【ITニュース解説】React Nativeで実現できないことはあるのか?

2025年09月08日に「Zenn」が公開したITニュース「React Nativeで実現できないことはあるのか?」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

一つのコードでiOSとAndroidアプリを開発できるReact Native。一見制約がありそうだが、ネイティブ(iOS/Android)の知識があれば実現できないことはないとされる。ネイティブ機能を呼び出すことで、プラットフォーム固有の複雑な処理も実装可能だ。

ITニュース解説

スマートフォンアプリ開発には、一つのプログラムコードでiOSとAndroidの両OSに対応するアプリを作る「クロスプラットフォーム開発」という手法があり、その代表的な技術が「React Native」である。Web開発で広く使われるJavaScriptという言語を基盤にしているため、多くのエンジニアにとって参入しやすく、近年非常に人気が高まっている。しかし、この技術の採用を検討する際、多くの人が「React Nativeでは実現できない機能があるのではないか」という懸念を抱く。

結論を先に述べると、iOSやAndroidのネイティブプラットフォームに関する実装知識があれば、React Nativeで実現できないことは基本的に存在しない。なぜなら、React Nativeは単にJavaScriptを動かすだけの技術ではなく、スマートフォンのOSが持つ本来の機能、すなわち「ネイティブ機能」を直接呼び出すための強力な橋渡し機能を持っているからである。この仕組みを理解することが、React Nativeの真の可能性を把握する鍵となる。

スマートフォンアプリには、OSの深い階層と連携しなければ実現できない高度な機能が求められることがある。例えば、最新OSにのみ搭載されたカメラの特殊効果、特定のハードウェアセンサーの精密な制御、あるいは非常に高い処理性能が要求されるグラフィック処理などがそれに当たる。React Nativeは標準で多くの一般的な機能を提供しているが、こうした最先端あるいは特殊な機能をすべて網羅しているわけではない。ここで重要になるのが「ネイティブモジュール」という仕組みである。ネイティブモジュールとは、JavaScriptの世界とネイティブの世界、つまりiOSではSwiftやObjective-C、AndroidではKotlinやJavaで書かれたコードの世界を繋ぐためのプログラム部品を指す。開発者は、実現したい機能を各OSのネイティブ言語で個別に実装し、その機能をJavaScriptから呼び出せるようにするための「ブリッジ」と呼ばれる接続部分を作成する。これにより、React Nativeアプリは、あたかも最初からその機能を持っていたかのように、ネイティブのコードを自由に実行できる。つまり、React Nativeの標準機能にないものであっても、ネイティブ開発のスキルさえあれば、開発者自身が機能を追加して限界を乗り越えることが可能なのだ。

React Nativeでの開発を始める際、多くの初心者は「Expo」というツールセットを利用することが多い。Expoは、開発環境の構築を簡素化し、ネイティブコードを直接意識することなく開発を進められるようにする便利なフレームワークである。しかし、その手軽さと引き換えに、標準状態ではネイティブコードの追加や変更ができないという制約がある。このため、「Expoを使っているとネイティブ機能の追加はできない」と誤解されがちだが、これも解決策が存在する。プロジェクトが進行し、Expoの提供する機能だけでは不十分になった場合、「prebuild」というコマンドを実行することで、Expoの管理から離れ、ネイティブコードを直接編集できるプロジェクト構造へと変換できる。このプロセスを経ることで、開発の初期段階ではExpoの利便性を享受しつつ、必要になったタイミングでネイティブモジュールを導入するという柔軟な開発スタイルが可能になる。

さらに、React Nativeの技術そのものも進化を続けている。従来、JavaScriptとネイティブ間の通信はパフォーマンス上の課題となることがあった。この課題を解決するため、「New Architecture」と呼ばれる新しい設計思想が導入され、その中核技術として「Turbo Modules」と「Fabric」が登場した。「Turbo Modules」は、ネイティブモジュールをより効率的に読み込み、通信性能を向上させる仕組みである。一方、「Fabric」はUIの描画処理を刷新し、より滑らかなアニメーションや応答性の高いユーザーインターフェースを実現する。これらの新技術は、JavaScriptとネイティブの連携をこれまで以上に高速かつ効率的にし、React Nativeで開発できるアプリの品質をネイティブアプリと遜色ないレベルにまで引き上げている。この新しいアーキテクチャの導入を補助するのが「Codegen」というツールで、JavaScriptの型情報からネイティブ連携に必要な定型コードを自動生成し、開発者の負担を軽減する。

以上のことから、React Nativeは単に手軽にクロスプラットフォーム開発ができるだけの技術ではない。ネイティブプラットフォームの能力を最大限に引き出すための拡張性を備えた、非常に強力なフレームワークなのである。React Nativeを真に使いこなすためには、JavaScriptの習熟にとどまらず、その先にあるiOSとAndroidのネイティブ開発の世界への理解が重要となる。したがって、React Nativeで開発を進める上で「できないこと」に直面したとしても、それは技術的な限界ではなく、ネイティブの知識を学ぶことで乗り越えられる新たな挑戦と捉えることができるだろう。