【ITニュース解説】Ubuntu 25.10(questing)の開発; Chronyのデフォルト化と、『開発者のためのUbuntu』
ITニュース概要
Ubuntu 25.10 (Questing) の開発が進む。このバージョンでは、コンピューターの正確な時刻を保つ重要な機能であるNTPデーモンが、これまでのものからChronyへデフォルトで切り替わる。これは、より高精度な時刻同期を実現する変更だ。
ITニュース解説
Ubuntu 25.10「questing」という次期バージョンの開発が進められている。この新しいUbuntuでは、コンピュータの時刻を合わせるための重要なソフトウェアが変更されるなど、いくつかの注目すべき進化がある。システムエンジニアを目指す人にとって、このようなOSの変更点は、日々の業務やシステムの安定性、セキュリティに直結するため、非常に重要である。 まず、Ubuntuとは何かを説明する。Ubuntuは、Linuxと呼ばれるオペレーティングシステム(OS)の一種であり、世界中で非常に広く使われている。WindowsやmacOSと同じように、パソコンを動かすための基本的なソフトウェア群である。無料で利用でき、サーバー用途から個人の開発環境、さらには組み込みシステムまで、多様な場所で活躍している。システムエンジニアにとって、Linuxはサーバー構築や運用、ソフトウェア開発において欠かせない存在であり、Ubuntuはその代表格と言える。開発者が使いやすいように、豊富なソフトウェアが提供されており、コマンドライン操作に慣れていない初心者でも比較的扱いやすいように配慮されている点も特徴である。 今回のUbuntu 25.10「questing」での主要な変更点の一つは、コンピュータの時刻を正確に同期させるためのソフトウェアである「NTPデーモン」が「Chrony」に切り替わることだ。このNTPとは、Network Time Protocolの略で、ネットワークを通じてコンピュータの時刻を自動的に正確に合わせるための仕組みである。なぜコンピュータの時刻合わせがそれほど重要なのか。例えば、サーバーに保存されるログは、いつ何が起こったかを記録するための重要な情報源だが、もしサーバー間の時刻がずれていれば、複数のサーバーで発生した事象の前後関係を正確に把握することが困難になる。また、データベースや分散システムでは、異なるコンピュータ間でデータの整合性を保つために、厳密な時刻同期が不可欠である。さらに、暗号化通信や認証など、セキュリティに関わる多くの機能も正確な時刻に依存している。時刻がずれていると、証明書が期限切れと判断されたり、逆に期限切れの証明書を有効と誤認したりする可能性もあるため、サイバー攻撃のリスクを高めてしまうこともある。 Chronyは、この時刻同期の役割を果たすソフトウェアの一つである。これまでのUbuntuでは、主に「ntpd」という別のソフトウェアが利用されてきたが、Chronyにはいくつかの優れた特徴がある。Chronyは、より高速な時刻同期が可能であり、サーバー起動後すぐに正確な時刻に合わせることができる。また、ネットワーク接続が一時的に途切れても、その後すぐに時刻を再同期させる能力に優れている。これは、仮想環境やクラウド環境のように、ネットワークの状態が変動しやすい環境で特に有効である。さらに、Chronyは消費するシステムリソース(CPUやメモリ)が少ないため、限られたリソースで動作するシステムにも適している。 そして、ChronyがNTPデーモンだけでなく、「NTSデーモン」としても機能する点も重要だ。NTSとは、Network Time Securityの略で、NTPの通信を暗号化し、認証を行うことで、よりセキュアな時刻同期を実現する仕組みである。従来のNTPでは、時刻情報自体が改ざんされるリスクがあったが、NTSを導入することで、信頼できないサーバーからの偽の時刻情報によってコンピュータの時刻が狂わされることを防げる。近年、サイバーセキュリティの重要性がますます高まる中で、このようなセキュアな時刻同期は、システム全体の信頼性を向上させるために不可欠な要素となっている。UbuntuがChronyをデフォルトとすることは、単に性能が向上するだけでなく、現代のセキュリティ要件に対応し、より安全なシステム環境を提供しようとする姿勢の表れだと言える。 ニュース記事のタイトルにある「開発者のためのUbuntu」というフレーズは、Ubuntuがシステム開発を行う人々にとって、さらに使いやすく、より生産的な環境を提供しようとしていることを示唆している。開発者は、日々新しい技術を試し、多様なツールを使いこなす必要がある。Ubuntuはこれまでも、豊富な開発ツールやライブラリを簡単にインストールできる環境を提供してきたが、Chronyのデフォルト化もその一環と捉えられる。セキュアで安定した時刻同期は、分散システム開発やIoTデバイスの開発など、現代の多様な開発シーンにおいて、システムの安定稼働やデバッグの効率化に貢献する。開発者が安心して、そして効率的に作業に集中できるような基盤をUbuntuが提供しようとしているのだ。 システムエンジニアを目指す初心者にとって、このようなOSのデフォルト設定の変更は、一見すると小さな変化に見えるかもしれないが、その裏には、セキュリティ、パフォーマンス、信頼性といった、システム全体を設計・運用する上で非常に重要な要素が深く関わっていることを理解する良い機会となる。最新の技術動向を追い、なぜその変更が行われるのか、どのようなメリットがあるのかを考えることは、将来のシステムエンジニアとしての視野を広げ、深い理解を得るための第一歩となるだろう。Ubuntu 25.10「questing」におけるChronyのデフォルト化は、単なるソフトウェアの切り替えにとどまらず、よりセキュアで高性能なシステム環境を目指すUbuntuの進化を示すものだと言える。