【ITニュース解説】The Other Side of OpenAI 12 Surprising Stories You Haven’t Heard

2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「The Other Side of OpenAI 12 Surprising Stories You Haven’t Heard」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

OpenAIは、表向きの「オープン」な姿勢とは裏腹に、資金調達の苦労、PR戦略としての情報操作、著作権侵害の学習データ使用、環境負荷の無視、社内対立、退職者への厳しい制約など、知られざる多くの問題と複雑な実態を抱えていた。

ITニュース解説

OpenAIという名前を聞いた時、多くの人は「オープン」という言葉に、技術を公開し、人類全体の利益のためにAIを開発するという崇高なイメージを抱くだろう。しかし、最近明らかになった事実は、この巨大なAI企業が歩んできた道のりが、一般に知られているイメージとは大きく異なる、複雑で驚くべき側面を数多く含んでいることを示している。システムエンジニアを目指す皆さんにとって、これは技術開発の裏側にある現実や、企業が直面するジレンマを理解する貴重な機会となるだろう。

まず、「オープン」という名前そのものが、当初から信念よりもブランディングの要素が強かったという事実がある。創設者たちは、大手企業との差別化を図るため、この響きの良い言葉を選んだ。しかし、内部では、目標達成後にはそのオープンな姿勢を縮小することも議論されており、都合の良い時にのみオープンである、という側面が最初から存在していたのである。

資金調達の面でも、初期の約束は必ずしも守られなかった。共同創設者の一人であるイーロン・マスク氏が公約した10億ドルという巨額の資金提供は、実際には約1億3000万ドルしかOpenAIに届かず、マスク氏自身からの拠出はさらに少なかった。この資金不足は組織を財政的危機に追い込み、サム・アルトマン氏が新たな資金源を必死に探す事態に陥った。

このような財政的プレッシャーが、2019年の営利化への転換に繋がった。表向きは、ミッションと資金のバランスを取るための革新的な試みとされたが、実態は、非営利モデルでは大手IT企業と競い合うための数十億ドル規模の資金調達が不可能だったため、生き残りのための「命綱」として営利部門「OpenAI LP」が設立された。この営利部門の「キャップ付き利益」モデルも、投資家へのリターンは100倍を上限とされたが、例えば1000万ドルの投資が10億ドルにもなり得る計算から、批評家からは事実上「無制限」であると指摘された。

技術開発の広報戦略においても、巧妙な一面が見られた。2019年にOpenAIがGPT-2モデルの危険性を強調し、安全上の理由から即時公開を控えた時、世界中のメディアが大きく報じた。しかし、多くの研究者は、その危険性が誇張されており、当時の広報責任者による巧みな宣伝活動であると見ていた。この戦略は見事に成功し、OpenAIの名は一躍有名になったのである。

社内文化も一枚岩ではなかった。サム・アルトマン氏自身が、組織内には「研究探求者」「安全提唱者」「スタートアップ志向の構築者」という三つの派閥が存在し、深刻な「部族間戦争」が起きかねないと警告するほど、方向性を巡る深い対立があったという。

そして、現在OpenAIの代名詞ともなっているChatGPTのローンチも、意外な経緯を辿った。その華々しいデビューは、緻密に計画されたものではなく、競合他社であるAnthropicのチャットボット発表に先んじるため、2022年の感謝祭直後にわずか2週間で急ピッチで「研究プレビュー」として公開された。最大のパートナーであるMicrosoftさえも、この突然の発表に驚き、不満を抱いたと報じられている。

AIの学習に不可欠な「データ」の収集方法も、物議を醸す点である。GPT-3のトレーニングには「Books2」という秘密のデータセットが使われ、これには海賊版の書籍が含まれていたとされている。さらにGPT-4では、従業員がYouTube動画を文字起こししたり、明示的な「スクレイピング禁止」の指示がない限り、インターネット上のあらゆるデータを収集したりして、膨大なデータが利用された。これは著作権やプライバシーといった倫理的な問題を提起する。

OpenAIが掲げる「AI安全性」の概念も、初期にはその範囲が限定的だった。当初は、人類に終焉をもたらすような「存在リスク」に焦点が当てられ、差別や偏見といったAIが社会に与える日常的な害は、幹部によって「我々の役割ではない」と退けられていた。しかし、後にこの認識は変化していくことになる。

大規模なAIモデルのトレーニングには、隠れた環境コストも伴う。例えば、GPT-4のトレーニングには、干ばつ中のアイオワ州にあるMicrosoftのデータセンターで、わずか1ヶ月間に約1150万ガロンもの水が消費された。驚くべきことに、このような環境への影響は、アルトマン氏を含む経営陣の会議でほとんど議論されることがなかったとされている。

OpenAI LPが設立される前のコードネームが「SummerSafe LP」であったことも、その裏側を物語っている。これは人気アニメ『リック・アンド・モーティ』のあるエピソードから引用されており、Summerを守るための車が最終的に殺人や拷問に訴えるという内容である。これは、AIシステムが善意の目標を、意図しない危険な結果に歪めてしまう可能性への皮肉な言及であった。

さらに、退職する従業員への対応も問題となった。OpenAIは、退職者に対し、厳格な守秘義務契約(Nondisparagement Agreement)への署名を求め、これを拒否した場合には付与済みの株式(Vested Equity)を失うリスクを負わせた。これにより、従業員は事実上、退職後も生涯にわたって会社について語ることを禁じられた。アルトマン氏は後にこの慣行を知らなかったと釈明したが、彼自身が、会社にこれらの権利を付与する書類に1年前に署名していた記録がある。

これらの話は、OpenAIが世間に示す「オープン」というイメージとは裏腹に、資金繰りの苦悩、社内の対立、倫理的にグレーなデータ収集、環境への影響の軽視、そして従業員への圧力といった、多くの複雑で時には物議を醸す側面を抱えながら成長してきたことを示している。企業が理想と現実の狭間でどのように意思決定をし、どのような結果を生み出してきたのかを理解することは、未来のシステムエンジニアにとって、技術開発と社会との関わりを深く考える上で非常に重要だろう。

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