【ITニュース解説】第854回 Sambaで作るActive Directory互換環境 (3) ドメインコントローラーの基本操作

2025年03月12日に「Gihyo.jp」が公開したITニュース「第854回 Sambaで作るActive Directory互換環境 (3) ドメインコントローラーの基本操作」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

Sambaで構築したActive Directory互換環境のドメインコントローラーについて、基本操作を解説。複数のドメインコントローラーの管理方法を学び、ネットワーク運用の基礎を習得できる。DCの追加、削除、役割の移管など、システム管理に必要な実践的操作を理解する。

ITニュース解説

企業や組織のネットワーク環境には、たくさんのパソコンやサーバーが存在し、それらを利用する多くの人々がいる。これらのITリソースとユーザーを効率的かつ安全に管理するための中心的な仕組みが「Active Directory」だ。これは、主にWindowsサーバーが提供する機能で、ユーザーアカウントの作成や管理、パスワードによる認証、共有フォルダーやプリンターなどのリソースへのアクセス権の制御、さらにはネットワークに接続するコンピューター自体の設定管理まで、あらゆる情報を一元的に扱うデータベースとサービスを提供している。Active Directoryがあることで、ユーザーは一度ログインすれば、様々なネットワークサービスにアクセスできるようになり、管理者はネットワーク全体の設定を統一的に行うことが可能になる。

一方、「Samba」は、LinuxやUNIXといったWindows以外のOS上で、Windowsのファイル共有やプリンター共有といったネットワーク機能を実現するためのオープンソースソフトウェアだ。Sambaは単にファイル共有だけでなく、Active Directoryのドメインコントローラーとしての機能も提供できる。つまり、Linuxサーバー上でWindowsサーバーと同じようにActive Directory互換の環境を構築できるのだ。これは、システム構築や運用にかかるコストを抑えたい企業や、特定のOSに依存しない柔軟なシステムを構築したい場合に非常に大きなメリットとなる。Windowsサーバーのライセンス費用を削減できるだけでなく、オープンソースの柔軟性を活かしたシステム運用が可能になる。

Active Directory環境の中核を担うのが「ドメインコントローラー」だ。ドメインコントローラーは、Active Directoryのデータベースを保持し、ユーザーのログイン要求を認証したり、ネットワーク上のリソースへのアクセス権をチェックしたりするサーバーのことだ。ネットワーク上にドメインコントローラーが一つしかなかった場合、そのサーバーが故障したり、メンテナンスで停止したりすると、誰もログインできなくなり、ネットワーク上の共有リソースも使えなくなる。これは、業務の継続に大きな支障をきたす事態となる。

そこで重要になるのが、複数のドメインコントローラーを配置することだ。複数のドメインコントローラーが存在すれば、たとえ一台のドメインコントローラーが停止しても、他のドメインコントローラーがその機能を引き継ぐため、サービスが中断することはない。これを「冗長性」と呼ぶ。また、ユーザーからの認証要求が多数あった場合でも、複数のドメインコントローラーで処理を分担することで、サーバーにかかる負荷を分散し、応答速度を向上させることができる。これを「負荷分散」と呼ぶ。このように複数のドメインコントローラーを運用することで、ネットワークサービスの安定性と可用性が大幅に向上する。

今回のニュース記事は、Sambaで構築したActive Directory互換環境における複数のドメインコントローラーの基本的な操作について解説している。複数のドメインコントローラーを運用する上で最も重要な操作の一つは、「レプリケーションの状態確認」だ。レプリケーションとは、複数のドメインコントローラー間でActive Directoryのデータベース情報を同期することである。ユーザーの追加やパスワードの変更、グループ設定の更新など、Active Directoryに変更が加えられた場合、その情報はすべてのドメインコントローラーに正確かつ迅速にコピーされる必要がある。もしレプリケーションが正常に行われていないと、あるドメインコントローラーでは新しいパスワードでログインできるのに、別のドメインコントローラーでは古いパスワードでしかログインできないといった不整合が発生し、大きなトラブルに繋がる。そのため、レプリケーションが滞りなく行われているかを定期的に確認し、必要に応じて手動でレプリケーションを強制したり、問題を修正したりする操作が求められる。

また、「ドメインコントローラー自体の状態監視」も基本操作の重要な要素だ。各ドメインコントローラーのシステムリソース(CPU使用率、メモリ使用量、ディスク空き容量など)や、Active Directory関連の重要なサービスが正しく稼働しているかを確認する。例えば、Sambaを利用している場合、Samba関連のサービスが適切に動作しているかをコマンドなどで確認する。これにより、将来的な問題の兆候を早期に発見し、予期せぬ障害を未然に防ぐことができる。

さらに、Active Directoryには特定の重要な役割を持つドメインコントローラーが存在する。これらの役割は、ドメイン全体で一つしか存在しないものもあり、その役割を持つドメインコントローラーが停止した場合、特定の管理操作ができなくなる可能性がある。そのため、障害発生時や計画的なメンテナンス時には、これらの「役割を別のドメインコントローラーに転送する」操作が必要となる場合がある。これは、サービスの継続性を確保するために非常にデリケートかつ重要な操作となる。

ネットワーク環境の拡大やサーバーの老朽化に伴い、「新たなドメインコントローラーを追加する」操作や、「既存のドメインコントローラーを降格させ、ドメインから削除する」操作も基本操作に含まれる。新しいドメインコントローラーを追加する際には、既存のドメインに参加させ、Active Directoryの情報を正しくレプリケーションさせる設定が必要となる。一方、ドメインコントローラーを削除する際には、そのドメインコントローラーが持っていた役割を安全に他のドメインコントローラーに移行し、データベースからその存在を完全に削除する手順を踏む必要がある。これらの操作も、Active Directoryの整合性を保つために慎重に行われるべきものだ。

ドメインコントローラーは、Active Directoryのサービスだけでなく、「DNS(Domain Name System)サーバー」としても機能することが多い。DNSは、インターネット上の名前解決を担うシステムで、コンピューターが名前からIPアドレスを解決するために不可欠なサービスだ。Active DirectoryはDNSに深く依存しており、ドメインコントローラーはActive Directory統合DNSとして機能し、ドメイン内の名前解決を担う。したがって、DNSの設定や管理もドメインコントローラーの基本的な操作の一部となり、名前解決が正しく行われているかを確認することも重要である。

これらの基本的な操作を適切に行うことで、Sambaで構築したActive Directory互換環境は、安定して高い可用性を保ちながら運用される。システムエンジニアを目指す者にとって、このような企業ネットワークの中核をなすシステムの構築と運用に関する知識は、キャリアを築く上で非常に価値のあるものとなる。

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