【ITニュース解説】Who the Hell Owns JavaScript? Spoiler: It’s Total Corporate Shitshow

2025年09月07日に「Medium」が公開したITニュース「Who the Hell Owns JavaScript? Spoiler: It’s Total Corporate Shitshow」について初心者にもわかりやすいように丁寧に解説しています。

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ITニュース概要

JavaScriptという名前の商標権はOracle社が保有している。一方、言語の仕様自体はEcma Internationalという国際団体が管理している。この所有権のねじれが、Denoのような新しい技術の登場と共に、権利を巡る複雑な問題を引き起こしている。

ITニュース解説

Web開発に不可欠なプログラミング言語として広く知られているJavaScript。多くの開発者が日々利用するこの身近な技術の「名前」を巡り、複数の企業が関わる所有権の問題が進行している。この問題は、言語の技術的な仕様そのものではなく、「JavaScript」という名称、すなわち商標を誰が法的に管理するのかという点に焦点が当てられている。

まず理解しておくべき重要な点は、プログラミング言語としてのJavaScriptの「仕様」と、「JavaScript」という「商標」は別個のものであるということだ。言語の仕様、つまりどのような機能や文法を持つべきかというルールは、「ECMAScript」という国際標準規格によって定められている。この規格はEcma Internationalという中立的な標準化団体が管理しており、特定の企業が独占することはできない。Google ChromeのV8エンジンやMozilla FirefoxのSpiderMonkeyといった、私たちが普段利用するWebブラウザのJavaScript実行環境は、すべてこのECMAScript標準に基づいて開発されている。したがって、言語の技術自体はオープンで誰でも利用できる。問題となっているのは、このECMAScript仕様を実装した技術に対して一般的に使われている「JavaScript」という名称の法的な権利である。

この問題の根源は、JavaScriptが誕生した1995年にまで遡る。当時、Netscape社に在籍していたブレンダン・アイクによって開発されたこの言語は、当初Mocha、次にLiveScriptという名前で呼ばれていた。しかし、当時大きな成功を収めていたSun Microsystems社のプログラミング言語「Java」の人気にあやかるため、マーケティング上の理由からNetscape社とSun社の提携の一環として「JavaScript」という名前に変更された経緯がある。この時、Sun Microsystems社が「JavaScript」の商標権を取得した。その後、2010年にSun Microsystems社はOracle社に買収された。この買収に伴い、「JavaScript」の商標権も法的にはOracle社に引き継がれたと考えられている。

Oracle社は、自社の保有する知的財産権の行使に非常に積極的な企業として知られている。特に、Googleが開発したモバイルOSであるAndroidにJavaのAPI(Application Programming Interface)が使用されたことを巡り、Oracle社がGoogleを相手取って長年にわたり著作権侵害訴訟を続けた事例は有名である。このような背景から、開発者コミュニティでは、Oracle社がいつかJavaScriptの商標権を厳格に主張し始めるのではないかという懸念が長らく存在していた。もしOracle社が権利行使を本格化させれば、技術書やプログラミングスクールのコース名、ソフトウェア製品名などに「JavaScript」という単語を使用する際に、Oracle社の許諾やライセンス料の支払いが必要になる事態も想定される。これは、JavaScriptを中心とする広大な技術エコシステムに大きな影響を与えかねない。

この膠着した状況に新たな動きをもたらしたのが、サーバーサイドでJavaScriptを動かすための実行環境「Node.js」の生みの親であるライアン・ダールが新たに開発した「Deno」である。Denoの開発主体であるDeno Land Inc.は、米国特許商標庁に対し、「JavaScript」という名称の商標登録を出願した。彼らの主張の骨子は、Oracle社が長年にわたってこの商標を積極的に使用したり、第三者による使用を管理したりしてこなかったため、商標権は事実上放棄された状態にあるという点だ。その結果、「JavaScript」という言葉は特定の企業の商品やサービスを指すブランド名ではなく、プログラミング言語そのものを指す一般名称として広く認識されるようになっていると主張している。Deno Land Inc.は、この商標を特定の営利企業が管理するのではなく、技術コミュニティ全体のために中立的な立場で保護することを目的として掲げている。

Deno Land Inc.によるこの行動は、JavaScriptに関わるすべての人々にとって重要な意味を持つ。もし彼らの主張が認められ、商標登録が完了すれば、「JavaScript」という名称はより公的な性格を帯び、誰もが安心して自由に使えるようになる道が開かれるかもしれない。一方で、商標権を保有していると見なされるOracle社がこの動きに異議を唱え、自社の権利を主張してくる可能性も十分にある。その場合、両社の間で法的な争いに発展し、決着がつくまでその名称の扱いは不透明な状態が続くことになる。

システムエンジニアを目指す者にとって、この商標権の問題は日々のコーディング作業に直接影響するものではないかもしれない。しかし、自身がこれから専門的に扱っていく中核技術の名称が、企業の戦略や法的な判断によってその使用が制限される可能性を秘めているという事実は、IT業界の構造を理解する上で重要な知識となる。この問題の今後の展開は、JavaScriptという言語を取り巻くビジネス、教育、そしてオープンソースコミュニティの未来に影響を及ぼす可能性があり、その動向が注目される。

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