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【ITニュース解説】Rust Might Be Brilliant. But It’s Not for Startups

2025年09月17日に「Medium」が公開したITニュース「Rust Might Be Brilliant. But It’s Not for Startups」について初心者にもわかりやすく解説しています。

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ITニュース概要

Rustは、高速・安全で特定のバグをなくせる優れたプログラミング言語として評価が高い。しかし、その特性からスタートアップ企業など、スピードを重視する開発には必ずしも最適ではない場合がある。

ITニュース解説

Rustは現代のソフトウェア開発において非常に高く評価されているプログラミング言語だ。その最大の魅力は、プログラムの実行速度が非常に速く、同時に高い安全性を兼ね備えている点にある。システムエンジニアを目指す初心者にとって、これらの特性は高性能で信頼性の高いシステムを構築する上で重要であることを理解するべきだ。

Rustが高速である理由は、コンピュータのCPUやメモリといったハードウェアリソースを直接的かつ効率的に扱えるよう設計されているためだ。多くのプログラミング言語では、開発者がメモリ管理を直接意識しなくても良いように、自動的にメモリを管理する仕組みが備わっている場合があるが、これはその分、実行速度のオーバーヘッドとなることがある。一方、Rustは開発者にメモリ管理の一部を任せることで、C言語やC++といった低レベル言語に近い、非常に高いパフォーマンスを実現する。

さらに、Rustの安全性は特筆すべき点だ。これは「メモリ安全性」という特性によって保証される。メモリ安全性とは、プログラムがコンピュータの記憶領域であるメモリを誤った方法で扱ってしまうことによるバグ、例えば、すでに解放されたメモリを参照しようとする(use-after-free)バグや、メモリの範囲外にアクセスしてしまう(バッファオーバーフロー)バグなどを、プログラムが実行される前に発見し、排除する仕組みを指す。Rustは「所有権(Ownership)」や「借用(Borrowing)」といった独自の概念と、それらを厳格にチェックする「借用チェッカー(Borrow Checker)」という機能をコンパイラに組み込むことで、これらの危険なバグの多くを開発段階で防ぐ。これにより、システムのクラッシュやセキュリティ脆弱性の原因となる問題を根本的に解決し、安定性が高く、攻撃されにくいソフトウェアを開発できる。

また、Rustは並行処理、つまり複数の処理を同時に実行するプログラムを安全に記述しやすいという強みも持つ。現代のコンピュータは複数のCPUコアを持つことが一般的であり、その性能を最大限に引き出すためには並行処理が不可欠だ。しかし、複数の処理が同時に同じデータにアクセスする際にデータ競合(Data Race)と呼ばれる問題が発生しやすいのが並行処理の難しさだ。Rustは、その安全性の仕組みによって、このようなバグもコンパイル時に検出し、防ぐことができるため、複雑な並行システムも比較的安心して構築できる。これらの特徴から、Rustはウェブサーバー、組み込みシステム、オペレーティングシステム、コマンドラインツールなど、多岐にわたる分野でその能力を発揮し、多くのエンジニアから「輝かしい」言語として賞賛されている。

しかし、ニュース記事が指摘するように、これほど優れたRustも、特に「スタートアップ」という特定の環境においては、必ずしも最善の選択とは言えない場合がある。この理由はいくつかある。

まず、Rustの「学習コストの高さ」が挙げられる。Rustの最大の特徴である所有権システムや借用チェッカーは、これまで他のプログラミング言語を学んできた経験者でさえ、その独特な考え方を理解し、使いこなすまでにかなりの時間と労力を要することが多い。ましてやシステムエンジニアを目指す初心者にとっては、他の言語に比べて最初のハードルが非常に高く感じられるだろう。この厳格なルールは安全性を高める一方で、開発者がコンパイラのエラーと向き合う時間が多くなり、プログラムが意図通りに動くまで何度も修正を求められる。これは結果として「開発速度の遅さ」に直結する。スタートアップは、市場の変化に迅速に対応し、短期間で新しい機能を開発・リリースして、プロダクトの仮説検証を繰り返す必要がある。そのような環境では、学習に時間がかかり、コードが書き上がるまでに手戻りが多いRustは、ビジネスのスピード感を損なう可能性がある。

次に「エンジニアの採用難」という現実的な問題がある。Rustは比較的新しい言語であり、その強力な特性が評価され始めているとはいえ、PythonやJavaScript、Java、Goといった広く普及している言語に比べて、Rustを専門とする熟練したエンジニアの数はまだ限られている。特にスタートアップは、大企業のような潤沢な資金やブランド力がない中で優秀な人材を確保する必要があるため、採用市場で希少なRustエンジニアを見つけ出し、チームに迎え入れることは非常に困難だ。エンジニアが見つからない、または育成に時間がかかると、プロダクト開発が停滞し、ビジネス機会を逃してしまうリスクが高まる。

さらに、Rustの「エコシステムの成熟度」も考慮すべき点だ。エコシステムとは、特定のプログラミング言語を支えるライブラリ、フレームワーク、開発ツール、ドキュメント、コミュニティなどの総体のことだ。PythonやJavaScriptなどの成熟した言語は、あらゆる用途に対応する膨大な数のライブラリやフレームワークが利用可能であり、開発者はこれらを活用することで、車輪の再発明をすることなく、迅速に開発を進めることができる。一方、Rustのエコシステムは着実に成長しているものの、まだ発展途上であり、特定の機能を実現するために必要なライブラリが見つからなかったり、既存のライブラリが望む機能を提供していなかったりする場合がある。その結果、開発者が一から機能を実装する必要が生じ、これもまた開発速度の低下につながる。

要するに、Rustは技術的には非常に洗練されており、高いパフォーマンスと信頼性が求められるシステム開発においては疑いのない優れた選択肢だ。しかし、スタートアップという環境では、技術的な優位性よりも、いかに早くプロダクトを市場に出し、顧客のフィードバックを得て、ビジネスモデルを確立できるかが成功の鍵となる。この段階では、学習が容易で、開発が迅速に進み、豊富な人材とエコシステムが利用できる言語の方が、はるかにビジネス的なメリットが大きい場合が多い。例えば、ウェブアプリケーションのプロトタイプを素早く作るならPythonやRuby on Rails、JavaScriptとNode.js、Goなどが有効だ。

したがって、システムエンジニアを目指す初心者は、単に「最高の技術」を追い求めるだけでなく、その技術が使われる「コンテキスト」、つまり開発するプロダクトの種類、チームの規模、ビジネスのフェーズ、求められる開発速度といった要素を総合的に考慮して、最適なツールを選択する能力を身につけることが重要だ。Rustはその真価を発揮する場面と、そうでない場面があることを理解し、将来的にどのようなキャリアを築きたいか、どのようなプロジェクトに携わりたいかを考えながら、学習する言語を選択すると良いだろう。Rustは間違いなく将来性のある言語だが、全ての状況で「銀の弾丸」ではないという視点を持つことが、優れたエンジニアへの第一歩となる。

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