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Objective-C(オブジェクティブシー)とは | 意味や読み方など丁寧でわかりやすい用語解説

Objective-C(オブジェクティブシー)の意味や読み方など、初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

作成日: 更新日:

読み方

日本語表記

オブジェクティブシー (オブジェクティブシー)

英語表記

Objective-C (オブジェクティブシー)

用語解説

Objective-Cは、C言語にオブジェクト指向プログラミングの機能を追加した、汎用的なプログラミング言語である。特にApple社のmacOSおよびiOSといったプラットフォームでのアプリケーション開発において、かつては中心的な役割を担っていた。C言語が持つシステムの低レベルな操作能力や高い実行効率と、オブジェクト指向がもたらす高い抽象度と再利用性を兼ね備えている点が特徴である。この言語は、1980年代にSmalltalk言語の思想に強く影響を受けて開発され、AppleがNeXT社を買収した際に同社の主要言語として採用されたことで、Appleのエコシステム内で広く普及した。現在では後継言語のSwiftが主流となりつつあるものの、多くの既存のソフトウェア資産やフレームワークがObjective-Cで書かれているため、その知識はシステムエンジニアにとって依然として重要である。

Objective-Cの最も根幹的な特徴は、C言語の厳密なスーパーセットであることだ。これにより、C言語で書かれた関数やライブラリ、データ構造をObjective-Cのコード内にそのまま組み込んで利用できる。ポインタ操作、構造体、共用体、プリプロセッサディレクティブなど、C言語の全ての機能がObjective-Cでも利用可能であり、必要に応じてシステムの低レベルな部分に直接アクセスできる柔軟性を持つ。

オブジェクト指向の側面では、クラス、オブジェクト、継承、カプセル化、ポリモーフィズムといった基本的な概念を全てサポートする。しかし、他の多くのオブジェクト指向言語とは異なり、Objective-Cは「メッセージング」という独特のオブジェクト間通信メカニズムを採用している。これは角括弧 [receiver messageName:argument1 argument2:argument2] で表現され、receiver オブジェクトに対して messageName という命令と引数を送る形式をとる。このメッセージングは、実行時にどのメソッドが呼び出されるかを動的に解決する「動的ディスパッチ」の特性を持つ。例えば、あるオブジェクトに特定のメッセージを送ったとき、そのオブジェクトのクラス定義に該当するメソッドが存在しなくても、実行時に動的に追加されたメソッドが呼び出される、あるいはメッセージを処理できない場合はエラーを発生させる、といった柔軟な挙動が可能となる。このような動的な性質は、実行時の変更や拡張が容易であるというSmalltalkの強力な利点を継承している。

また、Objective-Cには、既存のクラスに新たなメソッドを追加するための「カテゴリ(Categories)」や、複数のクラスが共通して実装すべきメソッドの集合を定義する「プロトコル(Protocols)」といった特徴的な機能が存在する。カテゴリは、元のクラスのソースコードを変更することなく、その機能を拡張できるため、Appleが提供するシステムフレームワークのクラスを、アプリケーション固有の要件に合わせてカスタマイズする際などに非常に有用である。プロトコルは、JavaのインターフェースやC++の純粋仮想クラスに似ており、特定の動作を保証するための契約を定義する役割を果たす。

Appleプラットフォームの開発において、Objective-CはCocoa(macOS)およびCocoa Touch(iOS)という強力なフレームワーク群と密接に連携する。これらのフレームワークは、GUIの構築、イベント処理、データ管理、ネットワーク通信など、あらゆるアプリケーション開発に必要な機能を提供する。中でもFoundationフレームワークは、数値、文字列、配列、辞書といった基本的なデータ型をオブジェクトとして扱えるように提供し、ファイルシステムやネットワーク通信、スレッド処理など、OSレベルの基本的なサービスへのインターフェースを提供する、Objective-Cプログラミングの根幹を成す。

メモリ管理に関して、Objective-Cは過去に「手動参照カウント(Manual Reference Counting, MRC)」という方式を採用していた。これは、開発者がオブジェクトを使用する際に retain メソッドで参照カウントを増やし、使用しなくなった際に release メソッドで減らし、参照カウントがゼロになった時点でオブジェクトが自動的に解放されるという仕組みである。しかし、この手動での管理は複雑でエラーが発生しやすく、メモリリーク(解放忘れ)や不正なメモリアクセス(解放済みオブジェクトへのアクセス)などのバグの温床となることが多かった。この課題を解決するため、Objective-C 2.0から「自動参照カウント(Automatic Reference Counting, ARC)」が導入された。ARCでは、コンパイラがソースコードを解析し、適切な retainreleaseautorelease の呼び出しを自動的に挿入する。これにより、開発者はメモリ管理の詳細を意識することなく、安全かつ効率的にオブジェクトのライフサイクルを制御できるようになった。ARCはガベージコレクションとは異なり、コンパイル時に参照カウント操作が決定されるため、実行時のオーバーヘッドが少なく、パフォーマンスの予測が容易であるという利点がある。

2014年にAppleは、Objective-Cに代わる新しい開発言語としてSwiftを発表した。Swiftは、より安全で現代的な構文、高いパフォーマンス、そして開発の生産性向上を目指して設計された。現在のAppleプラットフォーム開発の主流はSwiftに移行しつつあるが、Objective-Cで書かれた既存の膨大なアプリケーションやライブラリ資産は依然として活用されており、その重要性は失われていない。Objective-CとSwiftは、一つのプロジェクト内で共存し、相互に呼び出し合うことができるように設計されている。例えば、SwiftのコードからObjective-Cのクラスやメソッドを呼び出したり、逆にObjective-CのコードからSwiftのクラスやメソッドを呼び出したりすることが可能である。この相互運用性により、企業や開発チームは既存のObjective-C資産を無理なく活用しながら、新しい部分をSwiftで開発するという段階的な移行戦略をとることができる。したがって、システムエンジニアがAppleプラットフォームにおける既存システムを保守・拡張したり、新しいシステムを開発したりする際には、Objective-Cの知識は不可欠な基礎となる。

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