【ITニュース解説】Reading partitioned Delta table with Polars
2025年09月10日に「Dev.to」が公開したITニュース「Reading partitioned Delta table with Polars」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Polarsで分割されたDelta Lakeデータを読み込む際、LazyFrameとscan_deltaの組み合わせが最も速く、メモリ効率も良いと判明した。以前は最適でなかったこの方法が、今では最も便利で最適な選択肢だ。
ITニュース解説
データ処理の分野では、大量のデータをいかに効率良く、そして高速に扱うかが常に重要な課題となっている。特に現代のシステムでは、ペタバイト級のデータが日常的に生成・蓄積されており、これらのデータを分析し、ビジネス上の意思決定に役立てるためには、高性能なデータ処理技術が不可欠だ。今回のニュース記事では、Pythonというプログラミング言語を使って、そのような大量データを効率的に読み込むための具体的な方法とその性能比較が取り上げられている。
まず、記事の核となる技術要素について説明する。「Delta Lake(デルタレイク)」は、データレイク、つまり生データや構造化されていないデータを大量に保管するための貯蔵庫において、信頼性と高性能なトランザクション機能を提供するオープンソースのストレージフォーマットである。従来のデータレイクはデータの一貫性や品質の管理が難しいという課題があったが、Delta Lakeはデータベースのようにデータの更新履歴を管理したり、途中でエラーが起きてもデータを元に戻せる(アトミックトランザクション)といった特徴を持ち、より信頼性の高いデータプラットフォームを構築する上で非常に有効な技術だ。
そして、このDelta Lakeに保存されたデータを効率的に読み出すために使われるのが、「Polars(ポーラーズ)」というPythonのデータ処理ライブラリである。Polarsは、Pythonのデータ処理ライブラリとして有名なPandasに似た操作性を持つが、Rustという別のプログラミング言語で実装されているため、非常に高速に動作するという特徴がある。大量のデータを扱う際に、Pandasでは処理速度やメモリ使用量がボトルネックになることが少なくないが、Polarsはその問題を解決する強力な選択肢として注目されている。
今回の記事のもう一つの重要なキーワードは、「パーティション化されたデータ」だ。これは、大量のデータを特定の基準(例えば、日付、地域、製品カテゴリなど)でフォルダやファイルに分割して保存する手法を指す。ちょうど、電話帳が「あ行」「か行」といった形で分割されているように、必要なデータがどこにあるかを素早く特定し、その部分だけを読み込むことで、データ全体の読み込み時間を大幅に短縮し、メモリの使用量も抑えることができる。例えば、1年分のデータが保存されているとして、特定の1日分のデータだけが必要な場合、パーティション化されていれば、その1日分のデータが保存されているフォルダやファイルだけを読み込めばよい。
記事では、Polarsを使ってパーティション化されたDelta Lakeデータを読み込む際、どのようなアプローチが最も効率的かを検証している。過去には、Polarsのscan_deltaというメソッドが、パーティション化されたデータに対して最適ではないという見解もあったようだが、Polarsライブラリは近年急速に進化しているため、その性能が改善されているかどうかが今回の検証の目的だった。
検証では、二つの異なるサイズのデータセットが用意された。一つは非常に小さい(約700KB)もの、もう一つはやや大きい(約79MB)ものだ。これら二つのデータセットは、それぞれ三つのほぼ均等なチャンクにパーティション化されている。そして、以下の三つの異なるアプローチでデータを読み込み、メモリ使用量と実行時間を比較している。
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LazyFrame(レイジーフレーム)と
scan_deltaメソッドの組み合わせ: Polarsには「DataFrame(データフレーム)」と「LazyFrame」という二つの主要なデータ構造がある。DataFrameは、データを読み込んだり操作したりするたびに、その場で処理を実行し、結果をメモリに保持する「即時評価」の仕組みだ。一方、LazyFrameは、データの読み込みや加工といった一連の操作を、すぐに実行せずに「計画」として蓄積しておき、最終的に結果が必要になった時(例えば、データを画面に表示したりファイルに保存したりする時)に、その計画をまとめて一度に最適化して実行する「遅延評価」の仕組みである。このアプローチでは、LazyFrameのscan_deltaメソッドを使ってデータを読み込み、後からフィルタリング(必要なデータだけを抽出する処理)を行う。この方法はPolarsを使う上で最も自然で便利なアプローチとされている。 -
DataFrameと
read_deltaメソッドの組み合わせ: こちらはPolarsの通常のDataFrameを使ってread_deltaメソッドでデータを読み込むアプローチだ。LazyFrameとは異なり、データを読み込む際に全てのデータをメモリに展開しようとする「即時評価」の特性を持つ。 -
Delta Lakeの低レベルAPIとPyArrow(パイアロー)オプションの利用: このアプローチでは、Polarsを直接使うのではなく、Delta Lakeが提供するより低レベルなAPIを直接利用し、データを読み込む際に「PyArrow」という別のライブラリのオプションを使って、どのパーティションを読み込むかを明示的に指定している。これは、より細かくデータ読み込みを制御できるが、コードが複雑になる傾向がある。
これらの検証の結果は非常に興味深いものだった。最も驚くべきことに、LazyFrameとフィルタリングを組み合わせるアプローチが、最も高速で、かつ最もメモリ効率が良いという結果が出たのだ。具体的な数値を見ると、LazyFrameによるアプローチは実行時間が約0.282秒、メモリ使用量が約26.8MBだったのに対し、DataFrameによるアプローチでは実行時間が約0.653秒、メモリ使用量が約967.9MB、DeltaTable APIによるアプローチでは実行時間が約0.417秒、メモリ使用量が約696.5MBという結果だった。LazyFrameのアプローチが他の方法と比較して、圧倒的に少ないメモリで、かつ高速に処理を完了していることがわかる。
この結果は、LazyFrameの持つ「遅延評価」という特性が、パーティション化されたデータとの相性が非常に良いことを示している。LazyFrameは、最終的に必要なデータだけを読み込み、不要なデータをメモリに展開しないように処理を最適化する。つまり、パーティション化によってデータが分割されている利点を最大限に活かし、必要なパーティションの必要な部分だけを効率的に読み込み、計算処理を実行できるのだ。これにより、メモリの消費を抑え、全体の処理時間を短縮することに成功している。一方、DataFrameによる即時評価のアプローチでは、フィルタリングを行う前に全てのデータをメモリに読み込もうとするため、大量のメモリを消費し、処理時間も長くなってしまったと考えられる。DeltaTable APIを直接使う方法も、ある程度の最適化は可能だが、PolarsのLazyFrameが提供する高レベルな最適化には及ばなかった。
この検証結果は、システムエンジニアを目指す皆さんにとって非常に重要な示唆を与えている。それは、データ処理ライブラリの選定や、その使い方によって、システムの性能が大きく変わるという事実だ。Polarsのような最新の高性能ライブラリの機能を正しく理解し、特にLazyFrameのような遅延評価の仕組みを適切に利用することで、大量のデータを扱うシステムにおいて、開発の利便性を損なうことなく、圧倒的な性能向上を実現できる可能性がある。常に最新の技術動向を追いかけ、最適なツールとその使い方を学ぶことが、効率的で高性能なシステムを構築するための鍵となるだろう。Polarsは、パーティション化されたDelta Lakeデータ読み込みにおいて、単に便利であるだけでなく、性能面でも最良の選択肢の一つであることが今回の検証で明確になった。