低コストで導入できる利点があるが、通信品質はインターネット網の混雑状況に左右されるベストエフォート型であり、セキュリティも公衆網を経由する以上、専用線ほどの強固さはない。また、IP-VPNや広域イーサネットといったサービスもある。これらは通信事業者が独自に構築・運用する閉域IP網を利用するもので、インターネットVPNよりは高いセキュリティと安定した品質を提供する。多拠点接続を効率的に実現できる設計になっており、専用線とインターネットVPNの中間的な選択肢として広く利用されている。専用線は、これらの代替技術と比較して、コストや柔軟性では劣るものの、セキュリティと品質において最高レベルの性能を提供する、いわば究極のネットワーク接続形態と位置づけられる。システムエンジニアは、構築するシステムが要求するセキュリティレベル、品質、コスト、拡張性といった要件を総合的に評価し、これらの選択肢の中から最適なネットワークソリューションを選定する能力が求められる。