【ITニュース解説】Spotify lossless streaming is finally here and it's included with a Premium plan
2025年09月10日に「Engadget」が公開したITニュース「Spotify lossless streaming is finally here and it's included with a Premium plan」について初心者にもわかりやすく解説しています。
ITニュース概要
Spotifyが待望のロスレス(高音質)ストリーミングを開始した。Premiumプランの既存ユーザーは追加料金なしで利用でき、日本を含む50以上の国で順次展開される。高音質でより詳細な音楽体験が可能になるが、データ消費量が増えるため設定変更が必要。Bluetoothでは圧縮される点に注意しよう。
ITニュース解説
Spotifyは、長らく待ち望まれていた高音質ストリーミングオプションである「ロスレスオーディオ」の提供を開始した。これは、音楽ストリーミングサービスにおける音質向上の一大ニュースであり、特にシステムエンジニアを目指す初心者にとっても、データ処理やネットワーク、ユーザー体験といった側面から興味深い話題となるだろう。
ロスレスオーディオとは、音源の情報を一切損なうことなく圧縮されたオーディオデータのことだ。一般的な音楽ストリーミングで用いられるMP3などの形式は、ファイルサイズを小さくするために人間の耳には聞き取りにくいとされる音域や細かな情報を削除する「非可逆圧縮」という手法を使っている。これにより、データ量は大幅に削減されるが、元の音源からはわずかに情報が失われる。これに対し、ロスレスオーディオは、元の音源の情報を完全に保持したまま圧縮する「可逆圧縮」を用いる。例えるなら、ファイルをZIP形式で圧縮・展開するようなもので、圧縮しても展開すれば元のデータが完全に復元される。これにより、アーティストが意図した通りの、より詳細で豊かな音質で音楽を楽しむことが可能になる。
今回Spotifyが提供するロスレスオーディオは、最大24-bit/44.1 kHzのFLAC形式に対応している。24-bitというビット深度は、音の強弱の表現範囲の広さを示し、44.1 kHzというサンプリングレートは、1秒間に音の波形をどれだけ細かく記録するかを示す。これらの数値が高いほど、より原音に忠実な、きめ細やかな音を再現できる。この高音質オプションは、既存のSpotify Premiumプランの加入者に追加料金なしで提供される点が大きな特徴だ。これは、以前は追加料金が示唆されていた経緯もあり、ユーザーにとって非常に歓迎すべき変更と言える。Apple Musicなどがすでにロスレスオーディオを追加料金なしで提供していることを考えると、Spotifyも市場の競争に対応し、高音質体験を標準化する動きに乗じた形だ。
ロスレスオーディオの提供は、米国、英国、日本などを含む一部の国から順次開始され、10月末までには世界50以上の市場でPremiumユーザーが利用できるようになる予定だ。利用可能なデバイスも幅広く、スマートフォン、デスクトップPC、タブレットといった主要なデバイスに加え、Sony、Bose、Samsung、Sennheiserといった多くのSpotify Connect対応機器で利用できる。さらに、来月にはSonosやAmazonのデバイスにも対応範囲が広がる見込みだ。
この新機能を利用するには、ユーザー自身がSpotifyアプリ内で手動で設定を有効にする必要がある。アプリの「プロフィールアイコン」をタップし、「設定とプライバシー」へ進み、「メディア品質」の項目からロスレスオーディオを有効にできる。ここで重要なのは、Wi-Fi接続時、モバイルデータ通信時、そしてダウンロード時と、利用状況に応じて個別に設定できる点だ。これは、ロスレスオーディオが通常の音質設定と比較して大幅に多くのデータを使用するため、ユーザーが自身のデータ通信量を管理できるように配慮された設計だ。アプリ内では、低音質からロスレス品質までの各オプションがどれくらいのデータを使用するかの目安も表示されるため、データ通信量を気にしながら最適な設定を選択できる。
ロスレスオーディオのメリットを最大限に享受するためには、いくつかの技術的な留意点がある。最も推奨されるのは、Wi-Fi環境下で有線ヘッドホンや有線スピーカーを使用することだ。これは、Bluetooth接続では、現在の技術ではロスレスオーディオを完全に伝送するための十分な帯域幅が確保されていないためだ。Bluetooth接続でロスレスオーディオを再生しようとした場合でも、信号はBluetoothの帯域幅に合わせて圧縮されてしまう。したがって、完全なロスレス体験を得ることはできない。また、ロスレスオーディオはデータ量が大きいため、曲の再生開始までにわずかに時間がかかる場合がある。これは、途中で音が途切れることを防ぐために、デバイスが事前にデータをキャッシュ(一時的に保存)する処理を行うためだ。
Spotifyがロスレスオーディオの提供に至るまでには長い道のりがあった。2017年には提供間近と報じられ、2021年にはCD品質オプションを年内に提供すると発表したが、これらは実現せず、その後も具体的な情報が途絶えていた。一時は有料アドオンとなる可能性も示唆されたが、最終的にPremiumプランへの無料提供という形で実現したのは、ユーザーにとって非常に喜ばしい結果となった。この機能は、音楽をより高品位で楽しみたいと考えるユーザーだけでなく、音楽配信サービスの技術的な進化に関心のあるシステムエンジニアの卵たちにとっても、データ圧縮技術、ネットワーク帯域幅の最適化、ユーザーインターフェース設計といった多様な技術要素が結びついた具体的な事例として、大いに学びのあるトピックとなるだろう。