【ITニュース解説】プライベートIPアドレスに「192.168.x.x」が使われるようになった理由とは?
2025年09月09日に「GIGAZINE」が公開したITニュース「プライベートIPアドレスに「192.168.x.x」が使われるようになった理由とは?」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。
ITニュース概要
家庭やオフィスのネットワークで使われるプライベートIPアドレスに「192.168.x.x」が多用されるのは、国際的な標準で定められたプライベート用のアドレス範囲の一つだからだ。特に小規模ネットワークに適した範囲であるため、一般向けルーターで標準的に採用され広く普及した。(119文字)
ITニュース解説
インターネットに接続するパソコンやスマートフォンには、IPアドレスと呼ばれる、ネットワーク上の住所にあたる一意の番号が割り当てられる。このIPアドレスには、世界中のどこからでもアクセスできる「グローバルIPアドレス」と、特定の閉じられたネットワーク内、例えば家庭やオフィスの中だけで使われる「プライベートIPアドレス」の二種類が存在する。特に家庭用のWi-Fiルーターなどを設定する際、「192.168.x.x」という形式のプライベートIPアドレスを目にすることが非常に多い。これは偶然ではなく、明確な理由に基づいている。
そもそも、なぜプライベートIPアドレスが必要になったのかという背景には、インターネットの爆発的な普及がある。当初、IPアドレスの規格であるIPv4では、約43億個のアドレスが利用可能だった。しかし、世界中のデバイスがインターネットに接続するようになると、この数は全く足りなくなった。全ての機器にグローバルIPアドレスを割り当てると、あっという間に枯渇してしまう。この問題を解決するための一つの手段として、プライベートIPアドレスが考案された。家庭やオフィス内のネットワークではプライベートIPアドレスを使い、インターネットへ接続する際には、ルーターが持つ一つのグローバルIPアドレスを共有する仕組みである。この変換技術はNATと呼ばれ、IPアドレスの消費を大幅に節約することに貢献した。
プライベートIPアドレスとして自由に使ってよいアドレス範囲は、IETFという標準化団体が発行するRFC 1918という文書で定められている。この文書では、以下の三つのブロックがプライベート用途として予約された。
10.0.0.0 ~ 10.255.255.255 172.16.0.0 ~ 172.31.255.255 192.168.0.0 ~ 192.168.255.255
これらの範囲が選ばれたのは、かつてIPアドレスが「クラス」という概念で管理されていた時代背景が関係している。当時、IPアドレスはネットワークの規模に応じてクラスA、クラスB、クラスCなどに分類されていた。クラスAは非常に大規模なネットワーク用で約1677万台、クラスBは中規模で約6万5千台、クラスCは小規模で254台の機器を接続できる設計だった。上記のプライベートIPアドレス範囲は、それぞれクラスA、B、Cのブロックから一つずつ選ばれている。
では、なぜこの三つの選択肢の中から「192.168.x.x」が家庭や小規模オフィスで広く普及したのだろうか。最大の理由は、そのネットワーク規模の適切さにある。「192.168.x.x」はクラスCの範囲であり、一つのネットワークあたり最大254台のデバイスを管理できる。家庭や小規模なオフィスで利用する機器の数を考えると、この規模は非常に手頃で管理しやすい。逆に、クラスAの「10.x.x.x」は巨大すぎるため、主に大規模な企業ネットワークで内部的に利用されることが多い。クラスBの「172.16.x.x」も家庭用としてはやや規模が大きく、中規模以上の組織で使われる傾向がある。
もう一つの重要な理由は、歴史的な経緯と事実上の標準化である。インターネットが一般家庭に普及し始めた頃、ブロードバンドルーターのメーカーは、製品の初期設定として利用するプライベートIPアドレスの範囲を決める必要があった。その際、多くのメーカーが小規模ネットワークに最適な「192.168.x.x」の範囲を採用した。特に「192.168.0.1」や「192.168.1.1」がルーター自身のIPアドレスとして設定されることが多かった。あるメーカーがこの設定で製品を発売すると、ユーザーやサポート担当者の間でそのアドレスが「標準的なもの」として認知されるようになる。後発のメーカーも、ユーザーの混乱を避け、既存のネットワーク機器との互換性を保つために、同様のアドレス範囲を採用するようになった。こうして「192.168.x.x」は、特定の誰かが強制したわけではなく、市場の動向によって事実上の標準、すなわちデファクトスタンダードとして定着していったのである。
結論として、「192.168.x.x」がプライベートIPアドレスとして広く使われているのは、第一に家庭や小規模オフィスという環境に適した技術的なサイズであったこと、そして第二に、初期のネットワーク機器メーカーが採用したことで市場に広まり、それが事実上の標準となった歴史的経緯によるものである。普段何気なく目にしているこの数字には、IPアドレス枯渇という課題への対策と、技術が社会に普及していく過程が凝縮されていると言える。